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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
39/45

特別番外編 魔法少女タミフルたみ子~第二百九十九話 悲劇! 怪人石鹸男!!~



「あなたー、たみ子起こしてきてくれないかしら? あの子ったらまだ寝てるのよ」

「構わんよ? まだ少し出社まで時間もあるしな」

 たみ子を起こすために二階へ上がっていった彼の名前は秘密だ。

 しいて言うならばたみ子のパパさんだ。本当だ。

 パパさんが布団の前に立つ。

「たみ子ー、起きなさい。遅刻するぞー」

「ん・・・あと五年・・・」

「起きなさい、布団剥ぐぞ」



 特別番外編 魔法少女タミフルたみ子

 ~第二百九十九話 悲劇! 怪人石鹸男!!~



「あー、うー、起きる・・・起きるからちょっと待って・・・」

「だが断る!! パパの一番好きなことはーーッ!! 気持ちよさそうに寝ている娘の布団を容赦なく剥ぐことだッ!!」

 ッグ!! パパさんの手に力が入り、布団を剥がしにかかる。

 だがしかしたみ子も負けてはいない。全力で布団を死守している。

「ちょっと・・・パパ・・・力抜いてよ・・・ッ!!」

「悪いな娘よ・・・ッ! パパはこの瞬間のためにたみ子を育てたといっても過言ではない・・・ッ!」

「セイヤッ!! セイヤッ!!」

 ボコォ!!! ボコォ!!!

「ちょ痛いやめてゴメンパパが悪かった、みぞおちに正拳突きするのやめて」

「セイヤ!! セイヤァァァァ!!」

「アウチ・・・流石我が娘よ・・・グフッ・・・だがパパ倒してもいずれ第二第三のパパが・・・」

「さて朝ごはん食べに行こっと」

「あれ? スルー? 切り替え早いねたみ子・・・」



 ◇



 登校途中!

 別に特別なことの無い普通の道を歩く中学生たち。

 当然だがたみ子もそのうちの一人である。

「る~るる、るるる・る~るる~♪」

 朝からパパさんのボディを痛めつけることができてご機嫌なたみ子。

 ついつい徹子の部屋の鼻歌が漏れてしまっている。

 と、そこへ後ろから聞き覚えのある声がかけられた。

「たみ子ちゃ~ん! おはよっ!」

「おはよう! きの子ちゃん!」

 そう、たみ子の親友のきの子である。

 右手に包帯を巻いて、別に怪我とかしてないのに片目に眼帯をしている女の子だ。

「聞いた? 最近のあの噂ー」

「え、何? 教えてよきの子ちゃーん」

「なんかねぇ、最近パスポビッチがブポラロッカ過ぎてパないらしいよー」

「つまり・・・タミフルを飲めってことだね!」

「Yes!!」

 なんだかんだで学校についた。

 学校の名前? ・・・えと・・・あの・・・

 そうだ、昨日何食べた? スパゲッティ?

 ・・・そう、ここは私立スパゲッティ中学である。

「たった今中学の名前が適当に決まったような気がしたけど気のせいだね!」

「たみ子ちゃん・・・今授業中だよ、静かにしなきゃ・・・」

「あ、そうだね・・・学校来てからずっとタミフルと潮の満ち干きとの関連性について考えてたから授業聞いてなかったよ・・・」

「もう、ちゃんと授業は聞かなきゃ駄目だよ?」

「うん、そうだね・・・そういや今何の授業だろう・・・?」

 とりあえず授業を聞こうと思ったたみ子は黒板のほうに目を向ける。

 当然だがそこでは女性の教師が熱弁をふるっている。


「芭蕉の句には・・・」

 ガラッ! とそこへドアが開き、スーツの男が入ってきた。

「笹子ぉ!!」

「いまさら何よ!!」

「俺が悪かった・・・」

「馬鹿ぁ! 寂しかった!」

 ガラッ!!

「・・・この泥棒猫」

「お母様!!」


「なんの授業なのこれ!?」

「道徳だよたみ子ちゃん、嘘だよ。世界史だよ」

「あ、なんだ世界史かぁ・・・確かに随分とドロドロしてるもんね。まるで熱で溶かしたタミフルのように」

「溶かしたことあるんだ・・・流石だね・・・」

「私のタミフルへの愛を舐めちゃいけないよきの子ちゃん。私の愛はあのンガンガ族長も認めたところだよ」

「どちら様!?」

「知らないの? あの族長を?」

「いや・・・うん、そんな常識のように言われても・・・どんな人なの?」

「基本的には丸出しかなー」

「何が!? 何が丸出しなのたみ子ちゃん!! 上半身だよね? 上半身だよねー!?」

「恥部だよ」

「せめて下半身って言ってよ!! 恥じらいを持ってよ!!」

「チンコ○出しなんだよ」

「完璧に丸出しだよ!! 伏字使うところずれてるよ!! 絶妙なズレ具合で伏字として全く機能してないよ!!」

 こうして私立スパゲッティ学園の授業は過ぎていく・・・



 ◇



 授業後!

 学校の帰り道、ふとたみ子は携帯を取り出した。学校にいる間はサイレントマナーモードにしているため、いくら着信が来ても気づかないのだ。

 つまり、授業後に携帯を見ると・・・


 着信履歴

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・怪人石鹸男スベスベール

 ・恥部


「着信七件・・・げ、全部怪人からじゃん・・・あ、違う。族長からも電話着てた・・・とりあえず留守番聞かなきゃ」

 ピポパ・・・と近代的な音が携帯から鳴り、留守番サービスが起動する。

[録音を再生します・・・]

[フハハハハ! スベスベール様だ! 今からシカウマ公園で罪の無い子供たちを泡まみれにしてくれるわ! 善人気取りの魔法少女よ! 止められるものなら止めピー]

[時間が足りんかった。続きだ。止められるものなら止めてみせよ! フハハハハ!!]

[オイ魔法少女よ! 怖気づいたか!! 貴様が来ないせいで罪の無い子供たちが泡まみれになってしまうんだぞ! それでいいのか魔法少女! そんな覚悟で暗黒ちょピー]

[暗黒超大魔王様の野望を止めるなどと大言を吐くとは!! この軟弱者がぁ!!]

[・・・まだ? まだ来ないのか? なぁ・・・いいのか? なぁ・・・]

[・・・子供たち・・・公園に遊びに来いよ・・・なぁ・・・家でゲームばっかしてんじゃねぇよ軟弱ものがぁ・・・]

[ハダカなのは悪ではなイ!! ムシロ!! 布で隠ス事のほうガ悪であル!! やましいことがあルから隠すのダ!! なぁそうだろウ!!]

 当然だが最後のが族長である。

 ちなみに族長の好きなゲーム機はメガドライブだ。

「公園かー・・・どうしよっかなー行くのめんどくさいなー・・・でもなー・・・」

 突然だが説明しよう!! 彼女、たみ子は魔法少女である! 皆には秘密だよ! ・・・秘密! 公然の秘密!

 で、だ。魔法少女であるからして、悪の組織とは戦わなければいけない宿命を背負っているんだ!

 なんでそんな宿命を持っているかって?

 考えてもみて欲しい、ヒーロー・・・もしくは正義の味方の条件を!

 強いこと? やさしいこと? ・・・確かにそれも大事だ。

 だが違う。もっと根本的なものがあるんだ。・・・そう、悪と戦うことだよ!

 悪がいないと正義の味方は存在しえない! その逆に! 正義がいなければ悪は栄えない!!

 つまりだ!! つまりつまりつまりぃ!!

「今月分の給料貰ってるしなー・・・ストレス解消にもなるし行こっかな!」

 金で雇われているのだ。悪の組織に。

 補足説明だが、契約の内容は超たみ子に有利である。

 初めて悪をやっつけたときにOHANASIした結果、今の契約があるのだ!

 あ、この契約は組織のトップである暗黒超大魔王と一部の怪人しか知らないのでみんなも秘密にしておこうね! アメちゃんあげるから秘密にしておいてね!

 行くことに決めたたみ子はとことこと歩いて公園にたどり着いた。

 公園には小さな子供の姿などどこにもない、あるのは下を向いてブランコに腰掛ける怪人石鹸男の姿と・・・

「風ガ~語り掛けル~主に~下半身に~♪」

 ノリノリでブランコにゆれているンガンガ族長の姿だった。

 と、その時怪人石鹸男スベスベールがたみ子の存在に気づいた。

『・・・あ、やっと来てくれたんだ・・・やっと・・・』

 随分と消耗している。やはり一人落ち込んでる隣で露出魔がブランコを立ち漕ぎしているという状況は精神的にクるものがあるのだろうか。

 しかし正義の味方も来たことだし、彼はゆっくりと深呼吸をして、精神を高め、戦闘準備にはいる。

『ふぅ・・・はぁ・・・よし!! フハハハハ! 遅いぞ魔法少女よ! この怪じぶべらへるつぅっ!!』

「セイヤッ!! セイヤッ!!」

 ボコォ!!! ボコォ!!!

『ちょ痛いやめてゴメン悪かった、セリフの途中で正拳突きするのやめて』

 ガツン!!! ガツン!!!

『言い方が悪かったかな? バットに持ち代えるんじゃなくて攻撃するのをやめて欲しいんだ。せめてセリフの途中はやめて欲しいんだ』


 チラッ、チラッ


『下半身丸出しのオッサンは無理やり手でチラリズムを作るのをやめて欲しいんだ。あとできれば帰って欲しいんだ』

 開幕直後より鮮血が飛び散る。

 ついでにンガンガ族長のセクシーさも飛び散る。

 たみ子が満足したのか、一旦攻撃をやめたので、ここぞとばかりにスベスベールがしゃべりだす。

『魔法少女よ! 貴様に決闘を申し込む!! いざ尋常に勝負せよ!!』

「いいだろウ! ンガンガ族に伝わル伝統舞踊を見せてやル!!」

『貴様ではない!! 何故貴様が出てくるんだ! オッサンはさっさと帰れ!!』

「ナニ・・・? ワタシを誰だと思ってル・・・? キサマはいツからワタシが魔法少女じゃないと錯覚していタ・・・?」

『最初からだいやむしろ貴様のどこに少女の要素があるんだ言ってみろオイ』

 スベスベールが頭を手で押さえながら族長に問う。

 聞かれた族長は少しばかり空を仰ぎ、なにか思いついたようで自信満々に答えた。


「チンコだ」


『ぶち殺すぞおんどりゃぁああああ!! 最悪だ!! 少女の要素つってんだろうがてかせめて伏字使うなり違う言葉に言い換えるなりしろやボケが!!』

「そうカ、ならワタシのパスポビッチがブポラロッカ過ぎてもはや魔法少ジョンの領域ニ・・・」

『もういいよ帰れ!! 魔法少ジョンって誰だよ魔法少女と戦いたいんだよ俺は!! 貴様のジョンの状態になんぞ興味ねぇんだよぉぉぉ!!』

「さぁ脱ぐのダ!! ワタシと同じ開放感に包まれよウではないカ!! キサマにも禍福剥の良さを教えてやろウ!」

『禍福剥ってなんだよ嫌だやめろ脱がそうとすんな突然なんなんだよああもう魔法少女助けてー!』

 説明しよう!!

 禍福剥(カフクリ)とはンガンガ族に古くから伝わる伝統舞踊である!!

 人には禍・・・すなわち災いと、福・・・すなわち幸福の両方が備えられているとされる。

 その二つを服ごと剥がすことで零からやり直そうというのが禍福剥の目的である。ってばっちゃが言ってた!!

 そんなわけで突然スベスベールは族長に服を脱がされかけているというわけだ。

 族長の優しさだね! すっごいはた迷惑だけども!

 だがしかしそんな族長のやさしさが伝わっていないスベスベールは藁にもすがる思いでたみ子に助けを求めた。

 その時、スベスベールの目に映ったものとは・・・

「おまわりさん、こっちです」

「通報ありがとうお嬢さん。あとは我々に任せてくれていいよ」

 警察に通報したたみ子であった。

 下半身素っ裸のおっさんと、よく分からない[石鹸男]と書いたコスチュームを着た男。

 しかも絡み合っている。

「国家の犬めガ!! 離セ! 儀式の途中だゾ!!」

『違う! 俺は違う!! こんなやつと一緒にするなうわぁぁぁぁぁ!!』

 こうして町は平和になった・・・。

 夕日をバックに、たみ子はゆっくり歩いて帰路につく。

 ん~っと体を伸ばし、なかなか見ることの出来ないさわやかな笑顔で、たみ子はこう言った。


「さて・・・はやく家に帰ってタミフル飲~もうっと」






 特別番外編 完





 次回予告!

 今日も普段と変わらない朝を迎えるはずだったたみ子の前に本当に第二のパパさんが現れた!!

 ついでに第三のパパさんと第四~第九のパパさんも同時に現れた!

 大量のパパさんに囲まれるという稀有な体験をするたみ子! 果たしてたみ子の運命は!?

 次回! パパの朝食は一人分!!

 見ないと脳みそ狂わしちゃうゾ♪



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