お洒落
お盆休みの休講前最後の講義が終了し、悠人は一度帰宅。軽装に着替えた後、自室でのんびりと綾乃が家にくるのを待っていた。
ほとんどピクニック気分でサンドイッチなどをバスケットに詰め込んでいると、玄関のチャイムが鳴らされる。
「はいどうぞ…」
綾乃の身を包む衣装は、今まで目にしてきた制服とは違うもの。
お洒落はお洒落でも、
「お洒落ジャージかーいッ‼︎」
「わ、わりーか!」
どうやらお洒落しようという気持ちが一周回った結果らしい。しかもメンズだ。
確かに、動きやすい服装という意味では申し分ない格好ではあるものの。
悠人は綾乃を頭頂部からつま先まで舐めるように眺める。しかしこうしてみると、スポーティな装いは彼女の雰囲気にとてもしっくりきているようだ。
細身のジャージは綾乃の身体のラインを浮かびあがらせており、和也はあぁ言ってはいたが、胸元には程よく膨らみがあるように見える。
「似合ってるよ」
「褒めてもなんも出ねーぞっ」
貶したら蹴りを出しそうだ。
「まぁ時間もないことだし、そろそろ行こうか」
晴れやかな空の下、二人はおよそ高校生の男女が連れ立っていくことはないであろう場所へと足を向けた。
学生の遊びというのは、基本的に年齢が上にいくほど金がかかるものになる傾向がある。小学生の時は数十円の駄菓子で済んでいたのが、高校生ともなればカラオケ一回で千円近くとぶのもザラという者が多いだろう。
また、基本的に買い物が少ない男子の方が、遊びに使う金額は低いのではないだろうか。
意味もなく自転車でどこまでも遠くへ行ってみたり、友達の家でゲームをしたり…中でも、登山は金のかからない遊びの一つだ。
現地についてすぐに登り始められる訳ではなく、麓から伸びる緩やかな坂道を悠人達は歩いている。
「お、なんか鳥居が見えてきたね」
そこそこの規模の神社ーー恐らく登山客が参拝していくのだろうーーがあり、境内をずっと進んだ奥に登山道入り口と書かれた石碑が立っていた。
「なんか祈願でもして行く?」
「賽銭に落とす金なんかねーよ」
清々しいまでの無銭遊戯精神だ。
二人はそのまま社を素通りして、階段状の石垣を踏んで山道を進んでいく。




