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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
35/45

第三十四話 霊能太郎と転校生

 


 今俺は学校にいる。無論一人で。蘇我とさっちんは家で留守番だ。

 ああ・・・なんか凄く久しぶりに学校に来たような気がするんだが・・・まぁ気のせいだぜ。

 え?俺が誰かって?・・・それくらい分かるだろ?ついこの前に誕生日を迎えて17歳になった霊能太郎だよ!・・・嘘デース、本当はマイケルデース・・・ってのが嘘だ!かかったな!

 ・・・え?本当に17歳なのかって?何でそんな疑問を持つんだ?俺だって高校二年生なんだから普通17じゃねーか・・・?

 ・・・闇鍋やってちくわで死んだときに享年17歳って出てた?マジで?

 ・・・ちがう。

 ・・・その情報は・・・・まやかしだ!罠だ!偽者だ!

 あの時は16歳だった!これは紛れも無い真実!なんならうみねこ的に赤で示してもいいレベルで真実だ!

 じゃあ何で享年17歳って出たか説明しろ・・・?

 ・・・、・・・それは・・・その・・・うん。

 あ!やべもう毎回やってるアニメで言う[オープニング前のショートみたいな部分]の時間が無い!あーあ時間がないなら仕方ない!仕方ないからタイトルコール行くぞー!



 第三十四話 霊能太郎と転校生



『さっきから何をブツブツ言っとるんだぎゃ?』

「いやなんでもない。気にすんな。マジで」

 今俺に話しかけてきたやつの名前は闇倉(やみくら) 暗菜(あんな)

 なんとこのクラスに転校してきた女子だぜ!

 席はなんと俺の隣。まぁ俺席今一番後ろだしな、無難っちゃあ無難か。

 転校生の席と言えば一番前か一番後ろってのは定番だからな。

 こいつはどこかおかしい。

 ・・・なぜか俺によく話しかけてくる。

 ・・・何でだ?なぜクラスで微妙にハブられてる感じな俺に話しかけてくるんだ?闇倉がやたら俺に話しかけてくるせいで他のやつらが闇倉に話しかけるのを躊躇してるぞ?

 それとも・・・まさか・・・!まさか・・・!!俺と友達になりたいのか!?

 それならばウェルカムだ!!と、言いたいところだがそうはいかない。

 俺と自分から友達になりたがる人間なんていない。だって今までいなかった。だから絶対いない。

 ってことは闇倉はおそらく俺を罠にはめる気だ。

 もしくはバツゲームだ。

 だが俺も馬鹿ではない。そんな見え見えの罠に引っかかってたまるか。

『そーんなこと言わずにボクに教えて欲しいんだぎゃー、ボクもっと霊能のことが知りたいんだぎゃ』

「本当に俺のことが知りたいのか?」

『だからさっきからそう言ってるんだぎゃ』

「だが断る!!そんな見え見えの罠にやすやすと引っかかるほど俺は馬鹿でも紳士でもない!!出直してくるんだな!!」

『わ・・・罠ってなんのことだぎゃー!?ボクはそんなつもりは・・・』

「そもそもだ!ただでさえやたら特徴的な人物ばっかりいる俺の周りでさらに濃いキャラを増やす気か!!俺(主人公)よりみんなキャラが立ちすぎなんだよ!」

『そそ・・・それはボク別に悪くないとおも・・』

「ってか語尾にぎゃをつけただけで名古屋弁キャラになると思ったら大間違いなんだよ!!甘すぎるわ!!」

『みぎゃー!?そんなこと別に思ってないんだぎゃ!名古屋弁キャラなんて狙ってないんだぎゃー!』

「嘘だッ!!!!あんな自己紹介しといてそれは言わせねぇぜ!?」

 そう言って霊能と闇倉は自己紹介のときの台詞を思い出す。



『ボクの名前は闇倉暗菜、すがきやとえびふりゃーが好きな貧血気味の吸血鬼だぎゃー。よろしくなんだぎゃ!』



「よもやあの時のすがきやとえびふりゃー発言を忘れたとは言わせんぜ!!」

『うう・・確かにそう言われると無理に名古屋キャラを作ってるように聞こえるんだぎゃ・・・!』

「いや事実作ってるだろ」

『・・・それよりももっと重要なセリフがあったような気がするでござるが・・・』

「え・・?ああ!!本当だ!!・・・貧血ってなんだぁ!鉄分取りやがれ!!」

『そこじゃないでござるよ!!?』

『貧血なのは体質なんだから仕方が無いぎゃ!!貧血って言うやつが貧血なんだぎゃ!!』

『その理屈はおかしいでござるよ!?』

「とにかく!俺を簡単に罠にはめれると思ったら大間違いだ!俺は絶対お前とは仲良くならん!!」

『ひどいぎゃー!!言いがかりだぎゃー!!』

 ・・・霊能は考えた。

 ・・・こいつは本当に俺を罠にはめる気で近づいてきたのだろうか?

 本当に俺と仲良く・・・友達になりたいのではないか?

 友達・・・ああ素敵な響き。最高の言葉だ。

 そう思い闇倉の目を見る。

 そこにはひどいぎゃー・・・とつぶやく涙目が。

 ・・・これは・・・、こいつは・・・。

 俺を罠にはめる気なんて無いように見える・・・?

 ああ、なんだ・・・俺の勘違いか、こいつの目を見れば分かる。こいつは人を騙すようなやつじゃない。

 そうだよ、罠にはめるなんてただの俺の被害妄想・・・

 ん?待てよ?そもそも仮に俺に近づいたとしてどうやって、どういう罠にはめる気だったんだ?

 そんな疑問持って目の前の闇倉を観察してみる。


 転校生+黒髪ロング+名古屋キャラ+同級生+貧血持ち+語尾が特徴的+ボクっ娘


 ・・・このキャラの濃さ・・・ッ!!

 こいつ・・・俺(主人公の癖にあんまりキャラが確立してない。正直腹筋しか無い)を喰いに来ているッ!!?

 そうか、そう考えればつじつまが合うぜ!

 こいつは転校早々にその濃いキャラで俺を喰いにきやがったんだ・・・!!

「っふ、見切ったぁぁぁぁぁ!!!!甘い!甘いぜ闇倉!!その程度で俺を喰えると思うなよぉぉぉおおお!!」

 ガタッ!と立ち上がりテンションの高まりに身を任せ叫ぶ。

 ・・・授業中に。

 静まり返る教室。

 ああ・・またか・・・という視線。

 空気に耐えられず、ここからどう切り返せばいいのか、霊能は決断を下す。

 前を向き、目をそらさずに、それでいて堂々と・・・親指を立てて。

 彼は、言った、

「・・・廊下行ってきます」



 ◇



「ってなことがあったんだ。なぁ赤青さん、どう思う?」

『知らねーよそれでなんで俺の所に来るんだよ』

「友達の意見を聞こうかと思って」

『何度も言うが別に友達じゃねーからな?』

 今現在霊能は授業が終わり、トイレに来ている。

 そう、霊能の学校の友達・・・その名も赤青さんに会いに来たのだ。

 みんなは赤青さんを覚えているだろうか?彼は霊能が人外探しを始めるきっかけになった妖怪である。いや本当に久しぶりの出番だなオイ。

「で、やたら闇倉が付きまとって来るんだが・・・どうすればいいか教えてくれ!赤青さん!!」

『いや俺その闇倉って女を知らねーし知ったこっちゃねーし知りたくもねーんだが・・・』

「いや大変なんだって、このままだと俺キャラ薄いから闇倉に乗っ取られるって」

『いやお前は十分濃い気がするが・・・はぁ、・・・ところでよ』

 そこで赤青さんは言葉を止める。

 いつに無く真剣な空気をかもし出している。

 いったいどうしたというのか。

 疑問に思った霊能が何事かと思うと、彼の背後に女が立っていた。

『・・・まさかそいつが闇倉って女か?まぁ当たってると思うが』

『当たってるんだぎゃー、ボクが闇倉暗菜だぎゃー』

 空気が、変わる。

 先ほどまでのゆるい空気ではなく、もっと殺伐とした・・・緊張感のある空気へと。

「オイオイ・・・ここは男子トイレだぜ?女子は入ってくるんじゃねーぜ」

『ボクは気にしないんだぎゃ、・・・ここのほうが人がいなくてやりやすいんだぎゃ』

 明らかにこれは、コイツは教室でのぽやぽやしていた女の空気ではない。

 そう、殺気立っていると言えばいいのか―――

『オイてめぇ・・・人間じゃ無ぇーな?・・・何者だ』

『ボク?・・・ボクはただの―――吸血鬼だぎゃ』

 止まった空気が動き出す。自称吸血鬼の動きによって。

 闇倉が開いた口には、大きな牙が顔を覗いている!

『っちぃ!おい!馬鹿!!止めろ!!』

『もう遅いぎゃ!!』

 次の瞬間!吸血鬼の牙が霊能に襲い掛かる!!

 ガキンッ!!

 霊能の首筋に噛み付いた闇倉の口元から、消火器を金属バットで叩いたときのような音が響く。

『・・・はぇ?・・・あがががが・・・歯が・・・歯が痛いんだぎゃ・・・』

『な?だから言ったろ。止めろって』

 なんというか・・・いつものごとく、霊能の首は硬かった。

 それについて当の本人はと言うと・・・

「え?何?何がどうなったの?教えて赤青さん」

 噛み付かれたことに気づいてすらいない。もうなんだこいつ。

『ええぇとだな・・・お前が喰われることは無いってことだよ、二つの意味で。良かったな馬鹿』

『ななななんなんだぎゃ!!おみゃーさん一体どんな首の構造してるんだぎゃ!!』

「え?何?首に何かあったのか?」

『血を吸おうとしたら文字どおり歯がたたなかったんだぎゃ!!おみゃーさん本当に人間だぎゃ!?』

「もちろん筋トレが趣味なだけの一般人だぜ。異論は認めん」

 堂々と言い放つ霊能。

 実際彼は特殊な能力など一切持ち合わせていない一般人なのでこの発言は事実である。

 異論はたくさん言いたいが。

『で、吸血鬼さんよぉ・・・てめぇどうすんだ?てめぇじゃこの馬鹿には勝てねぇぞ・・・?』

『っく・・・!正直予想外だぎゃ・・!』

「吸血鬼?赤青さん・・・何言ってんだ?闇倉は普通の女子だろ?な、闇倉!」

 闇倉の見た目は一般的な女子高生となんら変わりが無い。それこそ道を歩いているだけでは誰も・・・何も疑問を持たないだろう。

 ただ、その牙だけを除いて。

『・・・ボクは誇り高き吸血鬼だぎゃ。ボクに勝ち目は無い。・・・無様な真似はしないぎゃ、煮るなり焼くなり好きにすればいいぎゃ!!』

「お前・・・人間じゃなかったのか・・・、おい・・・本当か?それ・・・」

『本当だぎゃ、新しい学校に来て見れば・・・実においしそうな血のにおいを漂わせている人間が居たから隙を見せるまで近づいていたんだぎゃ・・・まさか歯が立たないなんて思わなかったぎゃ・・・』

 霊能は下を向き、震えている。

 それに対し、闇倉は覚悟を決めた目で向き合う。

 そして闇倉は口を開いた。

『ボクの正体を知って今頃びびったぎゃ?・・・まぁいい、争いに負けた吸血鬼に待っているのは処刑だけだぎゃ、火あぶりでもなんでもするがいいぎゃ!!』

 霊能は震えている。だがこれは恐怖の震えではない。

 次第に霊能の腕は形を変え、世間一般で言う・・・いわゆるガッツポーズへと切り替わる。

 そして心の震えを、叫びとして対外に排出する!

「人外キタァァァァァァァァァ!!!!よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!うっひょぉぉぉぉぉぉい!!そぉぉぉれわっしょぉぉぉぉぉぉぉい!!!!」

『どどどどうしたんだぎゃ!!?』

 闇倉はうろたえるばかりである。

 それもそうだ。吸血鬼を前にして喜びのあまり狂喜乱舞しながら腹筋する人間なんて初めて見た。なんだこいつは。

 ガシィ!!思いっきり肩をつかみ、霊能は言う。

「今まで疑ってすまんかった!!是非俺と友達になってくれ!!いや、友達だ!俺とお前はもう友達だ!!」

 怖い。

 それが闇倉の印象であった。

 勢いのまま気がついたら友達認定されていた。

 ・・・殺されると思っていた。だけど実際は友達になれと言われた。

 闇倉は考える。

 ・・・生き残るには友達になるしかない・・・と。

『・・・分かったぎゃ!ボクと霊能は友達だぎゃ!!これからよろしくだぎゃ!!』

 なんだかんだでノリのいい彼女はまんざらでもなさそうにそう言い放った・・・。



 ◇



「と、言う訳で新しく俺の友達になった闇倉だ!よろしく!」

『よろしくだぎゃー!』

 ここは霊能の家。

 霊能がテンション上がりすぎて闇倉をみんなに紹介しようと思ってつれてきたのだ。

 まぁみんなと言っても霊能の家には蘇我とさっちんしか居ないのだが。

『あ、うん、よろしく』

『よろしくどすぇー!』

 軽い顔合わせも終えて、しばしの間談笑する。

 しばらく話していると今日の学校での話しになった。

「いやぁ・・・今日は危ないところだったぜ・・・!危うく闇倉のキャラが濃すぎて喰われそうになったからなー」

『それは大変どすなぁー』

「いやほんとに・・・ま、その危機もなんとか乗り切ったんだけどな!」

 会話を聞いていた蘇我がふと疑問を持った。

 少し気になったので普通に聞くことにする。

『・・・ねぇ霊能、どうやって乗り切ったの?』

「友達になったのさ!!」

 満面の笑みで答える霊能。

 だが蘇我はそこへ疑問をもう一度ぶつける。

『・・・それでも依然として闇倉さんのキャラが濃いことには変わりが無くないかい?』

「へ・・・・?」

 冷静に考える。


 転校生+黒髪ロング+名古屋キャラ+同級生+貧血持ち+語尾が特徴的+ボクっ娘+吸血鬼


 ・・・あれ?これそうとうキャラ立ってね?

 ってか・・・友達になったところでたいして意味なくね?

 それに対して霊能


 腹筋+男言葉+腹筋=キャラあんまり立ってない。


「・・・闇倉」

『んー?どうしたんだぎゃー?』

「お前は敵だぁぁぁ!!ちくしょぉぉぉぉぉ!!」

『ご乱心だぎゃぁぁぁぁ!?』

 こうして霊能にまた新しい友達ができた。

 キャラの濃い友人しか出来てないような気がするが・・・またこれからも彼の周りは騒がしくなりそうだ。

『ふぅ・・・今日ももう終わりどすなぁ・・・』

 さっちんがケロちゃんを抱きながら、明後日の方向を向いて終わりっぽいセリフを言う。

『今日はとっても楽しかったどすぇ。明日はもっと楽しくなるどすな、ケロ太郎?』

『バウ!?』



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