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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
31/45

番外編 新訳第一話 原作開始と仲間たち

本編が30話も続いたことを記念し、第一話、霊能と人外(赤青さん)のファーストコンタクトを一新!!第一話では書かれなかったキャラクターも登場します(笑)

 


「あ~・・・友達欲しいなぁ・・・」


 ここは県立左ヶ西高校。授業終了後の教室で、かなり寂しい独り言をつぶやいた男がいた。

 何を隠そう、彼には友達がいない。

 いない理由は分からない。

 彼が人見知りだからではない。なぜなら彼には知り合いはたくさんいる。たとえば今いるこの教室の同じクラスのメンバーとは当然知り合いだ。

 だが彼には友達ができない。

「なんだよ・・・俺は普通だよ・・」

 だが人は彼をそれとなく避ける、目をそらす。

 唯一の友人とも言える存在、出家した幼馴染のゴンザレス(♂)いわく、

「おぬしはどこかずれておるからのぉ」

 だそうだ。別にずれてるつもりはないんだが・・・と思う今日この頃。

 だが一応気にはなったのでゴンザレスの妹に

「俺って別に普通だよな?」

 と聞いたことがある。

 結果は

「・・・あ、ああ!そ、そうっです!魔法少女タミフルたみ子が始まってしまうっですよ!!では!!」

 ・・・なんか目をそらした挙句に逃げられた。

 そこそこ心にダメージを負った。

「はぁ・・・もうこの際誰でもいいよ・・俺と友達になってくれよ・・」

 彼の名前は霊能太郎、筋トレ好きの高校生男子だ。

 筋トレでは腹筋を重点的に鍛えつつ、それとなく背筋やふくらはぎもそこそこ鍛えている。

 鍛える理由?・・・そこに筋肉があるからさ。

 そんな霊能君だが友人がいないのは精神的につらいようだ。

 誰も居ない教室で、彼はため息とともにそっとつぶやいた。


「トイレ行こう・・」


 この時、このタイミングでトイレに行ったことが―――

 ―――後の人生に大きく関わってくることになる・・・



 番外編 新訳第一話 原作開始と仲間たち



『はぁ・・・どうしようかなぁ・・・』

 所変わってここは左ヶ西高校屋上、見渡す限り空が青く広がっている。

 そんなここで困ったような独り言を言う幽霊がいた。

 その幽霊は屋上の扉の前に立ち、何かを考えながらため息をつく。

『本当にどうしよう・・・僕じゃ無理だってどうしようもないって』

 ぶつぶつ言いながら幽霊は前を向く。

 その視線の先には・・・

『グルルルルル・・・』

 大きな犬がいた。

 2mサイズの三つ首犬、まぁ・・・その・・・あれだ。

 ぶっちゃけケロベロスだ。

『うわー無理無理こんなの相手にしたら僕死んじゃうって、もう幽霊だけど』

『グルルルルル・・・』

『うわー真面目にこれは勝てないって、勝率0%だって』

『バウッ!!』ズシン!!

『でもまぁ・・・ここで僕が止めなかったら、犠牲者が出るんだろうね・・・はぁ・・・』

『ガァァァァ!!!』ズシン!!

『・・・だからかな、不思議と逃げようとは思わないや』

 幽霊がメガネをクイッと上げる。ケロベロスが今にも襲い掛かろうとしている。

 すると幽霊はポケットに手を突っ込み、袋を取り出した。

『・・・学校の屋上で空を見ながら食べようと思ったんだけど、仕方ないか』

『グルルル・・ガァァァ!!!!』

 ついに犬が幽霊に襲い掛かる!

 だがその、飛び掛る寸前に幽霊は動いた!!

『食らえ!ビーフジャーキー時間稼ぎ!!!!』

 犬は飛び掛るのを止め、ビーフジャーキーをむさぼる。

 それを見た幽霊はほっとしながらそれを眺める。

『・・・まさか本当にこれに食いつくとは・・・もしかしたらこれでしつけられないかな、お手とか』

 そう思い幽霊がケロベロスを見る。2mの三つ首犬、鋭いキバ、筋肉のついた前足。

 そしてすぐさまこう思った。

 ・・・ああ、これにお手なんか無理だね。

 もしお手に挑戦するやつがいたら・・・それは相当愉快な人か凄まじいバカだけだ。

 でもそんなやつに限って一緒にいるとなぜか退屈しないんだよねぇ。

 絶対いないとは分かってるけど、もしいるのなら・・・友人になってみたいものだね。



 ◇



「あ、紙が無い・・・困ったな。」

 トイレで用を済ませたはいいが、なかなかのピンチに遭遇してしまった。

 紙が無いのである、非常事態だ。切実に。

 ヤバイ、本気でヤバイ。

 具体的には満員電車で偶然となりの女性の胸に触ってしまい、悲鳴をあげられた時並にやばい。人生終了である。

 いや実際はトイレで紙が無かったくらいでは人生は終了しないのだが・・・

 その時の彼はそのくらい焦っていたのだ。

 その焦りポイントはなんと52万あせりを記録していたというのだから驚きだ。

 余談だが黒塗りのベンツにボールを当ててしまった中学生のあせりポイントが平均30万あせりだと言われている。

 その時彼の脳内に名言が響いた。

(紙が無いなら、助けてもらえばいいじゃない)

 うるさい。こちらとら助けを呼ぶ友達自体がいないんだよ馬鹿野郎。流石に知り合い程度のやつに紙を持ってきてくれとは頼めないし、他人ではもっと無理だ。そもそもこんな時間にここで叫んでもおそらく誰も来ないだろう。

 ピンチだ、全力でピンチだ。

 年末の飲み会で社長が「無礼講だ!」と言ったからってテンション上がりすぎて「ヘーイ」とか言いながら社長の頭を叩いたらズラが取れたときくらいにピンチだ。

 これはマズイ。助けて神様。

 いや本当に助けて、もうだれでもいいから。どんなやつでもいいから!!



 ◇



『・・・ッ!!今誰かに助けを求められた気がするどすぇ・・・』

 少女は空を見上げる。そして次に周りを見渡す。

 ・・・何にも無い。あるのは森と井戸だけだ。

『まぁ・・・気のせいだって分かってるんどすけど・・・』

 暗い顔でため息をつく。未来に希望が持てない目をしている。

 少女は壁を背にして座りながら、うつむいている。

『・・・腰が痛いどすぇ・・・井戸の中は硬くて冷たいどすぇ・・・』

 どうやらこの少女は井戸の中で生活しているようだ。

 まわりにだれもいないところからすると、おそらく彼女一人で住んでいるのだろう。

 ちなみに枯れ井戸なので水は無い。

『はぁ・・・前のおじいさんも結局怖がってくれなかったどすぇ・・・』

 井戸の中に貯めてあったきのみを食べつつ独り言をつぶやく。どことなく寂しそうでもある。

 変わらない空を眺め、変わらない景色を見て、少女は誰に聞かせるでもなくつぶやく。

『・・・次はいつこの世界は再生されるんどすぇ・・?私はいつまで繰り返せばいいんどすぇ・・?』

 少女の言葉に、答えは返ってこない。



 ◇



 少年の助けを呼ぶ声に、答えは返ってこない。

 これは真面目にどうしよう、誰か紙をください。

 もうどうしようもない。諦めて拭かずに帰ってやろうかとか考え出した頃・・・奇跡は起きた・・・

 トイレの個室の中に、どこからともなく声が響いてきたのである。

『赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?』

 そう、天の助けだ。

 いや・・・実際は赤紙青紙という妖怪なのだが・・・

 今の彼には関係ない。

 彼からすればこの状況で紙をくれるなんて天の助け以外の何者でもないのだ。

「トイレットペーパーを頼む!!」

 妖怪がでた開口一番にこれだ。

『赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?』

「だからトイレットペーパーだって!!頼む!!」

『・・・赤い紙か青い紙か』

「いやだから・・・ああもう!この際ティッシュでもいいから!!」

『赤い紙か!!青い紙か!!』

「分かった!赤でいい!何でもいいから紙をくれ!!」

 そう、彼に色などこの際関係ない。紙でさえあれば拭くことができるのだから。

 だがこの赤紙青紙という妖怪は当然のごとくトイレットペーパーが無くなった人に紙を渡す親切な妖怪何ぞではない。この妖怪は被害者に赤い紙か青い紙かを選ばせて、赤と答えれば血祭り。青と答えれば血を抜かれ真っ青になって死ぬという。

 では他の色を選ぶとどうなるのか。

 一説では冥界に引きずりかまれるとも言われている。

『・・・赤だな・・・』

 そう妖怪は言うとその恐るべき力で彼の血流を操作し、血まみれにする――


 グチャッ



 ◇



『私、きれい?』

「はぁ?何言ってんだてめぇ?でっけぇマスクなんかつけやがって」

 薄暗くなった路地で、一人の女が男に声をかける。

 突然後ろから話しかけられた男は、少し驚きながらも悪態をつく。

『私、きれい?』

「うっせぇなぁ・・・黙れよキメェなぁ・・・ったく」

 同じ言葉を繰り返す女、その顔には大きなマスクがついている。

 男は女の言葉に軽く答える。

『・・・私、きれい?』

「うっとおしいなクソ尼がぁ・・・ああ分かったきれいだよきれい。これで満足か」

 何度も同じ事を聞かれた男が、イラつきを隠そうともせずに女に言い放つ。

 それを聞いた女が、止まった。

 そして、マスクを外し・・・言う。

『これでもかぁぁぁあああああああ!!!!』

「うわあああぁあああ!!!」

 女のマスクの下にある口は、一般の平均よりも大きく、裂けていた。

 そして、どこからか大鎌を取り出し、腰を抜かした男へと近づく。

「うわっ!キモッ!この化け物が!!死ねよ!!・・・オ、オイ・・来るな!!来るなよぉ!!死ね!死ね!近づくなぁ!!」

 無常にも、女は一歩一歩近づいていく。

「死ね死ね死ね!!来んな!!あああぁあ!!やめろ!!頼む!たすけ」


 ザシュッ


 路地の壁に、真っ赤な花が咲いた。



 ◇



 グチャッ

 トイレの個室で、真っ赤な鼻になった。

「うわ鼻血がめっちゃ出た!」

『ッ!!何故だ・・・』

「ちょっとぉー鼻血でたんだけど、マジで頼むからなんか紙くれよ。頼むってマジで」

 赤紙青紙の血流操作によって血まみれになるはずだった霊能は、なぜか鼻血だけで済んだ。

『・・・何故だ、何故死なないんだお前は』

「・・・いや知らんぜ。あ、分かった。多分アレだわ。うん間違いない」

『・・・答えてもらおうか』

「ズバリ、腹筋鍛えてるからな!!」

 判明!霊能が鼻血で済んだ理由・・・それは腹筋のおかげだった!!

『・・・なめとんのか』

「いや他に思いつかないし、いや今はそんなことより紙だって。下も上も両方紙が必要だって!」

『・・・解せんな』

「ヤバイって、このままじゃお尻も鼻も汚れたまんまになっちゃうよ?このままトイレ出たら俺本当に生きていけなくなっちゃうよ?社会的に」

 トイレから鼻血だらっだらの尻を拭いてない男が出てくるのを見たら誰だってトラウマもんである。

『青い紙欲しいか?』

「だから紙なら何でもいいって。頼むから急げって。トイレでしゃがみながら鼻血がたれないように上向いてる俺なかなかにシュールだよ?客観的に見たらキモいことこの上ないよ?」

『いいだろう・・・青い紙やろう』

 そして妖怪は彼の血を抜き殺す――



 ◇



<鼻血がめっちゃ出た!

<ッ!!何故だ・・・


『・・・なんだか隣の個室が騒がしいでござるな・・・』

 ここはとあるトイレの個室、ここにもトイレを使用している男が居た。

 やたら先ほどから隣の個室がうるさいが、今はそんなことを気にしている場合ではないのだ。

 そう、なぜなら・・・

『神も仏も無いでござる・・・』

 ・・・ここにも、紙に踊らされている哀れな男が居た。

『どうする・・・どうすればいいでござるか・・・いっそ全裸になって外で助けを求めるでござるか・・・?こう・・・ビックフットですけど何かようでござるか?みたいな・・・ッ』

 それをやれば間違いなく通報確定である。

『・・・いや諦めてはいかんでござるな・・まだ、まだきっと何かあるはず・・・!!』

 男は自分のポケットを念入りに探した。

 そして、そこで一枚の紙と思われる手触りのものを見つけることに成功した!

『キタ!拙者の勝ちでござる!!さぁこれで・・・』


[紙やすり]


『拭けるかぁぁぁぁぁ!!!両面だししかもこれ、普通のより三倍は荒いでござるよ!!』

 男の苦悩は続く・・・。



 ◇



「うわくらくらしてきた・・この状態で貧血ってひどくね?何この三重苦」

『・・・・なんでだよっ!!!』

 どうやら妖怪も突っ込まざるを得なかったらしい。

「知るか!早く紙をくれ!!プリーズ!!紙プリィィズ!!」

『何でお前死なないんだよ!なんで鼻血と貧血で済むんだよ!!』

「日頃から腹筋鍛えてた甲斐があったぜ」

『意味が分かんねぇよ!!もうお前帰れよちくしょう!!』

「だから紙渡せって言ってんだろうがぁぁぁぁ!!拭くもん拭かないと帰れねぇ事くらい分かれやぁぁぁ!!!」

『・・・本当だな?本当に紙を渡したら帰るんだな?』

「当然だろうが、いいから紙もってきて!赤でも青でも黄色でもいいから!!」

『黄色でいいんだな?ふ・・・いいだろう』

 その瞬間・・・その場の空気が変わった・・・

 便器の向こう側が黄泉の世界へとつながり・・・彼を吸い込み始めたのだ!!

 ゴォォォオオオ!!!!

 便器があらゆるものを吸い込む。個室にあったゴミから剥がれかけていた壁紙、紙やすりなどあらゆるものを吸い込む!!

「ああ・・・換気扇か」

 だが霊能には無駄だったようだ。

『もういいよ!!俺が悪かったよ!!普通の紙やるから帰りやがれ!!プライドズッタズタだよこんちきしょう!!』

 そうしてどこからとも無くトイレットペーパーが補充され、全ては終わった・・・

「それにしても・・・助かったな・・・俺に紙をくれるなんて・・・良いやつだったな・・つーか妖怪だかお化けだかの類って本当にいたんだ・・・友達・・・そうだ人間で作れないなら人外で作ればいいじゃねぇか!!」

 彼、霊能太郎は個室から出た後、とても健やかな笑顔で言った。

「よし、明日からGTO作戦開始だ!!」        ※G(人外と)T(友達になろ)O(ぉ)作戦



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