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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
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第七話 霊能太郎と沼の紳士

 

『いってきますどすぇー』

 バタンッ


『なんか最近さっちんがよく外出するようになったな・・・?』

 そうつぶやく彼の名前は蘇我入鹿、自称紳士でさっちんのことが妹的な意味で大好きだ。

 あくまでも妹的な意味で。

「まぁ・・・前までみたくずっと家でパソコンやアニメやゲームしながらお菓子食べてる生活よりはずっと健全なんじゃねーの?」

 そう返すこっちの彼の名前は霊能太郎、自称人間・・・いや普通に人間のはずだけど・・・本当に人間だよな・・・?とか疑問に思えるレベルの人間である。

 ついさっき家を出たさっちんこと山村貞子はビデオの中の井戸に住んでた貞子で、いろいろあって今は霊能の家に住んでいる。井戸の生活からは考えれないようなハイテクな生活と快適空間、それに甘いお菓子などが最高らしい。

 見ためは小学校高学年黒髪ロングな女子で、ビデオの中にいただけのこともあり、画面(テレビだろうが映画だろうが)の中に入れる能力を持っている。

 さっちんが家をよく出かけるようになったのはこの前霊能たちが人外バスターズを作ってからである。

 人外バスターズとは何か?

 その目的は人外に対する情報を集め、友達になること。もしくは人を襲ったりしている人外を説得(暴力も辞さない)して止めさせることである。

 とりあえず大々的に人外バスターズ情報募集とか言っても頭の痛い人扱いされるのは必須なので、基本は情報係としてさっちんがパソコンでホームページを作ってそこで募集している。

 さっちんも情報係に任命されたことで張り切っているようだ。

『人外の情報もなかなか集まらないもんだな・・・』

「赤青さんは人外には詳しくても場所とかは知らない、いわば辞典みたいな人だからなぁ・・」

『それにしてもさっちんはどこに行ってんだろうな』

「案外彼氏が出来ててそこに行ってるとかな(笑)」


『!!!くいえfwせkgじおrgs!!!』


「・・・慌てすぎじゃないか?」


 

 第七話 霊能太郎と沼の紳士


 

『えfじょいwf!!?いfひおうぇfんwsきえ!!!』


「落ち着け!日本語で話せ!!あと涙を拭け!!」

『大丈夫だ霊能、僕は落ちついている。いつでもゴミをこの世から塵も残さず排除する準備は出来ている』シュコォォ・・シュコォォ・・・

「呼吸音がシュコォとか言ってるやつに落ち着いてるやつなんていねぇ」

 実際、今の蘇我は殺気だらけでいつもとオーラが断然違う。具体的には駅に置いといた自転車のサドルにカイワレが植えられていたときのような怒りを見せている。

『行くぞ霊能、バスターズ初仕事だ。この世界から確実にバスターしてやる』

「・・・俺の友人を作るのが目的なんだが・・・殺すなよ?頼むから」

 こうして二人はさっちんの後をこっそりとついていくことにした。

 だって堂々とついていったら彼氏が出てこないかもしれないからね!

「でもさっちんがどこに行ったのか分かんないぞ?」

『大丈夫、こっちだ。今の僕は紳士レーダーが使える』

「紳士ってなんなんだろうな。あ、本当にいたし」

 さっちんがいた。後ろで隠れながらついていく二人に気づくそぶりをまったく見せずに歩いている。しだいにどんどん人気のないところに入っていく。

『こんな人気の無い道の先に何があるって言うんだ・・・』

「さぁ・・・?」

 さらにさっちんは森の中へと入っていく。ここの森は人気が無さ過ぎて自殺志願者くらいしか入らないといわれている森だ。どれくらい人気が無いかというと、この森に一つも秘密基地がないと言えば分かってもらえるだろう。そしてなんかよく分からない沼についた。

 さっちんは誰かを探しているようだ。

『・・・沼?』

「沼・・・だな。誰を探してんだろね」

 するとさっちんにどこからか現れた少年が声をかける。そして何やらさっちんと話している。


『・・・さて霊能、今日の夕飯はハンバーグでいいよな』シュコォォ・・シュコォォ・・・

「やめろ、まだミンチにするのは早いから。まだ彼氏と決まったわけじゃないから」

 耳をすますと、向こうの二人の会話が聞こえてくる。


 

『ちょマジで貞子ちゃんカワイイねェwwマジパネェwww』

『はぁ・・・それでどうなんどすかぁ・・・?』

『もうマジでヤバイwww貞子ちゃんの可愛さくらいやべぇんだってマジでww』

 どうやらあの少年はチャラ男のようだ。


『離せぇぇぇ!!!僕は世界を救うんだぁぁぁ!!!』

「落ち着けぇぇぇ!!さっちんに覗きがばれるぞ!!!」

 隠れながら蘇我を全力で抑えつける霊能。

 だがずりずりと前に進む蘇我、紳士パワーは無敵なのか。

「直接チャラ男をボコったらアレがさっちんの彼氏だった場合さっちんに嫌われるぞ!!」

『・・・たしかに。OKならばあの害虫を事故に装って駆除すればいいんだな?』シュコォォ・・シュコォォ・・・

「まぁ・・・そういうことになるな。だがどうするんだ?」

『そうだな・・・』

『わが息子ながら殺したい・・・』

「オイなんか物騒な言葉が向こうから聞こえたんだが」

 霊能が言葉の聞こえたほうを見ると、頭に皿をのっけたおじさんがさっちんたちを見て呪っている。おじさんもこちらに気がついたようだ。

 蘇我がおじさんに近づいていく。

 おじさんも蘇我に近づいていく。

 そして何も言わず・・・二人はがっちりと握手をした。

「いや何が起きたんだよ!」

 そして二人同時に霊能のほうに振り向き、とてもいい笑顔で言った。


『『ちょっくら殺ってくる』』


「さっそく息を合わせてんじゃねぇ!!・・・ところであんたは誰なんだ?」

『私か?・・・とても残念だがあそこであの可愛い子にちょっかいを出している馬鹿の親父だ』

『そうか・・・あなたほどのジェントルからあんなゴミが生まれるなんて・・・奇跡ですね』

『私ごときがジェントルだなんて・・・あなたにはかないませんよ』

『『HAHAHAHA~』』

「こいつらうぜぇ」

『ところでジェントルの名前をお聞きしても?』

『僕は蘇我入鹿です。でこっちが霊能。あそこのとても可愛い子がさっちんです』

『ふむ、あの子はさっちん君というのか・・・失礼、私は川流かわながれ佐悟さごと申します。あっちの馬鹿は悟丈ごじょうといいます。どうぞよろしく』

「よろしく。ところで沙悟さんは頭の皿っぽいのからしてカッパなのか?」

『そのとおりだ。NASAには秘密にしといてくれると助かる』

『別に言いませんよ。僕だって幽霊ですし』

『ふむ・・・驚いたな。まさか幽霊と知り合いになれるとは』

『知り合い?違いますよ。僕たちはそう・・・紳士同盟を組んだ兄弟じゃないですか』

『・・・!!そうだな。すまない、兄弟よ。私が間違っていたようだ』

『謝る事はありませんよmyブラザー』

『君も敬語なんて必要ないさmyブラザー』

『『HAHAHAHA~』』

「こいつらマジでうぜぇ」

『ふむところで君たちは人外バスターズというのを聞いたことがあるかな?』

「へ?」

『いや最近聞いたんだがね、彼らに依頼があるのだよ』

「人外バスターズっての『ちょっとどこ触ってるんどすかぁ!!』は俺ら・・・・」

『『コロス』』


 彼らの豹変は早かった。

 ついさっきまでなごやかに談笑していたとは思えないレベルの切り替えに霊能も冷や汗をかいた。この豹変っぷりたるやマザーテレサも裸足で逃げるレベルである。

『ごめん霊能・・・ハンバーグ作れそうにないや。跡形も残さないから』シュコォォ・・シュコォォ・・・

「いや、いいです。別にいいです」

『すまない霊能君・・・息子(ゴミ)が迷惑をかけた。死をもって償わせるから許してくれ』シュコォォ・・シュコォォ・・・

「大丈夫です気にしてないんで殺気を漏らさないでください本当に」


『『レッツパァァリィィィィイイ!!!!!』』


 その瞬間霊能は彼らを見失った。気づいたときには視界にはさっちんしかいなかった。

 ただ、何かが何かを潰す音と、『スイマセンッ!マジでスイマセン!!』という声だけが森に響いていた。


 

「おーいさっちーん」

『あ、霊能はん。こんな所でどうしたんどすか?』

「いや・・・あ、さっちんはこんなところでどうしたの?」

『それがなぁ、ここの沼に怪物が住みついたから退治して欲しいって話があってな、聞き込みしてたんどす』

「聞き込みかぁ・・・そっかぁ・・・」

『で、聞き込みしてたカッパはんがとにかく絡んできてなぁ・・・それで腰を触られたかと思ったら消えてしまったんどす・・・』

「・・・大丈夫、そのカッパは今頃星になってるから」

『はぁ・・・そういえば蘇我はんは?』

「・・・今頃星を作ってるんじゃないかな・・・」

 それにしても怪物ねぇ・・・佐悟さんたちのことじゃないだろうな・・・

 とか思いつつ沼を覗く霊能。すると全長三メートルはありそうな蛙がざぱぁと沼から顔をだした!その蛙は突然舌をものすごい速さでさっちんにむかって突き刺した!!

「なっ!!」

 霊能が間に合わない、まずい!!と思い、さっちんが驚いて目をつぶるが、何時までたってもさっちんに予想していた衝撃は来ない。おそるおそるさっちんが目を開けると・・・


 

 ―――オイ クソガエル キサマ ダレヲネラッタ?―――


 

 ・・・修羅がいた。もとい、蛙の舌を握りつぶした蘇我がいた。

 その後は酷かった。おそらくこの沼に住みついた怪物だろうと思われる蛙は、沼から一瞬で引きづり出され、

『さっちん、ちょっと俺この蛙とオハナシがあるから』

 と言って蘇我が森の奥深くに連れていった。

 その後、その蛙を見たものは誰もいないという・・・ちなみにその時の蘇我を見た霊能は後日こう語る―――

「・・・あれは何かと思いましたね。まさかこの俺が殺気に飲まれて動けなくなるとは思いませんでした」


 

 そしてそれから数分後・・・


 ぼろ雑巾のような何か、いやかすかに息をしているようだ・・・を持った佐悟さんと、返り血のような汁を体中につけている蘇我が沼に帰ってきた。

『いやぁ蘇我君たちが人外バスターズだったとは驚いたなぁ』

「ははは・・・依頼ってのは蛙のことでしたか?」

『ああ、あの蛙がある日あの沼に住み着いて無差別に生き物を食い漁るもんだから困り果ててな・・・』

『とにかく解決してよかった!これで佐悟さんは安心してこの沼に住めますね』

『そうだな、礼を言うよ。ありがとう君たち』

「今回俺何もしてない気がするけどね」


 そして帰り道・・・


『いやぁ・・・さっちんが聞き込みとはなぁ・・・一言言ってくれたらよかったのに』

『すいまへん・・・バスターズの情報係に任命されてうれしかったんどすぇ・・・』

「はぁ・・さっちんが張り切るのはいいことだしいいじゃねぇか、何とかなったんだし。佐悟さんとも知り合えたし」

 いろいろあったが、バスターズの初仕事は終わった。

 困ってる佐悟さんも助けられたし、何も活躍は出来なかったがなんだかんだで初仕事に満足している霊能なのであった。



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