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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
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第十三話 霊能太郎とクリスタルガイザー

 


『小次郎!!ナイスだ良く勝った!!』

「お前なら勝てると思ってたぜ!!」

『拙者のいい所を見せられたようでなによりでござるよ』

「でも・・・大丈夫っですか?」

『お腹をざっくりいってるわね・・・早く手当てしないと』

『私に任せるどすぇ、呪いが専門どすけど・・・回復の呪いもあるんどす』

『・・・かたじけないでござるよ』

「さっちんそんなことが出来たのか・・・頼むぞ」

『任せるどすぇ、ただ・・・回復といっても血を止めるのが精一杯どすけど・・・』

『十分でござるよ、次はさっちん殿たちの番でござろう?血さえ止まればどうにでもなるでござる』



 第十三話 霊能太郎とクリスタルガイザー



 第一回戦が終わり、控え室で小次郎の勝利を祝いつつも傷の心配をする霊能たち。幸いさっちんが呪いの要領で血を止めることができたものの、二回戦の出場者はさっちん、ツキミ、ケロちゃんだ。ある程度小次郎の傷の手当てをしたところで、第二回戦開幕直前となった。



『ふん・・・なかなかやるではないか、それなりに楽しめたぞ?』

「悪趣味っですね、二回戦も絶対勝ってやるっですよ!!」

『意気込むのは自由だ・・・二回戦、出場者は?』

「あたしっです!!!」

『私もどすぇ、あとケロちゃんもどす』

『ガルルルルル!!!』

 一歩前に出る二人と一匹。それを見て閻魔は口を開く。

『貴様らはその集まりで[一人]だったな、いいだろう・・・ではこちらは』

『はいはいはいはーい!!俺っす!俺とロックが出るっすよ閻魔様!!敵も実質多いし女じゃねぇっすか!!俺とロックで余裕っすよ!』

 出てきたのはやたら自己主張の強いひょろりとした男と、その隣の大男、こちらはやたら貫禄のある体格をしている。

「な!!何で二人なんっですか!!一対一なはずっですよ!!」

『へへ~ん!こちとら仲良し二人組みぃ!俺たちだって二人で[一人]扱いなんだよ!!』

『せこいどすな・・・ありなんどすか?』

『アリもアリ、超アリよ!!お前らなんてなぁ!このマウンテン龍様にかかればちょちょいのちょいーだ!!』

『落ち着け、山田』

『ちょ!!ロック!!山田じゃないって!マウンテン龍だって!!出てくる前に何度も言ったじゃん!!?』

『俺は岩男だ』

『ロック!!?普段寡黙なのになんでこんなときだけ自己主張強いの!!?打ち合わせしたんだからもうチョイ合わせて!!?』

 どうやらひょろりとしてやたらテンションの高いこの男、マウンテン龍。

 本名は山田と言うらしい。

『付け加えるなら本名は山田 たつだ』

『ちょちょちょロック!!!?突然俺の本名ばらさないで!!?イメージ崩れちゃうから!!』

『もともとイメージが無いから大丈夫だ』

『ちくしょう!!』

 そしてとなりの大男、ロックと呼ばれているが本名は岩男いわおと言うらしい。とても貫禄のある低い声で淡々と合いの手を入れている。

「まぁいいっですよ!!絶対負けないっですからね!!」

『そうどすな、負けれないどす!・・・ケロちゃんもいるんどすから負けないどすぇ』

『ガルルルルル!』

 ちなみにケロちゃん、今はチワワサイズのままだ。霊能のしつけの賜物によりチワワサイズと真の姿を自由に変えられるようになったらしい。

『プ!!!そんなちび犬が吼えたって怖くねぇよ~だ!俺様が五秒でかたづけてやるぜぃ!!』

『・・・閻魔はん、場所選びのくじはどうするんどすぇ?』

『・・・・そうだな。そこのマスクの女、貴様が引け』

『私!?・・・わかりました・・・[岩場]ですって』


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 勝負部屋の地面が変わっていく。ものの数秒で岩場に変わってしまった。

 岩場と言っても、地面自体は砂利だ。ただし至る所に大小さまざまな岩があり、隠れたり武器にすることが出来る。


 そして第二回戦が始まる―――



『へいへいへいへい!!びびってんのかい!?ま、当然だから落ち込まなくていいんだぜ?だってお前らの相手はこの・・・マウンテン龍様なんだからな!!』

「さっちん、どうするっですか?」

『ケロちゃんを前衛に置いて私たちは後衛に回るしかないとおもうどすぇ』

『オイオイ!俺様を倒す相談かい!?そいつは無駄だぜ!なんてったって俺は世界最強の奥義、クリスタルガイザーの体現者だからな!!』

「さっちん、あのなんとかガイザーって知ってますっですか?」

『知らないどすぇ・・・でもきっとあそこまで言うほどどすから・・・』

「強い・・・んっですよねきっと」

『ガルルルル!』

『ああ当然だ。お前らは見たか?閻魔様の裁きを待っている幽霊どもの列から見える大きな岩が粉砕していたのを・・・アレをやったのは俺だ』

「な!本当っですか!?」

『このクリスタルガイザーで一発で終わらせちまってもいいんだぜ?ホレ?撃っちまうぜクリスタルガイザー?』

「守りきれるっですか・・・[四重結界]!!」

『おお!すごいどすぇ!!』

『いいガードじゃねぇか・・・だがそんなガードで大丈夫か?・・・いくぜ・・・クリスタル・・・』

 そういうとマウンテン龍は構え、拳を高く上げ・・・


『ガイザァァァァァァァ!!!!』


 力強く地面に叩きつけた!!!


「?」

『?』

 ・・・が何も起こらない。

『ふ・・・MP切れか、命拾いしたな』

『山田、そのMPいつになったら溜まるのだ?』

『ロック!!マウンテン龍と!そう呼んでくれよ!!・・・MPか?・・・それはな・・・・俺たちの知らない・・・いつか・・さ』

『もう何年もそう言っているよな』

『ロック!! MP溜まったら凄い強いんだって!!マジだって!!』

「・・・わざわざ結界を作ったのがあほらしく思えるっです・・・」

『おっと?なめてもらっちゃ困るぜ?クリスタルガイザーが撃てなくても・・・お前らみたいなガキと子犬に負けはしねぇよ!!』

『あ、ケロちゃん。元の姿に戻っていいどすぇ』

 そういうとケロちゃんがケロベロスとしての元の姿に戻っていく・・・!!

『いいいい犬がちちちちょっと大きくななななったくらいで』

『山田、動揺しすぎだ』

『グァァァウ!!!!!!!』

『いやいやいや別に別別に怖くなないし?むしろよよ余裕?アアアレくらいの犬ばあちゃんも飼ってたし?』

『山田、俺の後ろに回るな』

『ロック?別にここれは怖いとかそそんなんじゃなくて・・・そう、戦略だよ戦略、戦略的に距離をとるべきだと判断したまでさ!』

 明らかに膝が大爆笑しているマウンテン龍。ちなみに拳法家のように見える服は良く見たらジャージを少し細工しただけのものだ。

『大丈夫だ山田。・・・俺がやる』

『ヘイ!流石は俺の相棒!親友!半身!!ならロックに犬は任せて俺様はあっちのガキどもを始末するぜ!!』

『・・・くるどすぇ!!』

『了解っです!!』

 思わず構える二人、ツキミは陰陽師用のお札を取り出す。


『グゥゥッァアウ!!!』


『む!!』


 ッガシィン!!!!

 取っ組み合う形になった岩男とケロちゃん。

 力は均衡しているように見えて・・・ケロちゃんが少し押されている。

『ふははは!このマウンテン龍様を忘れてもらっちゃ困るぜぇ!!』

「あたしがケロちゃんを支援するからそっちはよろしくっです!!」

『了解っどすぇ!!!』

『ヘイヘイお前みたいな小さい子に何が出来るんだいっ?一撃で眠らしてやるぜ!』

『私の得意技は・・・呪い、・・・一応これでもそこそこの威力は出せるんどすぇ?』

『ちょ待てよ待てよ!?呪いってお前さすがにそれは無しじゃね??男なら肉弾戦で語り合うべきじゃね!!?』

『残念私は女の子どすぇ!![呪殺式 激痛]!!!』

 さっちんがなにやら唱える。

『だから待てったたたたあqすぇdrftgyふ!!!・・・いいいっいいやいたくねーし!べべべつにいたくねーし!!でもちょっと忘れ物したから戦略的撤退だし!!』

 どうやらダメージがいったようだ。戦略的に一時撤退していくマウンテン龍。とりあえずの強敵はケロちゃんと戦っている岩男のようだ。さっちんとツキミはマウンテン龍を後回しにした。

「ケロちゃん!もうちょっと待ってね!!くらえ![陰陽術 火の玉]!!」

 岩男のもとに数個の火の玉が向かっていく。

 だが・・・


『むん!!』


 岩男はケロちゃんと取っ組み合ったままそれを耐え切る。

 しかも全然効いていないようだ。その間もケロちゃんは押されている。

「効いてない!?・・・さっちん!でっかいの準備するから時間稼いで欲しいっです!!」

『[呪殺式 麻痺]!!ツキミはん!了解どす!頼みますどすぇ!!』

『っむ!?・・・むぅ!!』

 岩男の体が少し動かしづらくなったようだ。ケロちゃんが善戦している。

『グアガァァァ!!!』

『ナイスどすぇケロちゃん!![呪殺式 針]!!』

『・・・ッ!!?む!!』

 岩男が若干ひるんだ。[呪殺式 針]の効果は体中を針に刺された感覚がするというえげつないもの。さすがの岩男もこれには効いたようだ。

『ロック!?っち!これは使いたくなかったが・・・使うぜ!!クリスタルガイザーを超える秘奥義!』

『む!山田やめろ、それはまだ未完成だろう』

『でもよぅ!今やらなきゃいつやるってんだよ!ヘイ行くぜくらえ!!?』

 そうして拳を高く掲げて構えるマウンテン龍。

『・・・っく!まずいどすぇ!!』

『グァルルルル!!!!』

『もう遅ぇ!!微塵に砕けろ!!・・・アルティメット・・・ッ!!・・・ガイザァァァァァァアアアアアア!!!!!!!』

 そして腕を思いっきり振り下ろすマウンテン龍!!


『間に合わな・・・!!』

『グガァァァ・・・!!』


 ・・・シーン。


 何も・・・起こらない。

『やっぱ未完成じゃだめか。多分アレだ。MP足りないんだきっと』

『ビビッて損したどすぇ!!![呪殺式 衝撃]!!』

『っちょまぐへぇ!!!』

 さっちんの呪いでダメージをくらうマウンテン龍。実に情けない。

『いや本当だったら撃ててたし!!ただちょっと・・・あの・・・その・・曜日が悪かっただけだし!!』

 はたして技を出すのに曜日は関係あるのだろうか。

「出来た!さっちんさん!!いつでも撃てるっです!!」

『分かったどす!!ケロちゃん!離れるどすぇ!!』

『ガルルルルゥ!!』

『む・・・!!させぬ!』

 岩男は危険を察知し、それを止めるべく行動に出る。

『[陰陽術 奥義 焔の神龍]!!』

『むぅぅぅ!!![大 地 震]!!!!』


 ズドンッ!!!!!!!


 すぐさま岩男が地面を大きく揺らしツキミを止めようとするも遅く、すでにツキミの技は発動していた。それはまるで炎の化身、メラメラと燃え盛りながらも威厳のある龍が岩男に突進する。


『むむむぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!』


 ・・・衝突の瞬間、岩男は全身に力を入れ・・・龍をその身で受けきった。

 ・・・だが、龍の炎は到底耐え切れるようなものではなく、全身を焦がしつくす。

 ・・・だが・・・龍が消えた後、身体中を黒く焦がしながらも彼は立っていた。

「なっ!これでも倒れないっですかっ!?」

『………いや、ツキミはん。良く見るどすぇ』

 そう言われてツキミが目を凝らすと・・・気づいた。

 岩男が立ったまま気絶している事に・・・

 そう、彼は・・・最後まで地に膝をつける事なく戦い抜いたのである。

「か・・・勝った・・・っです・・・」

『グルル!』

『倒した・・・どすぇ』

 二人と一匹は、壮絶な戦いに息を切らしていた。だが、そこに不運は起こった。

 さっちんの所にだけ・・黒い影。それは見上げると・・・大きな岩のかけらのようだった。

 そう、先ほどの岩男の技で吹き飛んだ岩のかけらが・・・落ちてきたのだ。

『え?』

 勝利を確信していたゆえの油断か、それとも壮絶な戦いの後の疲れか・・・

 さっちんの体は、突然の事態に・・・動かなかった。

 だが、もうだめだとさっちんが思うその時、確かに音を聞いた。

 それは、パリンと言うたわいの無い音。

 ・・・・窓の割れる音。


『ふぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!さっちーーーん!!!!』


 さっちんが気づいたときには、落ちてきた岩は自分の隣にあり、自分は・・・・蘇我に助けられていた。

『大丈夫かさっちん!!怪我は無いか!!?』

『・・大丈夫・・・どすぇ。ありがとう・・・どす』

「さっちん!!大丈夫っですか!!?」

『ガルルルル!!!』

『良かった・・・さっちんが大怪我をするところだった・・・!!』

「まぁでも・・・勝ったんっですし、良かったじゃないっですか!!」

『そうどすな、勝てたんどすぇ・・・』

『何を言う、貴様らの負けだ』

 勝ちムードになっていたところに、閻魔が現れる。

「なんでっですか!!」

『確かに勝ったどすぇ!!』

『貴様らは片方しか倒してないではないか・・・』

『ヘイ!!まだまだこのマウンテン龍様が残ってるんだぜ!?まぁ俺様に勝つなんて無理だがなぁ!!』

「・・・なら!今から倒せばっ!!」

『もう遅い。貴様らは一対一のルールを破った。負けを認めろ』

『あ・・・僕が手を出したから』

「く!!・・しかたないっですね・・」

『悔しいどすぇ・・・ッ!!』

 勝ちから一転して負けになってしまった二回戦目。

 そのくやしさは計り知れない。

『大丈夫だ。さっちん、ツキミ、ケロちゃん。・・・三回戦は僕が出る。絶対勝つよ』

『・・・約束・・・どすぇ?』

『ああ、約束だ。紳士は約束を破らないからね』

「がんばってくださいっですよ」

『グルルルル』

 いったん勝てたかのように見えた二回戦。

 その実はまさかの負け。

 閻魔暇つぶし五戦勝負、現在一対一の同点である。

 次の試合は蘇我入鹿、・・・はたして紳士は勝つことが出来るのか。



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