第十七話 霊能太郎と止まらないしゃっくり
『大変だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
霊能家に大きな蘇我の喚き声が響く。
『大変大変大変大変大変!!!』
パニックになり部屋を走り回っている。
『たいへんたいへんたいへんたいへんたい!!』
そして座っている霊能の前まで来て・・・
『変態なんだ!!!』
「変態はお前だ」
第十七話 霊能太郎と止まらないしゃっくり
「・・・で、どうしたんだ?慌てて」
『聞いてくれ霊能!さっちんが死んでしまう!!』
「落ち着け、何で死にそうなんだ?教えてくれ、さっちん」
『それについては私がヒック、説明するどすヒック』
『さっちんのしゃっくりが止まらないんだよ!!』
『説明したかったどすぇ・・・ヒック』
「・・・しゃっくりで死ぬことなんてあるのか?」
『知らないのか霊能、しゃっくりを百回すると死んじゃうんだぞ!!』
『蘇我はん・・・ヒック、心配してくれるのはうれしいんどすけど・・・ヒック、普通死なないどすぇ・・・』
『普通じゃなかったらどうするんだ!!』
「蘇我お前心配しすぎじゃないか・・・?」
心配しすぎと言うか・・・空回りしすぎている気も否めない。
『心配しすぎて困る事なんて無いのさ!・・・で、なんとかしゃっくりを止めてあげたいんだがどうしよう?』
「・・・そこは丸投げなんだな」
『私もできるならヒック止めたいどすぇ・・・』
「そうだな・・・さっちん、俺の目を見てくれ」
『へ?・・・ヒックいいどすけど・・・』
そういって顔を突き出す霊能。さっちんも言うことを聞いて霊能の目をじっと見る。
だがその直後・・・
「わっ!!!!」
『どすどすどすぇ!!!!???・・・ヒック』
「驚かしても止まらないか・・・」
『そうなんだよ。僕もさっき驚かしてみたんだけどね・・・』
『蘇我はんのは心臓に悪いどすぇ!!ヒックあんなのはもう二度としないって約束してヒック欲しいどすぇ!!!』
「蘇我、何したんだ?」
さっちんがここまで嫌がるのだ。そうとうのことをしたのだろう。
『いや・・・ただちょっと首から下だけ霊体化しただけなんだけどね・・・』
つまりは生首が浮いている状態にしたということだ。
それは驚くのも無理は無い気がする。と、言うか普通に怖い。
「そんなことできるんだな」
『まぁね、でももう二度としないよ?紳士の約束だからね』
『ヒック、ともかくなんとか止めて欲しいんどすぇ・・・ひっく』
「任せろ、・・・くっちーならなにか知ってるだろう」
『あ、そこは丸投げなんだね・・・』
『で、私のところに来たのね?・・・まだバイト中なんだけど』
そう、ここはくっちーのバイトしているコンビニである。
『事態は刻一刻を争うんだよ、さっちんがしゃっくりのし過ぎで死んじゃったらどうするんだ!?』
『そんなので死なないと思うわ』
『ああ・・・かわいそうなさっちん。きっと死ぬ直前に・・・くっちーはんは私よりバイトをとったんどすぇ・・・蘇我はん大好きどす・・・と言いながら死んでしまうんだ』
『絶対言わないから心配しなくていいと思うわ』
かなり都合のいい妄想である。
「バイトを邪魔するのは悪いと思うが・・・なにか治す方法をしらないか?」
『そうどすぇ・・・ヒック、何か治す方法はないどすか?・・・ヒック』
それを聞きう~んと軽く悩むくっちー。霊能の頼みでもあるしさっちんのためでもあるのでできれば答えてあげたいのである。
『水を飲むといいって聞いたことがあるわよ?飲んでみたら?』
『よしさっちん、このミネラルウォーター、通称クリスタルガイ『蘇我君?まだそれ会計済ませてないよね?』すいませんでした』
「・・・慌てすぎだろ蘇我・・・ん、くっちーこれで足りるか?」
『大丈夫よ。はい、おつり。じゃあさっちんちゃん、どうぞ~』
『ゴクゴクゴクゴク・・・・・・・あ、治ったどヒックぇ・・・』
『駄目か・・・』
どうやらこれでも治らないようだ。
『う~ん・・・どうしようかしらねぇ・・・』
と、そこにいつものように冷たい声がかかる。
『アラ何をしているの?駄客ども』
このコンビニの店長で、種族は雪女である。
非常に毒舌だが、別に馬鹿にしている訳ではない。ただ素で言っているだけなのだ。
『しゃっくりが止まらないんヒックどすぇ・・・』
『しゃっくりが?・・・そうね、一生息を止めてごらんなさいな』
『一生は無理どすけど・・・息を止めるのはいいかもヒックしれないどすぇ・・・』
そう言って息を止めるさっちん。
だが声には出ないがしゃっくりはしているようだ。
・・・二十秒ほどで我慢の限界が来て、息を止めるのをやめる。ついでに、何故か一緒に息を止めていた蘇我も息を吸い始める。
『ぷはぁ!・・・ヒック、治らないどすぇ・・・』
『駄目ね、気合が足りないわ。治す気があるの?』
「まぁまぁさっちんも頑張ったんだし・・・、でもこれでも治らないか・・・」
『まぁ待って霊能君・・・いい事を思いついたわ』
「おっ?何かいい方法があるのか?」
『ツキミちゃんなら何とかなるかもしれないわ』
『・・・そこは丸投げなのね。使えない子』
「・・・で、どうしたんっですか?」
ここはツキミの家・・・というか寺。
今ツキミはここの寺にゴンザレスともども世話になっているのである。
・・・ゴンザレスとツキミは二人暮らしだったのだが、ゴンザレスが出家したときにツキミが一人になってしまうのでここの和尚が「可愛い子なら大歓迎やで!」とここに住むことに許可したのである。
『しゃっくりを止める方法を教えて欲しいんどすぇ・・・ヒック』
「しゃっくりかー・・・さっちんさん、豆腐の原料は何か分かるっですか?」
唐突に関連性があるかどうか分からないような質問をするツキミ。
『どすぇ?・・・えと・・・大豆どすぇ』
「どう?治っ『ヒック』・・・てないよねやっぱり」
『ツキミ、今の質問に何か意味があったの?』
「いやぁ・・・この質問をするとしゃっくりが止まるって聞いたことがあったんっですよ。・・・無意味でしたが」
「まぁそんなので治ったら今までの苦労はなんだったんだって話だよな」
まったくもってその通りである。
『ううぅ・・・ヒック、なかなか治らないどすぇ・・・』
「そうだ、ゴンザレスはいないのか?」
「ゴン兄っですか?・・・今この寺にはあたししかいないっですよ」
「そうか・・・あいつなら治せそうな気がしたんだけどな」
だがいないものはしかたがない。気を取り直して何か他の方法を探そうとする霊能。
そんな時、目の前でやたらとツキミが慌てだした。
「あ!!もうこんな時間っです!!!まずいっですよ!!」
『なんだ?どうしたんだ?』
「ああ~・・・もしかして・・・」
「そう!もう始まっちゃうんっですよ急がないと!!」
『・・・ヒック、あ!もうそんな時間どすか!?』
『・・・さっぱり分からないんだが霊能分かるのか?』
「アニメだよアニメ。昔っからツキミが大好きなアニメがあってだな・・・」
「さっちんさんも見ていくっですか!?一緒に見ましょうっです!!」
『ヒック、見るどすぇ!!』
そう言って慌てて走っていく二人。おそらくテレビのある部屋に行くのだろう。霊能と蘇我はとりあえず二人についていくことにした。
[魔法少女タミフルたみ子!始まるよ!!]
「始まったっですよ!!」
『間に合ったどすぇ!!ヒック』
[タミフル~♪タミフル~たみ子タミフル~♪]
『たみふる~ヒックたみふる~』
「タミフルタミフルタ~ミフル♪」
[狂え~♪二階の窓から飛っび降り~ろ~♪]
「『イエー!』」
『・・・何これ?』
「・・・オープニングで困惑してたら本編なんて見れないぜ?」
[フハハハハ!今日こそ世界中をなんかこう・・・こうしてやるのだ!!]
[出たな!怪人いんぶるぁぁああえんざ!!たみ子があなたを・・・なんか・・・てやっ!てやってやるわ!!]
『なんか怪人出てきたね・・・でも言ってることが要領を得ないんだけど』
「ツキミ曰くそのもやっとした感じが人気の秘訣らしいぞ」
[タミフルパワー!メーイクアーップ!!]
[説明しよう!たみ子はタミフル入りのカプセルを食後に飲むと魔法少女タミフルたみ子に変身できる確立が上がればいいなぁ!]
『説明できてない!?』
「・・・ただの願望だったな」
[グワァァァァァァァ!!!ガッ!ってきた!!なんかガッてきたぁぁぁ!!]
[どう?たみ子の超絶デストロイこむら返りの味は!!]
『技名かっこ・・・良くないな。なんだよこむら返りって』
「ん、そろそろ敵を倒す直前の決め台詞だぞ」
[おのれたみ子・・・またしても我らのふくらはぎを・・・!!]
[・・・病気の熱は下げれても・・・たみ子の情熱は下げられない!!・・・・たみ子です]
[ちくしょう!お、覚えていてくれたらうれしかったりなんかしてーっ!!!]
『・・・何?たみ子毎回敵のふくらはぎ狙ってんの?集中的に?』
「決め台詞はともかく、それの後の名乗りがなんか笑点の大喜利の前の自己紹介みたいだな」
『敵は逃げるときも要領を得ない捨て台詞を残すんだね・・・』
[次回!鋼鉄のふくらはぎを持つ男!・・・見ないと脳みそ狂わしちゃうゾ♪]
「ああ・・・今回のたみ子もかっこよかったっです・・・」
『面白かったどすぇ~・・・』
『次回予告がなんか怖いんだけど』
「・・・次回の敵倒せるのかな?」
『あ、霊能もそっち側なんだ』
「いやそういう訳ではないんだけどな」
「やっぱり最高っですよたみ子さんは~、てい!超絶デストロイこむら返り~」
『ちょ!やめるどすぇ~こしょぐったいどすぇ~!』
「・・・あれ?さっちんしゃっくり治ってるんじゃない?」
『どすぇ?』
・・・そう、いつのまにやらさっちんのしゃっくりが止まっているのだ。30分真剣にアニメを見ていたおかげだろうか?
『おお!うれしいどヒックえぇ・・・・』
「・・・ぶり返したっですね」
「残念だな、さて結局しゃっくりどうしようかねぇ」
『そうだね・・・ここは・・・もうアレしかないかな』
『何か方法があるんどすぇ?ヒック』
『・・・あの人なら何とかできるかもしれない』
「あ、そこは丸投げなんっですね」