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アゲハ  作者: 鬼京雅
柊大霊幕~宿命の男・鬼京雅との決戦編~
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現世を舞う揚羽蝶

 鬼瓦ファミリーの柊達に一気に攻めたてられ耐える十条の柊や京子達も厳しい局面を迎えていた。

 アゲハの輪廻転生を待つ京子達は敵を倒すが、とうとう動き出した雅に一人一人倒れる。

 飛耳長目ひじちょうもくによる未来予知により誰もが手も足も出ない。

 そして、可憐な舞を舞うように和装姿の暗器のハルナが雅の前に立ち塞がる。


「……地獄の閻魔にすら嫌われたのは本当のようね。まさか、ここまで強くなるとは思ってなかったわ。これは依頼料が三倍でも割りに合わない。やってられないわね」


「そんな事は知らん。この戦場に出て来た以上、もう逃げられないぞ」


「こっちも長生きがしたいのよ。死んで輪廻転生出来る人間なんてよっぽどイカれた奴しかいないだろうし」


「理由も無く長生きをされても後に続く者の邪魔になるだけだ。明確な目的も無く、若者の利益にすがる者など存在する価値も無い」


「アタシも若者だけど……まぁ、その考えは理解出来るけど、今の世の中じゃ無理よ。そう、アンタが勝利して柊大霊幕でも為さない限りはね」


「そうだな。俺は柊大霊幕を発動させる為のパートナーを探している。それはお前ではない」


「そう。死ね」


 暗殺モードに切り替わるワカナのエクセレントスカートが雅の眼前に迫ると同時に、地面から背後を狙い挟み撃ちにしていた。それを雅は軽やかなターンをし、全てのアームを破壊していた。一瞬で前後三十あるアームを全て破壊さたのである。


「エクセレントぉ……お楽しみはこれからよ」


 バッ! とワカナは左腕の義手のプラスチック爆弾に大量の霊気を流し込み大爆発させる。物理と霊気による二重攻撃ならば、霊気のガードだけではどうにもならない。爆炎が上がる中、ワカナは微笑んでいた。


「あーあ。やってらんないわ。でも、囮にはなったわね」


 生身の右腕も飛ばされ、腹部を突き刺されていた。

 もう戦える力が無いワカナは意識が混沌とし、全身の力が抜ける。

 それを、崩壊する霊神報国剣の上にいる京子は見つめていた。


「川徳との戦いから未来予知の飛耳長目は空間そのものに関与してないのはわかってる。ならば遠距離から私の最大霊気を込めた亜空絶間矢あくうぜっかんやで仕留める!」


 冥地皇秋めいちこうしゅうの宝玉霊装で雅を遠距離から仕留めようとしていた。

 ワカナは倒れ、その瞳は京子を見つめていた。

 それが雅の目にもとまっていたのを、京子は知らなかった。


「この女を囮にして俺を狙ってたか。しかし、甘いな。あの女は死に、お前も死ぬ」


 必殺の矢で狙い撃ちするが看破されていた。

 瞬時に雅は崩壊する霊神報国剣に移動し、京子は亜空絶間矢を放つ。


「無駄だ。今の俺はこの世の全てを超越している。現世の力では俺には勝てない」


 何と、素手で亜空絶間矢を掴んでいた。

 霊気そのものを消滅させる矢ですら、この鬼京雅には通じない。

 しかし、得意の二刀小太刀に持ち替える京子は言う。


「この戦いに勝つのはお兄ちゃん。つまりアゲハが勝つの。貴方は負けるのよ鬼京雅」


「勝者とは、勝った者の事を言うのもしらんのか俗物よ?」


 京子が殺される瞬間、上空の空間が割れてアゲハが現れた。

 次元を断ち切り世界の果てから現世へ帰還したアゲハは――。


「――!」


 全身の肌に世界の果てとは違う爽やか極まりない空気が毛穴を刺激し、アゲハは以上な興奮を覚える。

 しかし、アゲハの全身は激しい業火に焼かれたように肌が焼けただれ、心臓が停止した――。


「輪廻道――」


 シュワアアア! と焼けただれた全身は一気に全快し、着物や刀も全て元通りになる。


『……』


 突如、大阪上空の空がひび割れ、その切れ間から飛び出して来たアゲハに京雅院、鬼瓦ファミリーの双方共に驚き茫然とした。輪廻道により再生したアゲハは絆揚羽蝶を構え――。


「――そしてこれがオレの人間道!」


 背中に紫色の蝶の羽を羽ばたかせ、地上に向けて降下する。

 そして、雅の腹心である鳳仙花は胸元にある懐中時計のような機械を見て叫んだ。


「異常な霊力の反応……霊力十万超えが現れました!」


 鳳仙花の焦りに驚きもしない雅は微笑む。


「ほう、来たかアゲハ」


 次元を断ち切り、現世の全てを支配する少年に一太刀浴びせた五光の光を纏う男――。

 京雅院の面々はそれを聖光葉だと思い、ようやく輪廻転生し崩壊する世界を救いに来てくれたのか! と心を狂喜乱舞させる。しかし、その紫色の髪の男は異常な霊気こそ聖光葉に似たものがあるが、決して違う別人だった。

 青白い光亡をたたえた刃に今までの人生、六道輪廻によって得た答えの全てが流れ込む――。

 激しいアゲハの叫び声と共に、騒乱の中心部にアゲハの一撃が叩き込まれる。

 ファサァ! と紫の揚羽蝶が縦横無尽に無限増殖するように拡がって行き、京雅院と鬼瓦ファミリー全ての人間の身体にまとわりつき、心に訴えた。人間道による絆の揚羽蝶は怒れる心を鎮め、互いにすれ違う心を間違い無く理解させた。


「……そっちも助けなきゃな」


 アゲハは京子を殺そうとしている雅に一撃を叩き込んだ。

 完全に今の動きに反応すら出来ない事に、雅は喜ぶ。

 まだ、成長出来る――と。

 そして、京雅院の柊達はその紫の霊気を纏う男を見据える。


『……』


 次元を断ち切り、現世の全てを支配する少年に一太刀浴びせた五光の光を纏う男――。

 京雅院の面々はそれを聖光葉だと思い、ようやく輪廻転生し崩壊する世界を救いに来てくれたのか! と心を狂喜乱舞させる。

 しかし、その紫色の髪の男は異常な霊気こそ聖光葉に似たものがあるが、決して違う別人だった。

 やがて、アゲハの人間道による一撃により全ての人間は理解し騒乱は全て終わった。

 しかし、それは一時的なものでまた同じ事を繰り返すであろう。

 人間は、学んだフリをする生き物だからである事は過去の歴史が証明している。

 故にアゲハは――。


「ハッキリ白黒つけるぜ。自分の意思で戦う奴だけ、この六道アゲハにかかって来い」


 その暖かな瞳は、柊第霊幕で人類を強制的に柊へと引き上げる黒服の鬼の少年・鬼京雅に向けられていた。




 人々はヒラヒラと舞う揚羽蝶のように地面に立つ紫の髪の和装の少年に見とれていた。

 それは自由を纏う揚羽蝶。

 柊の最高位にいた、狂気の思想行動家・聖光葉ではない。

 その少年は聖光葉が認めた愛弟子の他者に大きく影響されず、自分の考えを持って全ての正義を決定する特異な少年。

 空間の全ての人間が驚く中、その羽織袴姿で紫色の髪を風になびかせる少年に助けられた京子は呟く。


「お兄ちゃん……おかえり」


「おう、待たせたな」


 アゲハが輪廻転生し現世に帰還し、全ての人間はまだ驚きが隠せない。


『……』


 時が止まったような空間だったが、雅の指を弾く音をキッカケにその京雅院の増援であろう少年を鬼瓦ファミリーの面々は一気に攻撃しだした。


「全く、気が早いぜ。オレはもう鬼京雅以外にゃ負ける気がしねーよ。いや、雅にも負けねぇけどな!」


 アゲハが円を描くように刀を一閃しただけで鬼瓦ファミリーの兵隊が散る。

 復活アゲハの霊気のガードには、通常の柊の攻撃では無効だった。

 無双するアゲハに、鬼瓦ファミリーの兵は駆逐される。

 雅の部下の鳳仙花はまともに戦っても無駄と判断し、兵を下がらせようとするがアゲハの動きはそれを許さなかった。


「覇っ!」


 多大な霊気による空間伝達で残りの兵も気絶するように一気に倒れた。

 あり得ない……と苦しい胸を抑える鳳仙花は背後に阿修羅のような禍々しい霊気を感じる。


「……」


 一太刀を浴びた鬼京雅が現れる。

 対峙する宿命を帯びた二人の少年は微笑む。


「アゲハよ。六道輪廻は得られたのか?」


「得られたが、ここに戻って来る時に全て失った。残念だが、世界の果てで上がった霊気だけでオメーを倒すしかねーようだ」


「そうか。なら死ね」


 その一撃をアゲハ受けた。

 誰も受けきれなかった一撃を――。


「焦るなよ。オレは霊装人より楽しめるだろ?」


「相当な修行を積み、宮古戦の聖光葉の霊気を超えた奴等だったがすでに相手にならなかったからな」


「悲しみ、怒り、自分の弱さをバネにして強くなったからと言っても、それが最強になれるわけじゃねーかんな。オレも確かに宮古との戦いには光葉の力が確実にあった。お前に殺された時、あの時よりは弱くなってたのも事実」


「そうだ。だが、今は違う」


「けど、本当の強さは互いにわからねぇはずだ。オメーだって全力を出せる相手はいなかっただろ?」


「お前は光葉よりも強くなれる。いや、俺達は……だ。霊力百万の壁を越えてやろうじゃないか」


 通常の柊が霊力・千もあれば精鋭と呼ばれる。

 しかし、この二人の霊力は十万を超えていた。

 そして雅は言う。


「大霊幕を行った時はおそらく百万はあったはずだ。聖はそこで霊力を使い過ぎたな。人間の身体の限界を超える力を使うから宮古などに殺されるんだ」


 かつて、日本全体を守るように覆う霊力は光葉の身体を蝕んでいた。

 鎖国するように守る大霊幕を維持するには多大な霊気を消費する。

 それが、光葉が宮古という百年老人に負けた結果の全てだった。

 その為、雅は一度の霊気消費だけで人間を柊に覚醒させるキッカケを与えようとしていた。

 人に期待する光葉と、人に絶望している雅の差であった。

 それに対しアゲハは言う。


「光葉は狂ってるから仕方ないのさ」


 当時の霊力で言うと、こうなる。

 宮古・霊力九千。

 光葉・一万。

 しかし、未知の力である地獄の炎に対処できる力が足りなかった。

 現在のアゲハと雅の霊力はこうだ。

 アゲハ・十万

 雅・十万。

 

「アゲハ。お前の霊力と俺の霊力のぶつかり合いで俺の柊大霊幕は完成する」


「柊大霊幕ねぇ。この戦いの最中、どうやるかは知らんが、お前はやるようだな」


「あぁ、世界へ向けて俺は柊大霊幕を発動させる。一度感じたものを応用するのは、造作も無いだろう」


 聖光葉は日本だけに継続して大霊幕を敷いたが、鬼京雅は世界中の人間に霊気の意思を込めた一度きりの弾丸を放つ予定である。この弾丸を受けた人類は、柊に覚醒しなければ死ぬ――。

 そして、京雅院の柊は残る少数の鬼瓦ファミリーの柊を駆逐して行く。

 ワカナは機械の腕と右胸に第二の機械心臓をつけてた為、残りの力で援護をする。

 劣勢だった京雅院も盛り返して行き、次第に互角になり戦闘は最終局面になる。


「さて、お話はやめだ。そろそろやろうぜ雅」


「貴様には飛耳長目の未来予知が出来ない……か。ようやく俺も戦えそうだ。本気でな」


 地獄の閻魔ですら不快に思う力を発動させるよう力を上げ、雅は笑った。





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