死生観二時間前
「えっガンですか……?」
「はい、ガンと言っても血液のガンつまり白血病ですね」
「そうですか……白血病ですか……」
なぜだろう自分でもたぶん薄々感づいてはいたけど実際宣告されてみるとなんていうのかなドラマみたいに泣き崩れることもなくアニメみたいに叫ぶこともなくただただ放心って表現が一番似合ってるんだろうと思う、そんな俺をしり目に先生は淡々と話を続けていく。
「そうですね白血病には大まかに分けて二つあるんですが俺さんの場合は急性リンパ性白血病ですね」
放心状態の母親と無言の父親をしり目に俺は質問する。
「それは……普通の白血病とはまた違うんですか……」
「いえ骨髄性の白血病もあるんですが俺さんの場合はリンパ性だったという話ですね。」
「その俺のリンパ性ってやつのほうが治りにくかったりするんですか?」
「そうですね……治りにくいといえばそうですが治りやすいといえば治りやすいですね」
どういうことだ?治りにくいのに治りやすい?矛盾してるじゃないか……
「先生俺ははっきり言ってくれたほうがうれしいです」
「わかりました……まず俺さんがなった急性リンパ性の白血病は子供のかたに多く見られる病気なのですが……基本的には80%以上の確率で寛解して長期生存が見込めます」
80%以上か……自分の命がかかった80%ってのは低く聞こえるもんだな……
でも……すごく引っかかるキーワードがいくつかでてきた。
「すいません寛解ってなんですか?」
「寛解ってのは基本的に骨髄などを検査して白血病細胞が元の95%以下になった状態だと考えてもらっていいと思います」
「なるほど……でも先生俺今20ですよ?子供によく見られるってどういうことなんですか?大人だと治りにくいんですか?」
「俺さんは確かに成人してますが、治療自体は子供が受けるものと似たようなものを受けていただくことになると思いますね」
なんかうまく話をそらされた気がする……俺が聞きたいのはもっと違う話だ、寛解ってのになりゃ俺の病気は完治なのか?ドラマで見たようななったらもう絶望的みたいな病気じゃないのか?ああだめだ、思考がぐちゃぐちゃだ。
「先生もう一度言います俺なんでも詳しくいってもらえたほうがいいです」
「……わかりました。さっき子供の長期生存率が80%を超えるといいましたけど……大人の場合は寛解率が60~80%です」
60?自分の命がかかってるとはいえどちらかといえば分の良い賭けなのか?
そこで俺は先生の言ってる言葉が微妙に違うことに気づく。
「寛解率?」
「はいそうですね大人の場合は寛解するのが60~80と言われてますね」
いくら知識のない俺だってもう察しが付く
「長期生存率は……どうなんですか……」
「そうですね……大人の方は15~35%と言われていますね」
そう淡々と述べる先生の言葉は何事もない日常会話みたいに俺の耳に入ってきた。
「15ですか……」
「一般的にはそうですね……しかし、俺さんの場合は成人していますが子供と同じ治療を受けていただきますから一般的には大人の長期生存は15~35%と言われてますがもう少し高く見積もっても大丈夫だと思いますよ」
それからの先生の話はよく覚えていない、20歳を大人とみるか子供とみるか~やなにやら俺を励ますような話をしていたような気がするけどなんていうのかな放心してたように思う。なにやらまだ話しかけてきてる先生の話を遮って俺はつぶやくように先生に聞いた。
「俺の……余命とかは……あとどのくらいなんでしょうか……」
「俺さんのがんばり次第で50年にも60年にもなりますよ、たしかに治療しなけれ急性リンパ性白血病は一般的には2ヶ月と言われていますがそれは治療を全くしなかった時の話ですし今飲んでいただいているステロイドだってもう治療の一環ですしね、これから頑張っていきましょう」
「はい……」
このあと病棟に戻った俺は天使と悪魔に会う、生きさせたい天使、楽にさせたい悪魔近いようで全く別物の死生観の違い、生きようとする俺、楽になりたい俺、何があってるかもわからなくなってくる、でも確かなことが一つ言えるここまで心が動いた日は今までの人生で初めてだった、こうして俺の人生の終着点か通過点かはわからないが俺の闘病生活が始まることになったんだ……