第三十七話 霊能太郎と人気投票
ここは霊能ハウス。
いつものように霊能と蘇我とさっちんが家にいる・・・が、その表情は三者三様だ。
一人は純粋に喜んでいる。
『おお!本当に!?僕二位なの!?やった!!紳士で良かった!!』
一人は普段と変わらずにこにこしている。
『まぁギリギリ十位以内だしセーフどすぇ~』
一人は・・・
「・・・・・・・・・・・・死にたい」
全力で落ち込んでいた。
第三十七話 霊能太郎と人気投票
その理由は非常に簡単、単純明快。
まずは下記を見て欲しい。
26位ロック
25位石勿 想
24位きの子
23位神父さん(キリスト)
22位中臣鎌足
21位清水青葉(女神)
20位四天王
19位アイアン☆ふっくらハギ男
17位同立四天王(カトウ)
16位霊能太郎
15位暗黒超大魔王
14位ダイナマイト吉松
13位川流 佐悟
12位小次郎
11位くっちー
10位ツキミ
9位さっちん
8位棒 燐子
7位老師
6位マウンテン龍
5位ゴンザレス
4位店長
3位闇倉 暗菜
2位蘇我 入鹿
1位魔法少女タミフルたみ子
これが何かお分かりだろうか。
そう、人気投票の結果だ。
何?何時の間にそんな投票をしてたかって?・・・身内だけでささやかにやったんだよ!
とまぁそれは置いといて・・・これを見た反応が、さっきのである。
蘇我は喜び、さっちんはほっとし、霊能は絶望した。
「何でだ・・・何故?ワッツ?ホワイ?何で俺十六位?なにこれ現実?ああ、夢か。夢だよね 、うん夢だよあははは・・・」
そうぼやきながら宙を見つめる霊能の胸には、[主人公(笑)十六位]と書かれた黄土色のプレートがついている。
正直見ててせつない。
『霊能はん、現実どすぇ。紛れも無い現実どすぇ~』
それを慰める少女、さっちんにも黄色のプレートがついている。そのプレートにはしっかりと[九位]と順位が書かれている。
「そんな馬鹿な!だって・・・え?だって・・・!俺・・・主人公だぜ!?ゴム人間や死神代行、果ては死んだ目の侍とかと同じだぜ!?なのに・・・なのに・・・二桁!?」
『・・・霊能はん主人公だったんどすぇ・・・?』
「そういうの真顔で言うのやめて。心の大事な部分がゴリゴリと削られてくから」
『でもまぁランキング圏外のケロちゃんよりはマシどすぇ。最近はセリフすらないんどすから・・・』
「いやでも・・・これはねぇよ・・・はぁ・・・こんなもんいるかよ・・・」
ベシッ!
そういって霊能はプレートを引きちぎり床に叩きつける。
『落ち込みすぎどすぇ・・・もっと前向きに考えるんどすぇ。もうここからは上がるだけだと考えるんどすぇ!霊能はんの順位は悪いことばかりじゃないどすぇ!』
「・・・暗黒超大魔王より順位が下でも頑張れるかなぁ?・・・まだ俺には希望が残ってるかなぁ!?」
『いや無理だろ。・・・・・・あ、間違えた。頑張れるどすぇ~』
「オイィィィィィィ!!何か今どす黒い内心がはみ出た気がするんだけどォォォォォォォ!!・・・はぁ・・・死にてぇ・・・」
死の願望をぶつぶつとつぶやく霊能に、やたらにやにやした蘇我が近づく。
彼の表情は、優越感と満足感で満ち溢れていた。
『ふふっ・・・まぁ仕方ないよ霊能、ふふふっ・・・これから・・ふふっ・・頑張ればい「そぉい!!」ふふぶべらっ!!』
胸に光り輝く[アイアム二位]と書いたプレートをつけた蘇我の顔面に、霊能の裏拳が的確にHITする。
あまりにもうざかったのだ。これは仕方ない。そして蘇我は今世紀稀に見るほどキレのある綺麗なフォームで宙を舞った。
グシャァ!っと蘇我が床に落ちる音とともに、霊能は顔を上げる。
そして生気が回復してきた顔つきで、ニヤリと笑いながら言った。
「ああ・・・そうか、分かったぜ。うじうじ落ち込むなんて俺らしくないな・・・ようは俺より順位が上のやつが居なくなればいいんだ。みんな埋めよう」
ここに、一人のスコップを持った修羅が誕生した。しっかり蘇我は埋めた。
◇
『はぁ・・・霊能はんはいったいどこに行ったんどすかぁ・・・?
今現在、さっちんは霊能を探している。
そう、あのあとなんだかよく分からないテンションになった霊能は家の外へと飛び出していったのだ。
一応さっちんの方が順位が上だが、さすがに家族同然の幼女を埋めるほど霊能も狂ってはなかったらしい。
まぁ別にさっちんが霊能を探す必要は無いのだが、やることも特に無いので探すという口実でふらふらと歩いているのである。
『暇どすぇ~、果てしなく暇どすぇ~。暇すぎて死にそうどすぇ、誰か助けて欲しいどすぇ~』
一人で目的もなしに歩くというのは結構暇なものなのだ。それが見慣れた町だというのならなおさらだ。
しかし、そんなさっちんに近くの電柱から声がかかる。
『ふむ、幼女の助けを求める声があるところ・・・必ず紳士有り、だね』
『佐悟はん・・・まさかずっとストーキングしてたんどすぇ・・・?』
『いや違うぞさっちん君。私は見守っていただけだ』
『誰かぁぁぁぁぁ!!助けてぇぇぇぇぇ!!ここにストーカーがいるどすぇぇぇぇぇ!!』
『さっちん君!?冗談がキツイよ!?ふむ、流石の私も二回目の警察のお世話になるのは勘弁して欲しいところだよ』
『・・・前科あったんどすか・・・ 』
『ふむ、前にちょっと・・・ね』
電柱の影から現れた佐悟の胸には[紳士な数字・十三位]というプレートがついている。
果たして十三のどこが紳士的なのだろうか。
『まぁいいどすぇ、所でくっちーはんやツキミはんがどこにいるか知らないどすか?』
『ふむ・・・それならば先ほど向こうで見かけたよ』
『ありがとうどすぇ~、ではバイバイどすぇ』
『ふむ、彼女たちの居場所を聞けばあとは用済みということか。・・・将来は悪女になりそうだ』
ヒュ~~~
『・・・?何の音どすか?』
さっちんの耳に風を切るような音が聞こえてきた。
そしてすぐさま、ズダァン!!との擬音とともに上から何かが・・・いや、誰かが降ってきた。
茶髪の髪、鍛えられた腹筋・・・そう、主人公(笑)だ。
「見ぃつけた・・・どうも佐悟さん、八つ当たりしに来ました」
『っふ、ふむ。一体どういうことかな?』
霊能のいつもとは違う空気に後ずさる佐悟。
霊能は持っているスコップを振りかぶる。
『お、落ち着くんだ霊能君、私に八つ当たりしても何も変わらないよ』
「そのプレートをよこせ・・・俺は佐悟さんの順位を奪うんだ・・・そうすれば俺が十三位だ・・・!」
『・・・わ、分かった。このプレートは明け渡そう。だからそのスコップを置くんだ・・・』
佐悟が胸からプレートを外し、霊能に渡す。
そして、安全を確保した後にふと疑問を持ち、霊能に問いかけた。
『・・・ふむ、それにしても一体なぜ君は私のプ レートを欲しがるんだい?』
「何故ってそりゃぁ・・・」
『詳しく見てないが、主人公なんだから私なんかよりも順位は上のはずだろう?私のプレートを何に使うんだい?』
・・・ブチィッ
何かがキレた音がした。
・・・川流 佐後、彼はいちいち一言多い男である。
「そぉぉぉぉぉぉぉい!!」
バチコォォォォォン!!
ミスターフルスイング。霊能のスコップにより、佐悟は漫画のように空の彼方へと消えるハメになってしまった。
『・・・ホームランどすなぁ』
「・・・まぁこれで十二位のプレート、ゲットだぜ!」
『霊能はん、順位の高いプレートが欲しいなら蘇我はんのを取ればよかったんじゃ?』
さっちんからの当たり前の疑問に、霊能が答える。
「・・・ああ、蘇我を埋めてしばらくしてからそれに気がついたんだが・・・掘り返しに行ったら既に逃げてやがった。だから憂さ晴らしもかねて・・・」
『・・・かねてどうするんどすぇ?』
「蘇我を見つける過程で出会った俺より順位の高いやつを埋める」
完璧な八つ当たりである。
『せめてプレートを奪うだけにしといて欲しいどすぇ・・・。あ、これ私の渡しとくから埋めないで欲しいどすぇ』
「サンキュ、んじゃなー!」
こうして霊能は凄まじい勢いで走り去った。
それをあきれながら見届けたさっちんは、とりあえずくっちーとツキミがいると言われた方向へ歩き出すことにしたのであった。
◇
『お、落ち込みすぎだぜロック!元気出せって!』
『・・・』
『ホ、ホラ!こんな数字なんて無意味だって!みんなロックの魅力を知らないだけだって!な!?』
『・・・山田は・・・いいよな・・・』
『ちょ!ロック目がうつろだぜ!?しっかりしろ!ロック!ロォォォック!!』
ここは地獄、マウンテン龍が相棒のロックをめっちゃ慰めている。
落ち込みまくってるロックの胸には[二十六位]の文字が輝いている。無駄に色は金色だ。
『・・・二十六位・・・つまりはビリだと言う事だ』
『それは違うぜロック!ホラ!一票も入ってないやつらがいるだろう!?そいつらに比べれば圧勝だぜ!?』
『・・・圧勝、か。・・・山田、それは自慢か?』
今現在マウンテン龍の胸には[六位]のプレートがついている。
なんとロックとは二十位分も差をつけているのだ。
『いや・・・そういうわけじゃねぇよ!邪推すんなって!』
慰める山田、落ち込んだままのロック。
その二人の上から、何かが降ってきた。
ヒュ~~~ズダァン!!
そして地面をめり込ませながら着地した彼は、スコップをかがげて口を開く。
「いやぁ自慢だろマウンテン龍・・・十六位の主人公に対しての自慢なんだろマウンテンこの野朗・・・」
『おぉぉぉぉ!?ビックリしたぁ!?は?オイオイいったいどういうことだよオイ!?どうやって地獄にきやがった霊能よぉ!?』
「腹筋鍛えれば何とかなるもんだぜ」
『いやなってたまるかぁ!!・・・で、何のようだテメェ・・・場合によっちゃぁ黙ってねぇぞ・・・ロックが』
「ロックがか」
『ロックがだ』
当然のような顔でのたまうマウンテン龍。他力本願の塊のような発言である。
だがしかし残念なことにロックを頼るタイミングが悪かった。
『・・・ビリ、か・・・』
空を見上げつぶやくロック。
そこにはいつもの頼れるロックの面影は無く、ただたださびしい背中が印象的だった。
『あ、あれぇ・・・ロックー・・・おーい、聞こえてるー?・・・ちょ!ロック!?もしもしー!?オォォォイ!!』
当然、マウンテンの声など耳に入っていない。
いくらロックの前でアピールしてもその虚ろな目はただただ焦点も合わさずに空を映していた。
「・・・さてマウンテン龍よ、埋められる準備は出来たのか?」
『話が見えない!?ちょま!落ち着けや!なんでスコップ持ってんだ!?なんで振りかぶってんだぁぁぁぁ!?』
「六位とかもうこれ死刑でいいだろ。母なる大地に埋まって誠心誠意俺に謝罪するべきだぜ」
『・・・ッヘ!俺様を誰だと思ってやがる!この!マウンテン龍様にお前ごときが勝てるとでも思ったか!』
「うん」
『ッハ!俺様も舐められたもんだなぁ!いいぜ・・・お前程度のやつに使うのはしのびねぇが・・・解禁するぜ、クリスタルガイザーをなぁ!!』
「かっ飛ばせー、おーれ。かっ飛ばせー、おーれ」
クリスタルガイザーの解禁宣言をするマウンテンの前で霊能はスコップを バットのようにブンブンとスイングする。
それを見た冷や汗ダラダラのマウンテンが。
『・・・なぁ、何でそんなに荒れてんだ?意味がわからねぇんだが・・・』
「流石六位サマは余裕が違うぜ・・・この状況で俺にそれを聞くかよ・・・」
『あ、もしかして順位で妬んでんのか!?え?何お前十六位!?っふ・・・ふふふ・・・ぶはははは!十六位とか!お前俺より十位も下なのかよ!ださ「そぉぉぉい!!」ブベラッ!!』
カキーン!
その擬音がふさわしいほどの場外ホームラン。
霊能のスコップが馬鹿笑いしていたマウンテンを吹っ飛ばした。
もはや埋める気ないだろこいつ。
その場に残った虚ろな眼のロックを置いて、霊能は更なる獲物を探しに歩き出した。
「 あ、プレート奪うの忘れたぜ」
◇
『ギリギリで十位以内に入れなかったわ・・・』
『愚痴ってないで手を動かしなさい。そもそも口裂けごときが夢を見るのがおこがましいのよ』
『いいですよねぇてんちょーは・・・なんたって四位ですし?』
『ガタガタぬかしてる暇があるなら働きなさい。大量に入荷したんだから全部売るのよ』
『・・・十一位だし仕事は増えるし・・・人気投票なんていいことないわ・・・』
コンビニで飛び交う会話。
くっちーは人気投票の結果に一喜一憂しているが、店長はたいした興味を持っていないようだ。
『はぁ・・・私は昔から出演してるのに・・・なんかいまひとつ個性が足りないのよねぇ・・・』
『個性は 大事だぎゃ!個性をつけまくった結果が三位!!大人気吸血鬼闇倉暗菜とはボクのことだぎゃー!!』
『あ、いらっしゃいませー』
『スルーされたぎゃ!?この個性の塊のようなボクを!?』
『口裂け、知り合いなの?うるさいから外に埋めときなさい』
『初対面なのに対応が冷たいぎゃ!おみゃーさんそれでも人間だぎゃ!?』
まぁ人間ではないのだが。
口裂け女、雪女、吸血鬼がいるコンビニ・・・おそらく世界初である。
『ああ・・・霊能君の知り合いなのね。何か買いに来たの?』
『いや、出番のにおいがしたから来ただけだぎゃ』
『そう、なら早く帰るか埋まるか死ぬか選びなさい。無償労働でも可よ』
『冷たすぎじゃないぎゃ?・・・ところでアレどうにかして欲しいんだぎゃ。あっちが帰り道なのにアレの横を通る勇気がないんだぎゃ』
『ああ・・・アレね。確かに道のど真ん中でやらないで欲しいわね・・・』
そういって三人が視線をコンビニから少し離れた道路へと向ける。
そこにあるものとは・・・
「ゴンザレスゥゥゥ!!てめぇ全然出番無いくせに何してくれてんだぁぁぁぁ!!」
「落ち着くのだ太郎!某の話を聞け!!」
「五位ってなんだよ!!逆さに読んだらイナゴじゃねーかバーカ!!」
「違うぞ!?いいから落ち着くのだ太郎ぉぉぉ!!」
最強過ぎる二人の一般とは格の違う喧嘩である。うかつにコレの隣を通ろうものなら一瞬で消し飛んでもおかしくない。そんなレベルの争いである。
ちなみにゴンザレスには霊能と戦う理由が無いので、攻撃をするのを躊躇してしまっている。
ゆえにゴンザレスが防戦一方である。
『わんぱく馬鹿と黒人坊主め・・・営業妨害するなら殺してやろうかしら』
『『てんちょー落ち着いて(落ち着くぎゃ)ーー!!』』
◇
『ひ~ま~ひまーどすぇ~♪ひま~でー死にそ~どす♪』
あれからさっちんはあてもなくうろうろしていた。
霊能は八つ当たり道中へ走り出したし、蘇我は行方不明、ケロちゃんはランク外という事実に不貞寝している。
ようするにかまってくれる人がいなくて暇なのだ。
『こんなとき都合よく誰か現れないもんどすかなぁ・・・』
『そんなに世の中甘くないでござるよ』
『いや結構甘いと思うどすぇ。・・・ッハ!まさか小次郎はんもストーカー!?』
『残念ながらあと十年待ってポニテにしてから出直すでござるよ』
世界はそんなに紳士ばかりではないのである。
むしろ出会うやつがみんな紳士だったら世界は多分終わっている。
『それにしても暇どすぇ、なんか面白い話ないんどすぇ~?』
『そうでござるなぁ・・・』
『あ、そういえば霊能はんと初めて会ったとき、なんで地獄にいたんどすぇ?暇だったんどすぇ?』
『あながち間違っていないでござるよ。逃げて逃げて逃げ続けてたら、人間と人外が仲良くしてる愉快な集団をみつけたんでござるよ。それで、時間を持て余してもいたので地獄までくっついてきたのでござる』
『・・・何から逃げていたんどすぇ?』
『ああそれは・・・』
と、その時小次郎とさっちんの頭上に大きな裂け目が現れ、ドサッっと中から誰かが落ちてきた。
落ちてきた彼は体勢を立て直しながら裂け目に叫ぶ。
「おいゴンザレス!!逃げんなぁぁぁぁ!!」
そう霊能である。ゴンザレスが手におえなかったので隙を見て遠くにワープさせたのだ。
だがそこは霊能、空間の裂け目が閉じる前に跳び、手を突っ込む。
そう、こじ開ける気である。
「腹筋鍛えればなぁ・・・なんだってできるんだぜ!!」
『いや普通は無理でござるよ・・・』
ここで小次郎が致命的なミスを犯す。
つい、小次郎はいつもの調子でつっこんでしまったのだ。
「小次郎いたのか・・・あ、そっか。じゃあお前でもいいや」
そのせいで霊能に気づかれ、ターゲットを変更させてしまう。
ゴンザレスから・・・小次郎へ。
『あ~・・・小次郎はん、今すぐ霊能はんから逃げることをお勧めするどすぇ』
『え?どうしたのでござるか?拙者なにか良からぬことをしてしまったのでござろうか』
「ああ、したぜ小次郎・・・お前はやってはいけないことをしたんだぜ・・・」
ブォンブォンとスコップを振り回す霊能。
埋めた人数よりも殴った人数の方が多いという優れものだ。
『・・・さっちん殿、説明を頼むでござる。できるだけ速めに。拙者の命が尽きる前に』
『要約すると、俺より順位上のやつぶっ殺す・・・どすぇ』
『ああとてもよく分かりやすい説明でござるな。・・・離脱ッ!!』
小次郎が全力で走り出す。しかし、まわりこまれてしまった!
「知らなかったのか?大魔王からは逃げられない・・・ッ!!」
『おおおお助けでござるよぉぉぉぉ!!』
『いやいつから大魔王になったんどすぇ・・・』
「さてここで問題です。これから小次郎はどうなるでしょう!①埋まる②埋まる③埋まる。好きなものを選んでいいぜ!」
『一択クイズ!?あばばば!あ、そうだ!これで勘弁してほしいでござる!後生でござるよ!!』
そういって小次郎が霊能に手渡したもの、それは[一位]と書かれた輝くプレートだった。
それを受け取った霊能は、プレートに負けないほど目を輝かせる。
「え!何で!?なんで小次郎が一位のコレを・・・!?まぁいいぜ!これで俺が一位だ!!よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
『助かった・・・生きてるってすばらしいでござるよ・・・!!』
「一位!一位!まさに主人公だな!!うっひょい!このプレートは家宝にするぜ!ひゃっはー!!」
『小次郎はん、なんで一位のプレートを持ってたんどすぇ?』
「そりゃあ俺にプレゼントするためだろう!?いいねぇいいねぇ!最っ高だねぇ!!見てくれよさっちん!このプレートの輝き!!」
『あーはいはいおめでとうどすぇ』
「はっはっは!そんなにうらやましがるなよ!いくらねだられてもあげないぜ!?」
『別にいらないどすぇ・・・』
思いもよらないところから一位のプレートを手に入れ、超ハイテンションになる霊能。
別にこのプレートを持ったところで十六位の現実はなくならないというのに、哀れである。
「あ、さっちんじゃないっですか、それに霊能さんと小次郎さんも」
と、そこにニコニコと笑顔のツキミが現れた。
なぜかカバンを背負っている。
『また会ったでござるな、ツキミ殿。さっきののおかげで助かったでござる。本当に感謝するでござるよ!』
「構わないっですよー、幸せのおすそ分けっです!」
『ツキミはん?なんでそんなにニコニコなんどすぇ?』
「ふっふっふ・・・よくぞ聞いてくれたっですよ!そう!今回の人気投票!なんとタミフルたみ子が一位なんっですよ!!凄くないっですか!?最高じゃないっですか!?」
『ああ・・・それで幸せそうなんどすね・・・』
「あ、出会った記念にさっちんにも幸せのおすそ分けっですよ!感謝して受け取るといいっです!」
ツキミがカバンに手をいれ、中から何かを取り出す。
それは輝いていて、真ん中に数字が書いてある。
『・・・一位のプレートどすぇ?』
「そ う!一位記念のたみ子限定フィギアに今ならついてくるんっです!どこもかしこも大量に仕入れてるみたいで片っ端から買いあさったんっですよ!!・・・だからバックの中やたらプレートだらけになっちゃって・・・」
『で、配って減らしてたというわけでござるな。ぶっちゃけ買いすぎでござるな』
「あたしのたみ子への愛が荒ぶってしまったからしかたないんっです。あ、霊能さんにも一枚あげるっですよー!」
ツキミが霊能へとプレートを差し出す。
そういえばさっきまでハイテンションでうるさかったというのに、とたんに静かになっている。
「・・・死にてぇ・・・」
「霊能さん!?どうしたんっですか!?」
「なんで俺こんなことではしゃいでたんだろ・・・ってか今までの俺の頑張りって何だったんだろう・・・なんかもう、どうでもいいや・・・このプレートもいらね・・・」
一番欲しかったプレートがそこらへんで売っていた。
今まで八つ当たりしてきたのも全部無駄である。
『霊能はん、元気出すどすぇ。大量生産品のプレートを持ってはしゃいでた霊能はんは絶対忘れないどすぇ』
「やめろぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇぇ!!はぁ、俺もう帰る。人気投票とかどうでもいいぜ・・・」
こうしてとぼとぼと霊能は家に帰っていった。
その時の後姿は、せつな過ぎて主人公には見えなかったという。