第二十二話 霊能太郎と商店街の福引
ここは霊能の自宅。
霊能と蘇我はソファに座ってぼーっとしている。
「優勝・・・出来なかったな・・・」
『優勝者どころか全滅だもんね・・・』
「爆発の原因・・・吉松さん全く落ち込んでなかったな・・・」
『今までに何度か同じようなことがあったらしいね・・・』
「『もうダイナマイト捨てろよ・・・』」
第二十二話 霊能太郎と商店街の福引
『二人とも元気出すどすぇ~』
『優勝したかったなぁ・・・』
「そうだな・・・優勝商品は・・・たしか温泉旅行だったっけ!」
『うん、行けないのが残念でならないよ・・・』
『落ち込んでるどすなぁ・・・参加賞は貰ったんどすぇ?』
「ああ、参加賞として商店街の福引券貰ったけど・・・」
『なんかもう行くのすらめんどくさいよね・・・』
『福引のチラシが入ってるどすぇ、・・・特賞は温泉旅行どすぇ』
『霊能!いつまで落ち込んでいるんだ!!早く行こう!!』
「・・・オイついさっき行くのすらめんどくさいって言ったやつ誰だ」
やたらやる気に満ちている蘇我につれられ、商店街へと進む霊能たち。
商店街で行われる福引は、トライアスロン参加者も多くかなり賑わっているようだ。
『ぬぁぁぁ!!ちっくしょう!!連続ティッシュ!!』
『仕方ないさ、山田』
『うう・・すまねぇ、ロックの分の券まで使ったって言うのに・・・』
途中で棄権した彼らも参加賞は貰っていたようだ。彼らは霊能たちが話しかける前にとぼとぼと帰って行った。
「ティッシュか・・・出来れば一等を取りたいもんだな」
『霊能、一等じゃない・・・特賞を狙うんだ!』
「じゃあそうするかな・・・とりあえず列に並ぶ・・・おっ」
「あ、霊能さんじゃないっですか!」
「ツキミか、お前も福引に?」
「そうっです!!あたしの狙いはただ一つ!!四等・・・タミフルたみ子抱き枕っです!!」
『四等・・・欲しいどすぇ・・・』
『一人で来たの?』
「いえ、ゴン兄と来たんっですが・・・あ、ゴン兄は人を助けたらお礼に福引券貰ったらしいっですよ!」
「ゴンザレスが来てるのか?」
「そうなんっですけど・・・はぐれちゃいました・・・」
『ゴンザレスかー・・・霊能の友達だし会ってみたかったんだけどなぁ』
「まぁまた機会はあるさ、とりあえず並ぼうぜ」
こうしてツキミと合流した霊能たちは福引の列に並んだ。と、いっても所詮は福引の列・・・そう長いこと並ぶわけでもないが・・・。
「さっちん、そういや一等ってなんなんだ?特賞しか聞いてないけど・・・」
『ちょっと待つどすぇー・・・チラシによると、一等はなんとHD‐DVDらしいどすぇ』
「超在庫整理じゃねーか、ブルーレイ持って来いよ」
『え?ブルー霊?』
「どんな霊っですか、常に落ち込んでるんっですか、自殺したがりっですか」
『コタツの電源を切ったかどうかやたら気になる霊』
「いてたまりますかそんな霊!!」
「さっちーん、二等はー?」
『えぇと・・・あ、もう順番が来たどすぇ』
『誰からやる?』
『私からやるどすぇ』
そうさっちんが名乗り出る。
さっちんはトライアスロンに出ていないため、参加賞としての福引券は持っていないがアクセサリーショップに行ったときに貰ったのだ。
『お願いするどすぇ』
「はいよ、一回ね」
券を渡してレバーを握る。
福引はガラガラと回して玉を出して、その玉の色で何等かを見るタイプのやつだ。
『むむむ・・・どすぇ・・・』
(温泉も行きたいどすけど抱き枕も欲しいどすぇ・・・)
(どうやって引き当てるか・・・確かはずれの玉は軽いからゆっくり回すとはずれがさきに動いて、あたりが出にくいと聞いたことがあるどすぇ・・・)
(でも・・・所詮は福引・・・最終的には運どすぇ)
『では・・やるどすぇ!』
(当たりが出やすいように勢いよく!!)
ガラガラガラガラッ!!
コロン
『どうどすぇ!!』
[赤]
『・・・赤い玉?・・・なんかよさそうな色どすなぁ・・・』
「おお!これは・・・おお~あた~り~!」
「マジか!やったなさっちん!」
「すごいっです!おめでとうっです!!」
『流石さっちん!おめでとう!!』
『えへへ・・・で、何等なんどすぇ?』
「はい、二等の・・・」
『おお!二等どすか!!』
「こけしだよ、おめでとう!」
『『「「・・・・・」」』』
空気が、凍った。
『・・・さっちん、なんというか・・・、うん』
「ああ・・・二等・・・えと・・・あと・・・おめでとう・・・」
「う、うわー・・・す、すごいなー、うらやましいっですー・・・」
『・・・慰めは・・・いらないどすぇ・・・』
さっちん、福引により意気消沈。
「よ・・・よし!次は俺がやるぜ!!」
『頑張れよ霊能!』
「ファイトっです!」
そうして霊能が福引のレバーを持つ。
(狙うは特賞の温泉旅行・・・)
(友達と!友達と温泉旅行!!)
(・・・家族でとかじゃなくて!友達と!!)
(ああ・・・思い出すははるか昔・・・親父とお袋と温泉旅行にいったっけなぁ・・・)
(親父との卓球は絶対勝てなかったなぁ・・・卓球のサーブで零式ドロップは反則だと思うぜ・・・しかもしっかり一回バウンドしてから発動って・・・)
(思考が飛んだな、そう!狙うは特賞!それを引き当てるにはどうするか!)
(福引は運、ならば運を掴み取るためには・・・)
(・・・筋トレだ!)
「よし、やるぜ!まずは腹筋!そして腹筋!さらに最後に腹筋だぁぁぁ!!」
『霊能が壊れたっ!?』
「霊能さん!?どうしたんっですか!?」
「ハッ!?ああ・・・ごめん、取り乱した。よし・・・やるぜ・・・!」
ガラガラガラガラ!!!!
コロン
「よし!どうだ!!」
[金]
「きたぁぁぁぁ!!!これは特賞だろ!」
『おお!ナイスだ霊能!!僕は霊能を信じてた!!』
「おお~!流石霊能さんっです!!」
「どうだおっちゃん!」
「いや、はずれだよ。はいこれティッシュね」
「「『・・・・・』」」
空気がパーフェクトフリーズ。
『霊能・・・まぁ・・・あれだ。たしか今ティッシュ切らしてたよな、良かったじゃないか』
「霊能さん、・・・これ鼻セレブっですよ、高いやつっですよ」
「・・・それフォローになってねぇ・・・」
霊能太郎、福引により心に傷を負う。
「よよよよっし!つぎはあたしが挑むっですよ!」
『おう!頑張れよツキミ!!』
「たのもーっです!」
そんな感じでツキミもレバーを握る。
(二人あたしの後ろで意気消沈しているっですけど・・・)
(二人の犠牲の上に!あたしは抱き枕を手に入れるっですよ!!)
(大切なのは思いの強さ!!あたしのタミフルたみ子への思いは誰にも負けないっです!!)
(前の二人は勢いよく回して失敗した・・・いや、さっちんさんは二等っですけど・・・)
(あたしはその経験を生かして!!ゆっくり回してやるっですよ!!)
「いざ!尋常に!!勝負!!!」
カラカラカラ・・・
コロッ
「どうっですか!!?」
[緑]
「おお!なんか四等っぽい色っです!」
『戦隊モノでも緑は四番目っぽい!これは来たんじゃないか!!?』
「さぁおじさん!あたしは何等っですか!!?」
「これは・・・おお!!・・・ぅ四等だな」
「キターー!!あたしの時代がキターーーっです!!!蘇我さん!聞きました!?四等きましたよ!!?」
『いやいまいち聞き取れなかったけど・・・』
「おじさん!はやく商品を!!」
「まぁそう慌てなさんな・・・はい、どうぞ」
と、言って渡されるもの。それを見て固まるツキミ。
「・・・これ・・・なんっですか・・・?」
「何って・・・四十四等の商品だよ。単二電池三本だ」
「『・・・・・』」
困惑した空気・・・
「ちくしょぉぉぉおおお!!!なんっですか!!なんなんっですか四十四等って!!しかも単二電池三本って!!・・・使い道ほとんどないっですよ!!あっても間違いなく一本あまりますよ!!」
『まぁ・・・うん、ティッシュよりはマシじゃない?』
「まだティッシュなら鼻をかめますようわぁぁぁああん!!!」
ツキミ、福引により錯乱・・・のち絶望。
『僕が最後だ!!いざゆかん!!』
そして最後になったがレバーを握る蘇我。
(温泉旅行・・・!!僕は絶対温泉旅行へ行くんだ・・・!!)
(温泉といえばロマン!!一つ壁の向こうには男のロマンが詰まっている!!)
(紳士的にこのロマンは追い求めなくてはいけないものだ!!)
(大丈夫、幸い前の三人がはずれの可能性を少しでも潰してくれた・・・)
「蘇我ぁ・・・はずせぇ・・・」
『蘇我はんもいっしょにぃ・・・』
「絶望を体感するっですよぉ・・・」
(後ろからゾンビの声が聞こえてくるけど気にしない!!気にしたら負けだ!!)
(大丈夫、運なんて自分で掴み取るもの・・・!!そう、myブラザーも言っていた・・・)
(紳士に不可能は・・・無い!!!!)
『行くよぉぉぉ!!!』
ガラガラガラガラ!!
コロン!
『どうだ!!』
[白]
『っく・・・!っでも・・・金がティッシュなんだ・・・!まだ可能性がある・・・!!』
「ああ~これははず・・何!?・・・おめでとう、見てみろ・・・ここに[特]と書いてあるだろう?」
そう、蘇我の引き当てた白い玉には・・・字が書いてあった。
その文字は・・・[特]
『やった・・・僕はやったんだ・・・!紳士に不可能は無かったんだ!!』
「はいおめでとう、これ特別残念賞のうまい棒ね。めんたいこ味だよ」
『・・・・・』
空気は凍らない。
ただそこには・・・呆然と立ち尽くす幽霊と・・・
「「『蘇我(さん)』」」
三人の笑うゾンビがいた。
『・・・なんだい?』
「「『Welcome to Underground』」」
『ちくしょぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!』
蘇我、福引により男泣き。
後ろの三人は少し生気を取り戻していたという・・・。
とぼとぼと歩く帰り道。
そこには落ち込んだ四人がいた。全員テンションが低い。
「はぁ・・・結局たいしたものは当てれなかったな・・・」
『そうどすなぁ・・せっかく二等あてたのに・・・』
『こけしが二等って・・・さっちん・・・ついてないね』
「はぁ・・・単二電池って・・・あ、ゴン兄っです・・・おーいゴン兄ぃ~!」
遠くに兄を見つけて呼ぶツキミ。
そういえばツキミは兄と来ていたのだ。福引のショックですっかり忘れていた。
「おっすゴンザレス!久しぶり!」
「おお!太郎ではないか、おぬし・・・なかなか個性的な仲間たちに囲まれておるなぁ」
『あ、どうも。蘇我入鹿です』
『山村貞子どすぇ~』
「某はゴンザレスと申す。そこにいるツキミの兄だ。・・・よろしく頼む」
「・・・?個性的ってどういうことだ?」
「入鹿と貞子は幽霊と妖怪であろう?まぁ仲良く出来ているならばこれほど良いことはない。二人とも、太郎を頼む」
『ははは・・・大丈夫、霊能はいいやつだよ』
『そうどすぇ、頼まれたって嫌わないどすぇ』
「確かに個性的といえば個性的っですね・・・くっちーさんや小次郎さんも人外ですし・・・馴染みすぎて違和感がなかったっですよ・・・」
「・・・そうだ、おぬしらこれを受け取ってはくれぬか?先ほど福引をしたら当たってのぉ・・・某は仕事の都合により行くことができぬのだ」
そう言ってゴンザレス(初登場)が取り出したのは・・・
紛れも無く、先ほどの福引の特賞・・・温泉旅行のチケットである。
「え・・?貰っていいのか?」
「ああ、構わん。某が無駄に持つよりは幾分もましであろうよ」
『ありがとぉぉぉぉ!!!ゴンザレスさん!本っ当にありがとうございます!!』
『ありがとうどすぇ!!ゴンザレスはんはいい人どすぇ!!』
「霊能さん!それ何人まで行けるっですか!?」
「えぇと・・・このチケットで四人までだな」
「あたしも!!あたしも行っていいっですか!!?」
「ああ!もちろん!!」
「ゴン兄大好きー!!」
「こら、抱きつくなはしたない。・・・では当日、某の分も楽しんでくるとよい。ツキミ、帰るぞ」
「ゴンザレス、ありがとうな!」
「・・・構わん。ではな」
『バイバイどすぇ~』
『ではまた!!』
「よし!蘇我、さっちん!今度は・・・温泉旅行へ行くぞ!!」
『『おぉー!!』』
こうして予想もしないルートから温泉旅行を手に入れた霊能たち。さっきまでの落ち込みようはどこへ行ったのかと言いたくなるほどのハイテンションで家へと向かうのであった。
『あ!・・・ゴンザレスはんにお礼としてこけしをあげればよかったどすぇ』
『さっちん、それは普通に嫌がらせに近いから止めといたほうがいいね』