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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
21/45

第二十一話 霊能太郎とトライアスロン後編

 


「あ、そうだ。ロック、友達になってくれ」

『む!!?』

『はっはっは!しっかたねぇなぁ!この俺様が・・・そうだな、条件次第では考えてやってもいいぜ!!?』

「いや、マウンテンはいいや」

『なん・・・だと・・・?』



 第二十一話 霊能太郎とトライアスロン後編



『ちょ待て待て待て待て!!この俺様が!!考えてやってもいいって言ってるんだぞ!!?そうそうこんなチャンス無いぞ!!?』

「なぁロック、頼むぜ」

『むぅ・・・』

『シカッティング!!?ちくしょう!蘇我!お前もなんとか言ってやってくれよ!!』

『いや、マウンテンはいいや』

『てめぇぶっ殺すぞぉぉぉぉぉ!!!?』

 霊能たちはまだ自転車を漕いでいる。もうすぐ自転車ゾーンも終わり、マラソンへと変わるはずである。ちょっとした会話をしながら進む霊能たちに後ろからなんか必死な声が聞こえてきた。

『追いついたぞ!霊能太郎!!』

『我ら四天王に追いつかれたからにはもう貴様に勝ちは無い!!』

『安心して負けるが良い!!』

 そう、いつぞやの四天王(五人)である。

「ああ・・・そういやいたねお前ら」

『今大会!我らは貴様に勝つことを目的としてきた!』

『そこで我々は考え!最高の策を思いついたのだ!!』

『そう!!直接貴様を潰せばいいのだぁぁぁ!!』

『・・・お前ら霊能に勝つ気か?無理だろ・・・』

『うるさいぞメガネ!それくらい理解している!』

『おいメガネって呼ぶな』

 元気な人たちである。どうやら前に霊能に瞬殺されたのが悔しかったのだろう。今回は霊能に勝つことだけを考えてきたようだ。

『力ではかなわない・・・』

『ならば!道具を使えばいいのだ!!』

『さぁナカムラ!!あれを取り出せ!!』

『・・・やばいぞロック、俺たち空気になってきてる』

『むぅ・・・』

『ふふふ・・・これを見よ!!!』

 そういって四天王の一人、ナカムラが取り出したのは・・・人形。

 円筒のような形で、ドーム型の顔がついており、棒のような手が生えている。

『通販で仕入れた・・・超強力爆弾!ジャス○ウェイさんだ!!』

『オイィィィィィ!!!なんて物仕入れてんだァァァァ!!!』

 超強力である。

 いろんな意味で。

『これで貴様も木っ端微塵!!吹き飛ばしてくれるわ!!』

『不味いぞ霊能!著作権的にも爆弾的にも!!』

「分かってる!!どうしよう!!」

『さぁくらえ・・・ピッチャーナカムラ、勢いよく振りかぶって・・・』

『オイ馬鹿!!自転車の上に立つな!!』

『投げ・・・う、うわっ!!』

 その時、風が吹いたのと同時に、自転車の上に立って振りかぶり爆弾を投げようとしたナカムラが倒れる・・・

 ・・・マウンテンのところに。


 チュドォォォォォン!!!!!!!!!


『『『『ナカムラァァァァァ!!!』』』』

「おいロックとマウンテンも巻き込まれたぞ」

『なんというか・・・ご愁傷様だよね』

『大丈夫かナカムラ!!』

『っくそ!覚えてやがれ!!』

『俺たちを退けても!きっと第二、第三の四天王が・・・!!』

「いや来ないでください」

『覚えてろぉぉぉ!!!』

 こうして霊能と蘇我は、みんなを置いて先へと進んでいった・・・。


 ・・・その後のマウンテンとロックはというと・・・


『山田、黒焦げだが大丈夫か?』

『痛たたたたただ大丈夫だし!こんな痛!このくら痛いした事ねぇし!でも自転車壊れたから棄権するし』

『・・・そうか』

 マウンテン龍、ロック。

 トライアスロン第二の競技・・・自転車にて棄権。


 ◇


『ふふっふ~いい物買えたどすぇ~』

「タミフルたみ子ストラップトライアスロン限定バージョン・・・嬉しすぎて爆発してしまいそうっですよ!』

『爆発は流石に困るどすねぇ・・・』

 さっちんとツキミの二人はアクセサリーショップでかなりの時間を使い、さまざまな物を物色していた。

 だがまだ霊能たちのトライアスロンは終わる頃ではないので、まだ時間を潰す必要があるのである。そんな事情でぶらぶらと町を歩いていると、向かい側にマスクをした女性が見えた。

「あ、あれくっちーさんじゃないっですか!?」

『くっちーはんどすなぁ、お~いどすぇ~』

 だが女性はこちらに気づかず、銀行へと入っていった。それを見たさっちんたちは同じ銀行へと入る。

「くっちーさーん!」

『あら?さだこちゃんにツキミちゃんじゃない?どうしたの?』

『いや見かけたからついてきただけどすぇ~』

「暇なんっですよー」

『暇って・・・でも私も今月の生活費を下ろすだけなんだから面白いこと無いわよ?』

『目的が皆無のまま歩きまわるよりはマシどすぇ』

『ならいいけどね、じゃ・・・下ろしてくるからそこらへんで座って待っててくれる?』

 そう言ってくっちーは列の一番後ろ・・・髪が長い人の後ろに並ぶ。

『暇どすなぁ・・・』

「暇っですねぇ・・・」

『暇でござるなぁ・・・あ、カステラ食べるでござるか?』

『いただくどすぇ~』

「ありがとうっです!もぐもぐ・・・なかなかいけるっですね」

『そうでござろう?親切な女性に奢ってもらったのでござるよ』

『いい人もいるもんどすなぁ・・・』

「って小次郎さん!!?いつからそこに!!?」

『っですのあたりからでござるよ』

『どのあたりかさっぱりどすぇ~』

「おい!!!動くな!!!このバックに金を詰めな!!」

 と、そのなごやかな空間をぶち殺す!的な台詞が聞こえてきた。

 もはやこの台詞だけで声の主が何をしようとしているのか分かるというもんである。

『銀行強盗どすぇ?』

「おおー、リアルにあるんっですね!凄いっです!!」

「お客様!?どうか考え直しなさってください!!」

「うるせぇ!!さっさと金を用意しやがれ!!仕事なんてもうしねぇ!!一生この金で生きるんだ!!」

『待つでござるよ、落ち着くでござる。急いては事を仕損じるというでござろう?仕事も忍耐強く続けるべきでござるよ』

「あぁん!?うっせぇな!!あんな仕事続けてられるか!!分かるか俺の仕事!?円筒形でドーム型の顔!棒のような手がついてる人形を延々と作り続けるだけだぞ!!?ざけんな!!」

『・・・それは・・・なんというか大変でござるな・・・』

「オラ!早く金を出しやがれ!!さもねぇとこのガソリンをぶちまけるぞ!!!」

 男はどこからかガソリンのポリタンクを取り出す。

 もしもこれをぶちまけられたら大変である。ぶちまけたガソリンに火がついたら・・・そう、大惨事である。

「遅せぇ!!オラよ!!」

 そういってぶちまけようとする男だが・・・

 ガァン!!

 その音とともにガソリンの入ったタンクは窓を突き破り外へと飛んでいく。

 ・・・そう、蹴り飛ばしたのだ。

 髪の長い人が。

「てめぇ何しやがる!!」

 その言葉に髪の長い人が答える。

『ふむ、流石にガソリンを撒かれては困るのでね』

 そう言いながらカツラを外す、とそこにはお皿がのっている。

「な!ヅラッ!!?変装だと!!?」

『ヅラじゃない、紳士だ』

『佐悟はん!!?そのままやっつけるどすぇー!』

「っく!ガソリンが無くてもこいつがある!」

 男がその言葉とともに取り出したもの・・・それは拳銃。銀行強盗の必需品とも言える。

 それを構えようとする男だが・・・

『遅いわね。というか貴方のせいでお金下ろせないんだけど?』

 構えたときにはすでに手に拳銃は無かった。

 口裂け女のスピードを舐めてはいけない。気がつけば男の首には大きな鎌が添えられている。

『自主する?』

「・・・ちくしょう・・・」

 こうして銀行強盗事件は幕を閉じた。

 そしてくっちーは銃刀法違反の疑いで連れて行かれた。


 ◇


『やっとマラソンゾーンか・・・』

「遠かったな・・・、だがここからが勝負だぜ」

『うん、そうだね』

「そういや今頃さっちんたち何やってんのかなぁ・・・」

『アクセサリーショップにいるらしいよ』

「ん?なんで分かるんだ?」

『myブラザーが変装して護衛してるからね!』

「・・・人はそれをストーカーと呼ぶ。つーか連絡手段はどうやってんだよ、蘇我がトライアスロン中に携帯使ってるところ見てないぞ?』

『え?何言ってるの?紳パシーに決まってるじゃん?どうしたの?』

「さも当たり前のように言ってんじゃねぇ」

 霊能たちはトライアスロンの自転車ゾーンが終わり、マラソンに移行していた。

 しばらく走っていると前のほうに二人の男が走っていた。

 それに追いつくように走っていく。

 追いついて見てみると見覚えのある二人だ。

 そう、ダイナマイトを体に無駄に巻いているせいで小太りに見える男・・・ダイナマイト吉松。そしてタバコを七本同時にくわえている男・・・ハードボイルド黒松。走りながらタバコを吸うのはかなり体に悪そうな気がする。

「おっさんたち!追いついたぜ!!」

「・・・お、君たち・・・なかなかやるじゃないか。サメの時よりいい顔をしているね」

『あの時はどうも!・・・負けませんよ!!』

「こちらこそ、手加減はしないよ?」

 相変わらずのいい人である。そんな会話を聞いて黒松が会話に参加する。

「・・・なかなか威勢のいいボウズたちじゃねぇかゴホゴッホ!!!・・・最近なんかやたら咳き込むんだけど何でだろうな?」

『原因確定的に明らかじゃねぇか!!禁煙しろ!!!』

「つーかなんで七本も一気に吸ってんだよ・・・」

「ふ・・・ボウズには分かんねぇかもしれねぇが・・・他人から見れば無駄に見えるこだわり・・・。しかしそこに男の全てがある」

「おい何ちょっとかっこ良さげに言ってごまかしてんだよ、禁煙しろ禁煙」

「安心しろ、俺は禁煙の達人だ。今までに何回禁煙してきたか分かんねぇくらいだぜ」

『一度も成功してねぇじゃねぇかぁぁぁぁ!!』

 なかなかの自由人である。そんな会話をしながらも彼らは走っていく、ゴール目指して。

 しばらく走っていると後ろの方から声が聞こえてくる。

 その声はどんどん近づいてきて・・・

 ついには並ばれることになった。

『追いついたぞ!!!追いついたぞ霊能太郎!!!!』

『遠かった・・・!だがここで貴様も終わりだ!!!』

『今こそ貴様に勝つ!!』

『ナカムラの治療も終わった!!あとは貴様を倒すだけだ!!』

『フランスパァァァァン!!!』

「おい今何か変なのいたぞ」

 そう、四天王の五人である。一人おかしい気がするが。

『変とはなんだ!!四天王が五人いて悪いか!!』

「そんな今更なことはどうでもいいわぁぁぁ!!」

『明らかに一人別人だよね?それナカムラじゃないよね?』

 そう、そこにはいつだったかのナカムラはおらず、代わりに凄まじいインパクトの男がいた。

 マッスルな肉体、イカしてるグラサン、イエローなビキニパンツのイイ男。

 在りし日のナカムラの面影はそこには無い。

『いやナカムラだ!だがちょっと爆発の怪我が酷かったから病院で治療しただけだ。正確にはナカムラ改めナカティンと呼んでくれ』

『どんな改造手術だよォォォ!!劇的ビフォーアフター過ぎるわァァァ!!』

「これが・・・匠の仕事か・・・」

『霊能も信じてんじゃねェェェェェ!!!』

『イチジカーン、イチマーンエーン。ニジカーン、ニマーンエーン。ソノアイダワターシ、ナカティーン! OK ?』

『NOォォォ!!!オイ四天王!!間違いなく別人じゃねぇか!!雇ってんじゃねぇかァァァ!!!!』

『蘇我入鹿、諦めてこれはナカティンだと認めろ!』

『そうだそうだ!ナカティンと言う存在そのものを否定する気かー!』

『ナカティンは認めてもそれがナカムラと同一とは認めねぇよ!!』

「蘇我、匠はな、凄いんだぞ?」

『お願い霊能、現実に目を向けて?』

 蘇我に味方はいない。

 と、話が盛り上がっているところ、サトウが真剣な表情になり宣言する。

『さて、今度は爆弾も持ってないし、正々堂々マラソンで勝たせてもらう!!』

「いいだろう、相手になってやる!」

 こうして霊能たちは走る。ただひたすらにゴールを目指して。

 そしてついに・・・ゴール目前、ラストスパートの位置まで来たのだ。


[もうすぐゴールだなぁ!よぉくがんばった!!]

[あら校長、生きてたの?そうね、この大会ももう終わりね]

[てめぇらぁ、頑張れよぉ?世の中は気合でなんとかなるもんだぁ。気合が全てだぁ]

[いやその理屈はおかしいわ]


『霊能!いくら霊能でもここは負けられないよ?』

「蘇我!俺だって負ける気はさらさら無いぜ!!」

「俺を忘れてもらっちゃ困るね、このダイナマイトにかけて・・・負けない!!」

「ゴホゴホッゴホゴッホゴホ!!・・・この大会が終わったら・・・バーでマスターとカミュを飲むのさ・・・」

『霊能太郎ぅぅぅ!!貴様に勝つぞぉぉぉ!!』

『うぉぉぉ!!!』

『負けんぞぉぉぉぉ!!!』

『ふぬおぉぉぉ!!!』

『France Paaaaaaann!!!!』

 全力で・・・最後の力を振り絞る彼ら。

 誰が果たして一位を取るのか、それはもうすぐ決まる。

 一位と言う栄光・・・この中のチャンピオンは誰なのか・・・

 全員がゴール目指し走っているところに、影が差す。

『ん?』

 その影はをつくる物は空を飛んでいる。その物は霊能たちの所へと振ってくる。

 見た目はタンク!中身は液体!その名も・・・


 ガソリン。


 バシャァン!!

 彼らに降りかかるタンクの中に入っていた液体。

 そのガソリンはかかってはいけない人にまで容赦なくかかる。


「あ」


 その言葉は誰のものだったのだろうか。

 そう、ガソリンは可燃性・・・それが当然のごとく七本のタバコにより着火。着火したガソリンにより吉松にも火が回る。そして吉松といえば・・・ダイナマイト。



 ズドォォォォォォォオオオオオン!!!!!!



 町内トライアスロン大会


 優勝者・・・なし。

 参加者・・・全滅。

 奇跡的に死者は出なかったと言う・・・。


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