第三十三話 霊能太郎と妖幼☆パラダイス
前回のあらすじ!
超暗黒大魔王の仕掛けた卑劣な罠によってたみ子は世界の国旗を全て覚えなくてはならない状況に陥ってしまった!
そんなたみ子を助けに来たのは親友であるきの子ではなく、なんと過去にたみ子が撃破した怪人、アイアン☆ふっくらハギ男だった!
『か、勘違いするなよ!お・・お前を助ける訳じゃないんだからな!・・・お前を倒すのはこの俺だったりするんだぁわぁあわぁああああああああ!!』
そんなセリフとともにハギ男は落とし穴に落ちていったのである。
あらすじ終わり!!
第三十三話 霊能太郎と妖幼☆パラダイス
「で、この妖幼☆パラダイスは・・・どのゲーム機種でプレイできるんだ?」
『え?普通にプレステでいいよ?』
「・・・以外だな、普通のプレイステーションでいいのか?」
『違うよ、プレイステーシンションだよ。ほらこっちね』
「紳士ョン!?もろにパチモンじゃねぇか!!?」
蘇我は部屋の隅からプレイステーシンションを持ってくる。見た目は普通のプレステだ。
『まぁいいじゃなか、さぁ!早くゲームを開始しようよ!霊能!』
「お・・・おう。よし、起動!」
ゲームのスイッチを押すと、テレビ画面に映像が映り始める。
初めに[紳士同盟]などのロゴが浮かび上がったが気にはしない。
そうしているとかわいらしいスタート画面になった。
[スタートボタンを押すどすぇ~]
『あ、私どすぇ』
画面ではさっちんがスタートを押すようにせがんでいる。
とりあえずスタートを押さないと始まらないのでコントローラーの真ん中にあるスタートボタンを押す。
[難易度を選ぶどすぇ]
「・・・?ギャルゲーに難易度ってなんだよ・・・まぁいいか・・・」
難易度
・ベリーハード
・エクストラ
・死
「まぁよくねぇぇえええええ!!初っ端からベリーハード以上!?つーか死って何!?ギャルゲーで死ぬの!?」
『モテ野朗は死ねばいいんだよ』
「製作者のセリフじゃねぇ!?・・・仕方ない。とりあえず一番難易度の低いベリーハードで・・・」
[西暦199X年、地球は核の炎に包まれた・・・]
「いきなり世紀末!?」
[オッス!俺の名前は霊能太郎だ!嘘デース!本名はマイケルと言いマース]
「・・・誰だよ!おい蘇我・・・出だしからなんかおかしいぞこのゲーム!主人公マイケルになってるぞ!?」
『ベリーハードだからね、仕方ないよ。なんで?マイケルに文句があるの?』
「そりゃあるよ!主人公俺だろ!?なんでマイケルが主人公!?」
『マイケルをなめちゃいけないよ。彼は普段から拳銃を持ち歩いていて輝く金髪がチャームポイントのアメリカ生まれのナイスガイさ』
「知らねぇよんなこと・・・蘇我、お前このゲームは俺が主人公だって言ったよな?」
『ああ大丈夫、エクストラモードなら霊能が主人公だよ?』
「主人公って難易度の問題なのか!?・・・はぁ、じゃあやっぱ俺エクストラ選ぶぜ・・・」
ポチッとな。霊能はゲームを難易度設定からやり直した。
[オッス!俺は霊能太郎!今年二年生になったばかりの高校生男子だぜ]
彼は始業式に向かう途中だった。
昨日の夜更かしのせいで朝から寝坊し、時間が不味いことになっている。
朝ごはんは・・・食べない!そんな時間は無い!
さて急ぐぞと霊能は家を出る。
[行ってきます!]
[行ってらっしゃいどすぇ~]
ちなみにこの子は山村貞子、通称さっちん。
霊能の親戚で、訳あって一緒に住んでいる。
さらにもう一人同居しているとても素晴らしい紳士的でかっこいいジェントルマンがいるのだがひとまずそれは置いておこう。
遅刻遅刻~と急いで走っていると、十字路が見えてきた。
しかし彼は周りをよく見ずに飛び出してしまった。
・・・ッドン!!
・・・そのせいで、運の悪いことに曲がり角で誰かとぶつかってしまったのだ!
[おっと・・・悪いな、立てるか?]
[ウウゥ・・・かゆ・・うま・・・]
おっと説明を忘れていた。
ここはラクーンシティ、そして霊能の前には誰かの右手をくわえたゾンビちゃんがいる。
「待てぇぇぇぇ!!!なんでバイオ!?女の子落とす前に命落とすぞ!?」
選択肢
・ゾンビちゃんを立たせてあげる
・謝って学校へ急ぐ
・俺がガンダムだ
「三つ目なめとんのか!・・・ゾンビに手を出すのは不味いし・・・よし、二つ目だ。学校へ急ごう」
[すまんな、じゃあおれはこれで]
[ウウゥ・・・]
学校に無事に着いた。
はぁ・・・危なかった・・・
危うく遅刻という汚名をかぶるところだった霊能はそんなことを考えながら席に着く。
と、ここでふと気になることが頭に浮かんだ。
・・・今日宿題あったっけ?
この疑問を解消すべく、となりの席の男子に声をかけた。
[なぁ、今日って宿題あったっけ?]
[無いデース]
[そっか、サンクス]
どうやら今日の宿題は無いようだ。安心。
さて宿題が無いなら朝はゆっくり出来るな・・・
そう思った霊能はふと今日の時間割を見た。
今日は月曜日・・・月曜日の時間割は・・・
現代文
世界史
英語
古典
紳士
紳士
紳士
ああ、七時間授業か・・・めんどくさいな。
「いや待て七時間よりつっこむところあるだろ。紳士ってなんだよ午後全部紳士じゃねーか」
あ、先生が来た。
[はいお前ら喜べー。転校生を紹介するぞー。口裂入れー]
ガラッ・・ちょ教室のドアを開けて、紺色の髪をした女性が入ってくる。
[初々しき皆のものよ、我の《真名》は口裂也。皆と同一の世界にて知を極めることを快楽とす]
(初めまして、私の名前は口裂と言います。みんなと同じ教室で学べることを楽しみにしています。これからよろしくお願いします)
「これ誰だぁぁぁぁ!!くっちーのつもりか!?もはや中二病ってレベルじゃねーぞ!?」
[はいじゃあ口裂の席は・・・霊能の隣だ]
口裂さんは俺の隣になった。
彼女はとても個性的な娘だと思う。
・・・俺はそんな彼女と仲良くなりたいと思った。
よし、話しかけよう。
・・・でもどんな話題を出せば・・・?
選択肢
・かなりいい天気だね
・とてもいい天気だね
・すごくいい天気だね
「天気の話題しかねぇぇぇぇぇ!!」
[かなりいい天気だね]
[嗚呼、預言書に示された通りに良き天の意思だ・・・]
(はい、確かにいい天気ですね)
とても独創的な娘だと思った。
そして、同時にとてもかわいい娘だと思った。
「いやねーよ」
その後なんだかんだで俺は学校が終わって次の日になった。
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
[俺は学校の授業をうけていたと思ったらいつの間にか次の日になっていた]
な…何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何が起きたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいゲームのシステムの片鱗を味わったぜ…
霊能がまたもや朝遅刻をしそうになっている。
そう、寝坊だ。
[ああぁ!目覚ましが電池切れぇぇ!!]
今日も霊能は走る。
朝食の食パンをくわえて学校へ向かう。
すると案の定曲がり角で・・・ドンッ!
誰かとぶつかってしまった。
[あ、すまん。大丈夫か?]
[え・・・ああ・・・大丈夫っです!心配ないっですよ!]
ぶつかったのは金髪の人。
なかなか特徴的な口調をしていて、霊能とも仲がいい。
[あ、なんだお前か・・・心配して損したぜ・・・]
[酷っ!そのいいぐさは無いんじゃないっですか!?]
[だってお前だしなぁ・・・]
[まぁ気にしてないっですよ。・・・嘘デース。心底気にしてマース。扱いが悪いデース]
「マイケルかよぉぉぉぉぉ!!!!金髪だけど!!特徴的な口調だけどぉぉぉぉ!!!!」
とまぁその後ギリギリだが学校へついた霊能。
下駄箱で靴を履き替える・・・
[あれ?なんだこれ]
霊能の下駄箱には・・・なんと手紙が入っていた!
高鳴る胸の鼓動を抑えつつ・・・中を開く。
するとそこには・・・
[授業後、屋上で待っています]
とだけ書かれている・・・。
これは・・・どうする?
選択肢
・行くしかないだろう常識的に考えて
・いや、これは罠だ。俺を騙すつもりなんだ。
・そんなことより野球しようぜ!
「・・・まぁ行くよな。普通は」
[行くしかないだろう、常識的に考えて・・・]
俺は今日の授業後、屋上に行くことを決意した。
でもまぁとりあえず今は教室へ行こう。
屋上は授業後の楽しみだ・・・。
教室についた霊能、席に座って腹筋に力を入れていると、朝から口裂さんに話しかけられた。
[汝は天から与えられし使命を消化し得るか?]
(あなたは宿題やってきましたか?)
ああ宿題かぁ・・・ああ!やばいやってない!!
どどどど・・・どうしよう!
選択肢
・口裂さんに見せてもらう
・今から全力でやる
・俺のリロードはレボリューションだ
「・・・このくっちーと関わるのやだな・・・よし、今からやるにしよう・・」
よし!今から全力でやろう!!
あれ・・・?でも今日の宿題ってなんだっけ・・・?
[口裂さん、今日の宿題ってなんだっけ?]
[数の理を示す悪魔の囁き・・・まさか忘却の彼方へと旅立ったわけではあるまい]
(数学よ?まさか・・・忘れたの?)
ああ・・・マジでか・・やっちまったぜ・・・
やってないぞ数学なんて・・・やっばどうしよう・・・
そんなことを考えていると、口裂さんがこちらを見ているのに気がついた。
・・・どうかしたのだろうか?
[・・・我が禁忌の書を転写することを許そう]
(あ、じゃあ私の宿題写す?)
[ありがとう口裂さん!!超サンキュー!!]
[・・・別に構わぬ、在りし日の戯れよ・・・。授業後、待っている]
(別にいいわよ・・・。授業後、待ってるからね)
そう言ったっきり、口裂さんはこっちから目をそらした。
・・・心なしか頬が赤い気がする。
・・・俺は、今日の授業後が楽しみで仕方なくなった。
授業後になった。
うん、もう授業後だ。
・・・いやちゃんと授業は受けたよ?
ただたいしたことが起きなかったから飛ばされただけで・・・。
・・・いや本当にたいしたことが無かったんだって。
しいて言えば校長が絶好調だったことくらいかな・・・。
あれのせいで体育館はもうしばらくは閉鎖されたままだろう。
まぁそんなどうでもいいことは置いといて・・・授業後だ。
俺は、屋上へと出向いた。
[僥倖・・・この天に近き夢を見る場所へ赴いてくれたのだな]
(良かった・・・屋上にちゃんと来てくれたのね)
そこには、やっぱり朝のあの人がいた。
[あんな手紙を貰ったらそりゃ来るぜ・・・で、どうしたんだ?]
マスクをつけた、口調が少し痛々しい人。
[嗚呼・・あの・・・その・・・うん、えと・・・]
(ああ・・あの・・・その・・・うん、えと・・・)
副音声の必要性が感じられない気がするが気にしない。
俺はただ、次の言葉を待った。
そして、意を決したのか、顔を真っ赤に染めて口を開く。
[す・・・す、好きです!一目ぼれです!]
(あ・・・あ、愛故に堕ち逝く天使たちの輪舞曲・・・!開幕直後より神は果実を与えん・・・!!)
・・・こ、告白された。
・・・どどどどどうする!?へ?は?
やばいヤバイやばい!?俺はどうすれば・・・!?
なんて慌てる振りをしてみるのも面白いかもしれないな。
・・・なんで慌ててないのかって?
理由は簡単さ。俺の次の一言で分かってくれると思うぜ。
[・・・ごめん、せめて友達どまりにしてくれ]
[そんな・・・!非道なる屈辱に耐え切ることこそが我が試練だと神が告げる―――?(笑)]
(そんな・・・!酷いわ・・・せっかく勇気を出したのに―――・・・嘘デース、微塵も勇気なんて必要としてまセーン)
「マイケルゥゥゥゥゥ!!分かってたけどね!途中から凄いおかしな感じがしたからな!読めてたけど・・・読めてたけどマイケルてめぇぇぇぇえええ!!!!」
『まぁ会って一日で告白とか普通ありえないよね』
「蘇我ぁ!何このゲーム?さっきからマイケルしか出てきてないんだけど?これのどの辺がギャルゲー?」
『やだなぁ・・・ちゃんとくっちーやさっちんが出てきたじゃないか』
「アレをお前はくっちーだと言い張るのか!?・・・しかもさっちんなんてチョイ役だしツキミにいたっては偽者ってお前」
『まぁ・・・これには理由があるんだよ』
「ほう・・・?やたらマイケルばっかで恋愛に全く発展しないゲームにした理由とやらを聞こうか・・・」
『モテモテ野朗とかみんな爆発しろ』ッグ!
「握りこぶし作りながら言ってんじゃねぇよ!・・・はぁ、なんかもう・・・ゲームやるの疲れた・・・なぁ、コレ今後ちゃんとハッピーエンドで終われるか?」
『・・・マイケルエンドしか用意してないけど?』
「・・・そうか」
プチッ
霊能はゲームの電源を切った。そりゃもう躊躇もためらい無く。
ガラッ
そして窓を開ける。
ガッ
ゲーム機をカセットが入ったまま持ち上げ、振りかぶり・・・
「ざけんなぁぁぁああああ!!!!」
ブン投げた。
『妖幼☆パラダイスゥゥゥゥゥゥ!!』
その日、霊能は二度とギャルゲーなんかやらないと心に決めたそうだ。
こうして今日も日が暮れていく。