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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
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第五話 霊能太郎とメリーと敵と

 


 はぁい!! 私メリー!

 今廃ビルにいるの。


 私はいつもランダムで誰かに電話をして、標的をきめたらその人に電話を逐一かけながらどんどん近づいていって後ろから襲うんだけど……


 プルルルル……プルルルル……


 ……どうやら私は運が果てしなく悪いらしい。


 プルルルル……プルルルル……


 ガチャ「もしもし、俺霊能、今お前の二キロ圏内にいるよ」


 私、メリー。今、ピンチです。


 

 第五話 霊能太郎とメリーと敵と


 

『ええぇ……なんなの? どういう事なの……!?』


 落ち着け! 落ち着くのよメリー!! 大丈夫、自分を信じて! 氷のように冷静に、冷えたこんにゃくのようにCOOLに!!

 いやこんにゃくって何よ! こんにゃくはこんにゃく芋からできている食べ物!! 違うそういう意味じゃないわ!!!

 まずは状況を確認……!!!


『えぇーと……いつものようにランダムに電話をかけて……』


 そう、この時点では何も起きてなかった。電話をかけた相手がとてつもなく悪かったのよ!! そう……かけた相手が……


 プルルルル

 ガチャ「もしもし、俺霊能、今お前の一キロ圏内にいるよ」ガチャ


 ホンギャァァァァ!!!

 霊能って誰よ!! そう、私はこの霊能って人に電話をかけた。

 そしたら……


『もしもし私メリー、今「俺は霊能だ、今から行く」あなたの……』ガチャ


 って……

 この時点で何かがおかしかった!! 今から行くって何!!? 来ないで!!

 それからリダイアルしてきて……初めは遠かったのにそれでどんどん近づいてきて……


 プルルルル

 ガチャ「もしもし、俺霊能、今お前の50メートル圏内にいるよ」ガチャ


 今こんな感じですギャァァァァァァ!!!! 嫌ぁぁぁぁぁ!! 助けて!!

 こんにゃく神よ! メリーを助けてぇぇぇ!! こんにゃく神って誰だよぉぉぉぉ!!

 もういやぁぁぁぁぁ!!! いや、待って! 落ち着いて……

 COOLになるのよメリー……この霊能って人が私の居場所を知ってるわけが無い……

 そう、これはいたずらよ! 怖がる必要なんてどこにも無いわ!!


 プルルルル

 ガチャ「もしもし、俺霊能、今お前のいる廃ビルの前にいるよ」ガチャ


 場所もばれてたぁぁぁぁ!!! こいつ何者なのよぉぉぉ!!!

 逃げよう……!! 逃げるしかない!! 私の生きる道は逃げに徹することで真の意味を発揮するのよ!! 逃げて逃げて将来はこんにゃく畑で優雅な老後を……

 って意味が分からない!! 混乱しすぎよメリー!! とにかく窓から脱出を……!!!

 あれ……? 足音が聞こえてきた……?


 プルルルル

 ガチャ「もしもし、俺霊能、今お前のいる部屋の扉の前にいるよ」ガチャ


 もう逃げる時間無いぃぃぃぃぃ!!! パニックしすぎたぁぁぁ!!!


((落ち着きなさい、メリーよ))


 あ、こんにゃく神様!! ……こんにゃく神様ぁ!!?

 いやまぁいいわ!! もう幻覚でも幻聴でもいいから私を助けてぇぇぇ!!!


((そしてあきらめなさい、メリーよ))


 裏切られたぁぁぁぁぁ!!!! こんにゃくのようにつるっと裏切られたぁぁぁ!!!


 トントン


『誰!!? 私の肩をたたくのは……今それどころじゃないのよ!!』


 トントン


『ああもう!! だから今はどうやって逃げるのかを――「俺霊能、今お前の後ろにいるよ」』


 あ、私死んだわ。あーあ、これ間違いなく殺されるパターンだわ。だって世界がスローだもの。色が無いもの。ふだん人の背後をとって襲うのは私だったのに……ある意味私にはふさわしい最後かもね。


((いまこそこんにゃくを食べるのです、メリーよ))


 もってねぇよ!! お前絶対殺す!! 私が死んでも絶対殺す!!

 ああもう……まだ死にたくな……あ!! そうだ!! そう! 私にはアレがある!!

 見た目か弱い少女にしか見えない私が人の背後を取れるのはアレのおかげ!!


((こんにゃくか?))


 死ね!!

 私の妖怪としての能力は……電話した相手の背後に瞬間移動する能力!!!

 いつもじわじわと距離を詰めてくみたいに言ってるけどあれ実際距離つめてるわけじゃないから!! 私が動いてるのは実は最後の電話のときだけ!! 誰でもいいから電話をかけてテレポートすれば逃げれる!!


「俺と友達にな」


『番号は適当に!! 通話!!』


 ガチャ「もしもし、某はゴンザレ『もしもし私メリー今あなたの後ろに行くの!!!』」ガチャ!!!


 シュン!!


 

「消えた……」


 廃ビルの中でorzをしている彼の名前は霊能太郎、趣味は筋トレでインナーマッスルも適度に鍛えている男だ。


『逃げられたね……まぁ……ドンマイ』


 そのとなりで慰めている幽霊、彼の名前は蘇我入鹿、筋トレは霊能に勧められてたまにやるが幽霊に効果があるのかは微妙だ。


『だからやめなって言ったのに……』


「友達逃した……」


 そう、彼らはメリーさんから電話がきたのをいいことにリダイアルしまくっていたのである。

 そのたびにどんどん近づいていったのでだいぶ遠いところにきてしまった。ちなみにメリーさんの位置を逆探知したのは蘇我だ。蘇我いわく、霊力と電気は相性がいいらしい。メリーさんに近づいていっているときの彼らはとても楽しそうだった。

 蘇我はそれこそ


『やめときなって……普通に会いに行こうよ』


 とか言っていたが今回のスニーキングミッションにはダンボールをかぶるほどノリノリで楽しんでいた。


『さて……帰ろうか』


 蘇我が霊能をつれて帰宅しようと歩き出す。

 しばらくとぼとぼと歩く霊能にあわせて帰っていると、ザンッ!! と突然何かに襲われた。

 鋭い爪で襲ってくるその何かは明らかにこちらを狙ってきていた。


『……悪魔か!?』


 そう悪魔である。禍々しいオーラと濃厚な殺意にまみれたそれは――――

 ――――的確に命を狙ってきている!!


「友達になろ」ザンッ!! 「危なっ!!」


 霊能の言うことなど理解すらしていない……いや、耳にすら入っていないのだろう。

 ただただその悪魔は命だけを狙ってきているっ!!


『霊能!! こいつはおそらく低級悪魔だ!! 話の通じるようなやつじゃない!!』


「肉体言語は?」


『多分通じる!!』


『コロスコロスコロス! 妖怪幽霊妖精悪魔!! ソノ全テヲコロス!!』


 自分が悪魔の癖に殺す対象に悪魔が入っているとはいかがなものか。


『全テハ現世カラ消滅シ! 人間ハ人間ノ場所ニ! 人外ハ人外ノ場所ニ!!』


 そう言いながら悪魔は蘇我にその鋭い爪を向ける。

 だがバックステップで間一髪避ける蘇我、反撃とばかりに顔面に蹴りを叩き込む!

 そして蹴られて一瞬動きが止まった所を――


「何物騒なこと言ってやがる!!」ドグチャァ!


 霊能が思いっきり殴る!!!

 その一撃にはメリーさんに逃げられたことへの苛立ちも大いに含まれているだろう。

 八つ当たりもいいとこである。


『全テハ……カマタリ様ノタ……メニ……』


 最後にそういい残すと悪魔は光の粒になって消えていった。


「蘇我……今のやつはいったいなんだったんだ? 随分物騒なことを言っていたが……」


 だが蘇我はうつむいたまま何も答えない……霊能はもう一度問う、


「おーい、蘇我ー。今のに心当たりはあるかーい?」


 蘇我はうつむいたまま答えた……それこそ、信じられないような顔をしながら。


『最後にカマタリ様って言っていたよね……?』


「ああ、うんなんか言ってたね。」


『多分それは……鎌足。中臣鎌足のことだと思う』


「そんな深刻そうに言われても……誰だよ。赤い帽子の配管工の進むステージにおいてあるコインを設置してるやつくらい誰だよ」


 その言葉をシリアスなんだからふざけんなといわんばかりにスルーしつつ、

 搾り出すように……懐かしむように……それでいて苦しむように蘇我は言った。


『中臣鎌足は……僕の親友だった男だ』



メリーをヒロインとした短編を番外編の方で掲載していますので、よろしければそちらもご覧下さい。


化け者交流会談記ES11~佐悟とメリー、古き日の記憶~

http://ncode.syosetu.com/n6723bd/


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