1話 モンスター遭遇
第一章 【初クエスト】
門番様に睨まれつつも城を出てきた俺だがこの時点で先行きに不安を感じていた
「う~ん、どうしたものか……」
俺は顎に手を当てながら唸っていた
勢いに任せて外に出てきた訳だが、冷静になって考えてみればドラゴン退治って大丈夫なのか?
しかも、一人で行って来いと?アホとしか思えない
実際の勇者なんていうのは、ただのパシリみたいなもんじゃないか?
「しかし、地図を描いてもらったのはいいのだが…… 美的センスなさ過ぎだろ?」
ミーアに渡された地図らしき紙を見つめながら俺は呟く
これでは幼稚園児のお絵描きレベルじゃないのか?
城の絵が描かれた現在地、これは何となく解る。そんで恐らくこのモコモコと描かれているのが目的地であるガルスの森なのだろうが……
何故に城と隣り合わせ?バカか?これでは、まるでご近所様じゃないか?
「はぁ、森に行く以前にまた迷いそうだ……」
俺は深く溜息を吐きながら広い大地を彷徨い歩く
「しかしこれも気になるんだよなぁ…… この動物っぽい絵は何だ?」
地図と睨めっこしながら歩いていると、茂みからガサッと音が聴こえる
俺は気になり振り向いて見た
「…… はぃ?」
一旦、足を止め俺は冷静に考える。
視線の先には何だか凄くプルンプルンとした物体が居るではないか。もしかして、道中によく現われる雑魚キャラで有名なスライムというやつですかね?
可愛いキャラのイメージなのに実際に見ると結構そうでもないようだ
再び地図へ視線を移すと呟きながら俺は頷く
「あぁ、なるほどね。地図に書いてある動物マークはモンスター注意ですか?」
俺は状況を把握して一人で納得するが、すぐさまスライムに背を向ける
だが何気にスライム君は戦う気満々のようだ
「もぅ、めんどくさいな…… 雑魚キャラなどに労力は使いたくない」
溜息を吐き軽く無視しながら先を急ごうとしている俺の後をしつこく追ってくる
相手にせず俺は歩き進むがいつまでも追いかけてくるスライムが気になって仕方が無い
「あぁ! 気が散る! どっか行け!」
俺は苛立ち振り返るとスライムに説教してしまう
するとスライムもポヨポヨと何かを訴えている
「ん? なんだって? ここで倒してもらわないと僕の役目的にも困る?」
俺はスライムを見下しながら何故かモンスターの軽い人生相談に乗っていた。
モンスターにも役目があるのか?この世界におけるルールみたいなものか?
まさかスライムに懇願されてしまうとは思ってもいない。だが、俺に言われてもなぁ
俺は大きく息を吸い込み一言
「そんなもん知るかっ!」
「!」
大声で威嚇する様に言い放ったからなのかスライムは驚き再び茂みの中へ逃げるように消えて行った。
去り行くスライムを見送った俺は、やりきった感を漂わせ勝ち誇りながら呟く
「ふぅ、所詮は雑魚キャラだな。俺の相手じゃねぇ」
そしてモンスターの敵前逃亡と言う形で勇者は勝利した
「さてと、気を取り直して森に向うか」
仕切り直すと俺は地図を片手に再び歩きだした
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