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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
32/45

第三十一話 霊能太郎と誕生日前編

 


『誕生日なんだし、外食しようよ』

 ここは霊能家、ここに住む三人がイスやら座布団やらに座りながら話し合っている。

 今日は霊能の誕生日なのだ。

 だが誕生日会自体は夜だ。なので今の議題は、どこへ昼飯を外食に行こうかである。

『つまり、変にストーリーを入れるから途中で投げてしまうんどすぇ』

『あれ!?さっちん!?突然何を言ってるんだい!?』

「つまり俺たちにシリアスなんか似合わないって事だな」

『霊能まで電波を受信しだした!?せっかく今から霊能の誕生日だから外食へ行こうって話しになってたのに!!』



 第三十一話 霊能太郎と誕生日前編



『止めてよ!訳の分からない話は止めてよ!!外食の話をしようよ!!』

「いやいや蘇我、ひとまず落ち着いて考えろよ。変に伏線とか張ったせいで回収がめんどくさくなることってあるだろ?」

『無いよ!いや伏線ってなんの話だよ!意味が分からないよ!!』

『そうどすぇ、だから全部放り投げてもう無かったことにするのも一つの手どすぇ』

『ああああ!!正気に戻れぇぇぇぇぇえええ!!!』


 パァンパァン!!


 心地よいハリセンの音が室内に響く。

 どうでもいいがなぜか霊能の家にはハリセンが常備されている。

「それでだ、本来のシリアス無しオールギャグの話が一番だと思う訳だ」

『おいぃぃぃぃぃ!!!何でだよ!何でまだその話題を続けるんだよ!戻る流れだったじゃん!ハッ・・・俺は何を・・・とか言いながら正気に戻る流れだったじゃん!!』

「ハッ・・・俺は何を・・・」

『遅いわ!!』

 スパァン!!

「ひでぇ、・・・ま、でだ。俺はハンバーグが食べたい」

『そう?じゃあハンバーグ専門店にでも行こうか』

『私はオムライスが食べたいどすぇ』

『ハンバーグ専門店は却下だね、オムライス専門店にしよう』

「あれ!?今日俺の誕生日じゃなかったっけ!?」

『え?でもさっちんがオムライス食べたいって言ったんだよ?』

「さっちんに甘すぎるだろ!?・・・そういや蘇我は何が食べたいんだ?」

『僕?僕はなんでもいいよ。じゃまぁファミレスでいいよね?ハンバーグもオムライスもあるし』

「そうだな、よしファミレス行くぞ!」

『『おおぉー』』




 と、言うわけでファミレスに到着した霊能一行。

「俺このハンバーグセットで」

『私はこのオムライスセットどすぇ~』

『じゃあ僕は・・・うん、このシェフの気まぐれセットでお願いします』

「ハイかしこまりましたー」

 特に何事もなく普通に注文をすると、霊能が何かを疑問に思ったような顔で蘇我に聞く。

「蘇我・・・気まぐれセットなんかでいいのか?」

『え?なんで?なんか駄目だった?』

「いや・・・だって気まぐれだぜ?客相手にしっかり考えずに気まぐれで料理出すんだぜ?よく考えたらおかしくね?」

『いや・・・そんなひねくれた考えはしたこと無かったなぁ・・・』

『シェフが気まぐれに残飯を盛り付ける可能性も否定できないどすぇ~』

『そんな馬鹿な・・・もっとシェフを信用してあげようよ・・・あ、そうだ』

 何かを思い出したように蘇我が箱を取り出す。

 きれいにラッピングされたプレゼント用の箱だ。

『注文してから料理が来るまでの間は暇だからね・・・誕生日プレゼントを持ってきたんだよ』

「おお!!マジでか!!超うれしい!!」

『当然私も持ってきているどすぇ~』

 さっちんも蘇我と同じくらいの大きさの箱をどこからか取り出す。

「空けていいか!?空けていいか!!?」

『前から僕は思ってたんだ、いつも霊能が戦ってるときって素手だよね、だから・・・』

「いいや限界だ!空けるッ!!」

 蘇我のプレゼントを蘇我が話し終える前にあける霊能。

 すると中から出てきたのは・・・

 棘のついた鉄球に鎖と棒がついたもの。

『・・・武器が必要だと思ったんだ』

「モーニングスター!!?なんか滅茶苦茶物騒なんだけど!!?」

『霊能に似合うと思ってね!』

「嫌がらせだろこれ!!?え?何?お前から見た俺のイメージモーニングスター!?」

『・・・蘇我はん・・・モーニングスターって・・・』

「な!さっちん!おかしいよな!?誕生日にモーニングスター渡すって斬新過ぎるよな!?」

 そう言うと無言で自分が持ってきたプレゼントを空けるさっちん。

 その中から出てきたものは・・・

『・・・かぶってしまったどすぇ・・・』

「まさかのモーニングスターかぶり!?奇跡的だなオイ!!?」

『『カブーニングスター』』

「微塵もうまいこと言ってないぞ!?」

「おまたせしました、こちらハンバーグセットでございます」

 とまぁはしゃいでいると店員が注文した料理を持ってきた。

 モーニングスターを見ても動じないあたりにプロ魂を感じる。

「こちらがオムライスセットでございます」

 さっちんの前にオムライスが置かれる。

 しっかりとケチャップのかかったオムライスだ。

「そしてこちらがシェフのきまぐれセットでございます」

 蘇我の前に皿が置かれる。

 皿の上にはグロテスクな人面虫が体液まみれで置いてある。

『・・・・・・・何これ?』

「はい、本日のシェフのきまぐれ、パンデモニウムでございます」

『食えるかぁぁぁぁぁあああ!!!!!?なんなの?気まぐれってレベルじゃないよ!仮に気まぐれだとしても気まぐれと言う名の狂気だよ!!』

「蘇我、たしかお前俺が何食べたいか聞いたとき、なんでもいいって答えてたよな?」

『食べ物ならね!?これはもはや食べ物の領域を軽々と踏み越えてるよ!?』

『蘇我はん、好き嫌いは良くないどすぇ』

『好きとか嫌いとかじゃないよ!生理的に受け付けないよ!!すいません店員さん、これ下げてください。あと僕もハンバーグセットで』

「はいかしこまりました。スイマセーン、このパンデモニウム、ハンバーグにまわしてくださーい」

『ビーフにして!!それの肉は使わないで!!』

「かしこまりました」

 ふぅ、と一息つく蘇我。

 その正面で霊能がハンバーグをつつく。

「なんか悪いな、先に食べちゃって」

『いや構わないよ・・・シェフを信用した僕が馬鹿だった・・・』

『オムライスおいしいどすぇ~』

 にぱー、と笑うさっちん。

 そのあまりにもかわいいしぐさを見た蘇我は小声で、生きてて良かった・・・とつぶやいた。

 ハンバーグを霊能が食べ進めていると、対面に居る蘇我・・・の後ろのテーブルにから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『いや!店長はきれいですよ?いや確かに口は悪いけど・・・いやいやいやいやそう言う意味じゃなくて!!』

『・・・はぁ、世界滅亡しないかしら。まずは細菌テロでも起きないかしら・・・』

 ・・・どうやらくっちーと店長のようだ。

 かなり落ち込みつつ機嫌の悪い店長を必死にくっちーが相手している。

「・・・蘇我、さっちん・・・どうする?」

『スルー推奨どすぇ』

『紳士危うきに近寄らず、だよ』

「・・・だな。うん、見なかったことに・・・」

 そう結論を出して、もう一度くっちーの方を見る。

「!」

 霊能とくっちーの目が合った。

 ザッ!!

 れいのうは めを そらした!

『あら霊能君たちじゃない、一緒に食べましょうよ』(助けて、店長の機嫌を治して)

 しかし まわりこまれてしまった!

 くっちーが霊能たちを呼ぶ。その言葉と同時にしっかりと副音声が聞こえてくる。

「いや・・・俺たちは・・なぁ!?」

『そうどすぇ!二人水入らずの空間を邪魔しちゃ悪いどすぇ!』

『あ、店長、ちょっとみんなを呼んできますね』(逃がさないわよ)

(((強制的につれてく気だぁぁぁぁ!!!)))

 席を立ち、スタスタと歩いてくるくっちー。これはもう逃げようが無い。

『と、言う訳でなんとか店長の機嫌を治してほしいのよ』

「・・・拒否権は?」

『・・・今日の夜の誕生日会でのケーキを持ってくのは私よ?いいの?』

「よしお前ら!人外バスターズ久々のミッションだ!気合入れていくぞ!!」

『さっちん、見た?今の変わり身の早さ』

『見たどすぇ、ものすごい簡単に釣られたどすぇ』

「そこぉ!シャラップ!!つべこべ言わない!」

『・・・まぁ、いいけどね。で、くっちー・・・なんであんなに店長の機嫌悪いの?』

『それは・・・話せば長くなるわ』

 くっちーが窓から遠くを眺める。

「三行で」

『新バイトいい感じのイケメン好青年

 店長の口撃

 泣きながら土下座してバイト止めた』

『短っ!?』

『・・・メンタルの弱いイケメンどすぇ・・・』

『分かった?だから今落ち込みつつ機嫌悪いのよ・・・』

「・・・分かった。それで俺たちに相手をしてくれ、と」

『そうなのよ、・・・でも大丈夫。さっき店長が大好物のカレーを頼んだからそれが来たら機嫌は治るわ。それまで場を持たせて欲しいのよ』

『意外と好物は少年っぽいんだね・・・』

『カレーさえ来れば私たちの勝ちよ、・・・やってくれる?』

「・・・分かった。蘇我、さっちん・・・準備はいいか?」

『『大丈夫だ、問題ない(どすぇ)』』

 そんな訳で霊能たちは店長のテーブルにつく。当然自分たちの料理を持って。

 と、ここで醜いアイコンタクト合戦が勃発した。

(・・・初めは誰が行くんどすぇ?)

(・・・さっちん、頑張れ!)

(さっちんなら出来るさ!)

(蘇我はんまで!!?)

(頑張ってね、さだこちゃん)

(味方はゼロどすぇ!?・・・・覚悟を決めるどす・・・でもどんな話題ならいいのか・・・)

(早くしないと機嫌がどんどん悪くなるわよー)

(ええぇ・・・よよよし!これどすぇ!)



『店長はん、今日はいい天気どすなぁ』

『曇りよ』

『・・・・・・そう、どすぇ・・・』



(((一瞬でぶった切られたぁぁぁぁぁぁ!!!)))

(オイどうすんだこれ!一瞬で会話が終わったぞ!?)

(不味いわね・・・さだこちゃんの心がすでに折れてるわ・・・)

(よ、よし。僕がフォローに回るよ!!)

(OK行って来い!カレー到着まで時間を稼ぐんだ!!)

(ふ・・・時間を稼ぐのはいいけど・・・別に機嫌を治してしまっても構わないんだろう?)

(うわなんか蘇我が無駄にかっけぇ)

(・・・はたしてここから蘇我君がどう出るのかに期待ね)



『いやぁ曇りっていい天気だと僕は思うけどなぁだってく』

『私は思わないわ』

『・・・そっか・・・』



((話してる途中でぶった切られたぁぁぁぁ!!!))

(いや、まだよ!まだ蘇我君の目は死んでないわ!!)

(蘇我は既に幽霊だけどな!)

(そういう意味じゃないわよ!)



『・・・霊能の武器って何が一番似合うと思います?』

『・・・そうねぇ・・・モーニン・・・いや、ひのきの棒かしら』

「おいぃぃぃ!!今モーニングスターって言いかけたよね!?しかもそこからランクダウンさせたよね!!?」

『モーニングスターなんて高度な武器はわんぱく馬鹿には扱えないわ』

「鈍器だよ!!?全然高度な武器じゃないよ!!?」

『霊能、そろそろ認めようよ。扱えないって』

「なんで俺、前々からずっと言ってただろ?みたいな空気出してんだお前!?」

 そこそこ場が盛り上がってきた。この調子でいけば店長の機嫌も治りそうだ。

『・・・それにしてもカレー遅いわね・・・使えないわ』

「いやもうそろそろ来るんじゃないかなー、な、蘇我!」

『う、うん!そうだね!』

 と、そこへタイミングよく店員が料理を持ってきた。

『ホラ来ましたよ店長!・・・あ、でもあれは・・・』

「パッと見カレーじゃなさそうだな」

『あ、ってことは私の料理ね。・・・店長一口味見しますー?』

 コトリ、とテーブルの上に料理が置かれる。

「お待たせしましたこちらシェフの気まぐれセットでございます」

 ・・・皿の上にはグロテスクな人面虫が体液まみれで置いてある。

『「パンデモニウムゥゥゥゥゥ!!!!」』

『・・・口裂け、あなたこれを私に一口食えと?』

『いいい言わない言わない言いませんよ!!ってそれより店員さん!?これ何!!?』

「本日のシェフの気まぐれ、パンデモニウムのメスでございます」

『凄く真面目に答えられた!!ってこれにメスとかあるの!?心底どうでもいいわよ!!これ下げてください!!』

「はいかしこまりました」

 一度置かれた皿が下げられる

 ふと見ると店長の機嫌が空腹と気持ち悪いものを見た事でさらに機嫌が悪くなっている。

 ここで再びアイコンタクトタイム。

(どうすんの!?店長めっちゃ機嫌悪くなってるぜ!!?)

(どうしようもないどすぇ、私たちに出来るのはカレーを待つことだけどすぇ)

(あ、さっちん復活したんだ。・・・でもこのまま無言でカレーを待つのはきついよ?どうする?)

(そうね、でも私の料理が来たんだからすぐにカレーも来ると思っていいと思うわ)

(じゃあ最後!まだ霊能はフォローに回ってないよね!頼んだ!)

(え?嘘!?俺!?・・・ぶっちゃけ話題とか無いぜ!!?)

(大丈夫どすぇ、カレーが来るまでの短い時間どすぇ!!)

(そうだよ!もうすぐカレーが来ますね。とかそんな感じでいいよ!!)

(・・・そうか?よし、じゃあ・・・もうカレーのにおいがしてきたからもうすぐにでもカレーが来ますよって感じでいくぜ!!?)

(((グットラック!!)))

 霊能が店長と目を合わせる。

 ・・・場に緊張が走る・・・!!

「・・・店長」

『・・・何?』

 そして覚悟を決めて、店長の目を見て、店長の機嫌を治すために、店長に向かって、口を開いた。

「店長・・・もうカレー臭がしてきたぜ」

(((お前何言ってんだぁぁぁあああああああああ!!!!)))

 その日、霊能は閻魔と久しぶりに会ったと言う。



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