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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
33/45

第三十二話 霊能太郎と誕生日 後編

 


 ここは霊能の自宅。

 霊能の誕生日会をするために集まったのだ。集まったメンバーは、霊能・蘇我・さっちん・くっちー・ツキミである。

『『『「ハッピバースデェイトゥーユー♪」』』』

「いやなんか恥ずかしいな・・・」

『『『「ハッピバースデェイトゥーユー♪」』』』

「ああ・・・でも嬉しいわ・・・感動・・・」

『『『「ハッピバースデェイディア・・・ケロちゃん♪」』』』

『バウ!』

『『『「ハッピバースデェイトゥーユー♪」』』』


「あれぇぇぇぇぇぇぇ!! !?」



 第三十二話 霊能太郎と誕生日 後編



「え!?ちょ!待て待て!何でケロちゃん!!?」

『え?ケロちゃんだけど・・・どうかしたのかい霊能?』

「いや違うだろ?今日俺の誕生日だろ!?」

『冗談どすぇ~・・・あ、ケロちゃんもう今日の出番は無いどすぇ』

『クゥ~ン・・・』

「・・・悲しい現実だな。それにしてもなかなか心臓に悪い冗談だったぜ・・・」

「っさ!ろうそくの火を吹き消すっですよ!一気にいっちゃってくださいっです!!」

 霊能がケーキを見る。

 そこには少し大きめのホールケーキが置いてある。

 さらにしっかりとろうそくが立ててあり、火がついている。

 ろうそくは赤々と輝いており、なぜかパチパチと音が鳴っている。

 それを見て、霊能は言う。

「・・・俺の見間違いじゃなきゃさ、ろうそくが・・・真っ赤な炭なんだけど。パチパチ言ってんだけど」

『悲しい現実どすぇ~』

「え?この惨劇を生み出したのは誰?くっちー?確かケーキ買ってくれたのくっちーだよな?」

『・・・霊能君の肺活量だと普通のろうそくじゃ物足りないかと思って・・・』

「その心遣いいらねぇぇぇぇぇ!!!流石にこんな真っ赤な炭を一息で消すのは無理だろ!」

『まぁまぁ霊能、とりあえずやってみなよ』

「いや無理だと思うがな・・・・」

 深く深呼吸、そして大きく息を吸って・・・

 ふぅぅぅぅうううう!!!!

「あ、消えた。・・・そうか昨日腹筋したからか・・・」

『ツキミはんツキミはん、腹筋と肺活量の関連性を教えて欲しいどすぇ』

「うん、ほとんど無いっですよ」

『まぁまぁ霊能君がアレなのはもう周知の事実なんだしスルー推奨よ?さ、無事ケーキも分けれたし・・・はい霊能君、誕生日おめでとう!』

 そう言ってくっちーが霊能にプレゼントを渡す。なにやらラッピングされた箱だ。

「おお!!ありがとう!!」

『ふふふ・・・使ってくれるとうれしいわ』

「じゃ!開けるぜ!!」

 バリバリ・・・とラッピングを外していく霊能。

 すると箱の中から出てきたものは・・・

 毛糸の、マフラー。

「・・・もしかして、これって・・・」

『そうよ、手作り。苦労したのよ?』

「やべぇ・・・嬉しい・・・嬉し過ぎて・・・涙が出そう・・・だけど・・・だけど・・・ッ!!」

『え?何・・・?どうしたの??』

 くっちーが周りを見る。

 蘇我も、さっちんも、ツキミも、小次郎も「あちゃー・・・」と言う顔をしている。

『な、なんなのよ!?教えてよみんな!!』

『くっちーはん・・・非常に言いづらいんどすが・・・』

「今・・・五月っですよ・・・」

 ・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・・・・・・沈黙が場を支配する。

 そしてその沈黙を破ったのは、一人の女性の叫び声だった。

『なんでよぉぉぉぉぉお!!!今までずっと季節は未定だったじゃない!正確な日程とか全く決まってなかったじゃない!!何でこのタイミングで季節が発表されるのよぉぉぉお!!!』

『悲しい現実だね・・・』

『っていうかみんなはどうして当たり前のように知ってるの!?ってことは五月・・もしくは四月なのに闇鍋やったりとか温泉行ったりしてたの!?』

『悲しい現実でござるな・・・』

『そして小次郎君はどこから沸いて出てきたのよぉぉぉおおおおおお!!!!』

 そう、今は五月なのである。

 まだまだ寒くなるには遠い・・・というかこれから暑くなる時期だ。

 そんな時期にマフラーは・・・間違いなく合わない。

「まぁそれは置いといて、ハイコレ!あたしからのプレゼントっです!」

『置いとかれた!?』

「ありがとうツキミ!!開けていいか!!?」

「今日来れなかったゴン兄と一緒に選んだんっですよ~」

 霊能が受け取ったプレゼント・・・

 綺麗にラッピングされているが、箱に入っていないので中身の形が浮き出ている。

「お店を探してたら偶然見つけたんっですよ!ゴン兄と一緒にこれだー!って!」

 具体的には棒とトゲのついた球が鎖のようななにかでつながっている形が浮き出ている。

「お前もかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「へ?は?何がっです!!?」

「お前もっていうか・・・ゴンザレスもかよ!!俺一度もモーニングスター好きだなんて公言した覚えないよ!!」

「まさか・・・カブーニングスターっですか!?」

「その言い方ブームでも来てんのか!っつーかお前らはどこでモーニングスター入手してんだよ!!」

『そういえば店長がこの前大量にモーニングスターをお店に仕入れてたわよ?』

「怖いよ!そのコンビニ怖いよ!!」

『ついでにひのきの棒も仕入れてたわね』

「みんなそっちじゃなくて良かった!そこまで馬鹿に見られてなくて良かった!!」

『流石にひのきの棒は無いよ・・・』

『そうどすぇ~流石にひのきの棒はないどすぇ』

「ひのきの棒は絶対無いっですね・・・」

「そうだよな!流石に無いよな!・・・アレ?小次郎?今後ろに何隠したんだ?」

『ななな何でもないでござるよ!?うん!何でもないでござる』

 霊能がふと目線を小次郎に向けると、小次郎はラッピングされた何かを自分の体で隠すように持ち替えた。

 その表情は汗だくである。

 ちなみに、今の小次郎の内心はこうだ。


(やばいでござるよ!拙者正直ネタで買ってきたでござるのに!!まわりが真面目なものを買ってくると思ったからネタに走っただけなんでござるよ!!)

(不味いでござる!この状況でこれを出せば・・・霊能殿が素で落ち込んでしまうでござる!!)

(それにしてもなんで全員ネタなんでござるか!!いやくっちー殿は真面目でござったが!!)

(しかも冷静に考えたらくっちー殿以外はみんなモーニングスターでござるよ!何この鈍器率!!)

(ちなみに拙者も実はファミレスにいたのでござるよ?パンデモニウムふざけんなでござる)

(いやいやそんなことを考えている場合では・・・)


『取ったどすぇー!!』

『なっ!ちょ!待つでござるよ!!』

 あろうことか、考え事をしていたらさっちんにプレゼントを取られてしまった。

 しかもそのプレゼントはさっちんの手から霊能の手へと渡り・・・

「開けていいか!!?」

 最後の望みをかけてきらびやかに目が輝く霊能の手に渡ってしまったのである。

『もう、どうにでもなれでござるよ』

「よっしゃー!開けるぜー!!」

 ガサガサッと霊能が包みを破る。

 そして中から出てきたのは・・・やっぱり・・・何の変哲も無い、棒。

「へ・・・?これっ・・・て・・・」

『すまんでござる!!正直ふざ「かっけぇ・・・」・・・え?』

 全力で土下座した小次郎の耳によく分からない言葉が聞こえてきた。

「ひのきの棒・・・俺舐めてたぜ・・・これは・・・あこがれる」

 霊能が包みから取り出したそれは、一見するとただの棒のようであるが、よく見ると木刀のようになっており、なにより細かく細部にわたってまで模様がつけられている。

 そう!よく考えてみて欲しい!

 ひのきの棒とは、あの超有名なドラゴンなクエストで実際に武器屋に売っている勇者が扱う武器なのだ!

 かっこ悪いはずが無い!!

「小次郎!・・・本当に・・・ありがとうな・・・」

『・・・え・・あ・・その・・・、構わんでござるよ。誕生日おめでとうでござる』

 小次郎は一瞬迷いを見せたが、その後とてもいい笑顔で場に流されることを選んだ。

「みんなから誕生日プレゼントも貰ったし、ケーキも食べたし・・・今日は最高の誕生日だった!!みんなありがとう!!」

『ところがどっこい!!僕からの誕生日プレゼントはモーニング以下略だけじゃないんだなそれが!』

「な・・・なんだってー!・・・マジでか!?」

『ああ、霊能を驚かせようと思ってね!僕からの・・・いや!紳士からの贈り物は・・・コレだよ!!』

 蘇我が差し出したそれは・・・何のラッピングもされていないゲームソフト。

 表紙にはどこか見覚えのある顔のキャラが写っている。

「・・・ゲームソフト」

『そう!これぞ紳士同盟で作り上げた史上最高究極至高完璧なゲーム!その名も・・・[妖幼☆パラダイス]だよ!!』

『いまいち分かんないどすぇ・・・』

「見た目ギャルゲーっぽいっですね」

『まぁ平たく言うとギャルゲーだね。さぁ霊能!これをプレイするんだ!!』

「えぇ~・・・嫌だぜ」

『何で!?どうして!!?訳が分からないよ!』

「いや俺ギャルゲーとかいまいち分からんし・・・」

『ふ・・・ならばこの説明を聞いても同じことが言えるかな!!』

『・・・なんか蘇我君のテンションが壊れてるわね・・・』

『このゲームのパッケージをまずは見て欲しい!!どこか見覚えが無いかい!?』

 そう言って蘇我がゲームのパッケージを見せてくる。

 そこには白い着物を着た髪の長い少女や、金髪でカチューシャをつけた子、さらには紺色の髪でマスクをつけた女性が写っている。

 そう、それはどこかデフォルメされているが、紛れもなくさっちんやツキミ、くっちーだった。

『『「何で!?(よ)(どすぇ)(っです」)」』』

『ふふふ・・・これがこのゲームの凄いところ・・・そうだよ!このゲームの製作者は紳士同盟・・・すなわち僕らの手作りなのさ!!』

「うお!何だその無駄な頑張りは・・・まぁそれでもあんまりやる気が起きないが・・・」

 それでも霊能はギャルゲーに興味を持たない。

 だが、その反応を見た蘇我が、ぼそりとつぶやいた。

『・・・このゲーム、主人公は霊能だよ』


 ―――ズバァン!!

 その時霊能に電撃走る―――ッ!!


「おい蘇我、今・・・なんて言った?」

『聞こえなかったかい?このゲームの主人公は霊能太郎、君だよ。なんせこれは君の誕生日プレゼントなんだからね!』

 ・・・主人公。

 それは、物語につき一人しかなれない役。

 世の中には主人公が三人いたりする話もあるが、なんてことない。

 それはあくまでもただの外伝や裏話、スピンオフにしか過ぎない。

[本物の主人公]は、あくまでも一人なのである。

 そして霊能太郎、彼も・・・みんな気がつかなかったかもしれないが、ここだけの話、主人公だ。特徴が無いだとかなんやら言われて、しまいには相棒ポジションの変態紳士に主人公を乗っ取られそうになったりしているが、主人公なのである。

 そんな彼が、しっかりと、主人公の役目を果たしているゲーム・・・

 それは・・・彼の心を大きく揺さぶった。

「・・・やる」

『ん~?何だい?聞こえなかったよ。どうしたんだい?霊能』

「・・・やるって言ったんだぜ蘇我!さっそくプレイだ!!」

『そうでなくっちゃ!!ゲームのやり方とかは随時僕が隣で説明するから君は安心してプレイするといい!』

 妖幼☆パラダイス・・・

 ここに、霊能太郎の始めての挑戦(ギャルゲー)が始まったッ・・・!!



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