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アゲハ  作者: 鬼京雅
百年老人編
24/67

終幕~次なる時代の光の葉~

 あれから一週間が経った――。

 京都藩は京雅院きょうがいんを取り仕切っていた三家楼さんかろうから解放され、その実権は古来より京の表と闇を司ってきた落ちた老舗と呼ばれている十条じゅうじょうが引き継ぐ事になった。

 いくら落ちた老舗と呼ばれようとも十条の保守的で堅実な組織作りはこの新しい京雅院を作る上では役に立った。

 京雅院の新たな総帥に十条清文が治まった。

 天守閣や外装が修復される清水城の広場で新たな総帥である十条が千を超える京雅院に属する人間達に演説をしていた。光葉こうようの妹のエリカは新しい参謀に迎えられ、暗器のワカナは相変わらず悠々自適な学園生活と暗殺依頼を受けている。

 十条のお庭番になる京子は十条が暴走しない為に監視を独自にし、この演説を高い場所から眺めていた。新しい出発を祝う拍手を見て京子は呟く。

ひいらぎと人間が共存する世界を生み出す。出来なければ、世界は消えるだけ。今の世界はどちらかが存在するだけじゃ、まとまらないのよ」

 仏と鬼の顔で言い、その場から消えた。




 西本願寺の光葉が拠点にしていた場所の全ては十条に管理され、京雅院の新しい拠点の一つとして使われた。宮古によって取り潰された京都郊外の光葉村塾こうようそんじゅくの跡地ににある光葉の墓前の前でアゲハは手を合わせていた。供え物のマックのスペシャルセットのポテトをつまみ、呟く。

「んー美味い。やっぱマックポテトは出来たての熱さで塩がポテトに溶け込む感じがたまらねぇよな

 青空には白い雲がゆっくりと流れ心地良い風がアゲハの紫の髪を揺らす。

 そして、マンゴーシェイクにも手を出し、

「お前は酒も煙草も女も手をつけなかったからな……しかもさして食にもこだわりが無い。そういや、オレも酒も煙草も女も趣味じゃねーな。全く違う人間だと思ってたけど、探せば共通点なんて結構出てくるもんだ。やっぱ師弟のなせるもんなのかねぇ?」

 微笑みながら墓石に刻まれる聖光葉ひじりこうようの文字を見て問いかける。

 春が近いせいか無数の揚羽蝶が元光葉村塾の周囲に飛んでいる。

 塩気のある指を舐めるアゲハは三分の一近く消え出す線香を見て立ち上がる。

 そして、ここで死んでいった狂陰きょういんの仲間達の事も思い黙祷を捧げた。

「んじゃ、また来るぜ。次来る時はオレは世界一の男になってるかも知れんがな」

 そして、アゲハは紫の髪をかきあげ自分の肩に止まる一匹の揚羽蝶に微笑み、悠々と下駄を鳴らし新しく変化する京の町を歩き出し、その足はまだ見たことの無い景色がある京都藩の外に向かった。

 新しい景色がアゲハを襲う。

 しかし、その全てを受け入れてアゲハは進む。

 恐れ、疑心、未知なるものへの憧れや喜びを胸に秘め呟く。


「……なぁに、オレは狂ってるからな」


 蛹の少年の本当の羽化はこれから始まる――。



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