第十二話 霊能太郎と小次郎の活躍
前回のあらすじ!!
赤青さんと佐悟さんは回転寿司のレーンに戸惑いつつもお好み焼きをソースをかけずに食べきった!!
だが暗黒超大魔王は満腹で動けないところを卑劣にも狙い、フランスパンをアンダースローで投げてきた!!
しかし二人は得意の反復横とびで避けることに成功したのだ!
はたしてふたりは暗黒超大魔王を倒すことができるのか!!?
まぁ嘘だが。
そんなこんなで霊能一行は閻魔大王がいる場所、閻魔亭の前までたどりついた。
「ようやくここまで来たなぁ・・・さて、閻魔さんに会って現世に早く帰るか」
『そうだな、闇鍋が異臭を漂わせてないか心配だもんな』
『近所の人が異臭に気づいて通報したら大変どすなぁ』
『大丈夫でござる。地獄と現世の時間の流れは違うから生き返っても死んだときからたいして時間がたっていないはずでござる』
「そうなんっですか?知らなかったっですねぇ」
『ところでみんな・・・、さっきから門番の人がこっちをずっと睨んでいるのだけど・・・』
第十二話 霊能太郎と小次郎の活躍
閻魔亭は閻魔の住む場所だ。
ゆえに警備は万全だ。
門番が二人、門の左右に立っている。顔が似ている所から双子のように見える。
『オイ貴様ら』『ここに何の用か』
「閻魔さんに会いたいんだが通してくれるか?」
『様をつけんか』『馬鹿者どもが!!』
『そうだぞ霊能、閻様魔さんに失礼だろうが』
『つける所違わないそれ!?言いづらいわよ!?』
『馬鹿にしとるのか!!』『貴様ら!!』
「閻魔様に用があるんっです、会わせてください」
『アポは取ったのか?』『無ければ入れることは出来ん』
『困ったどすなぁ・・・今からアポを取ったらいつはいれるんどすか?』
『200年から』『300年後だな』
『それは困ったでござるな・・・どうしても駄目でござるか?』
『駄目だ』『駄目だ』
「なら、無理やりでも入れてもらうしかないか・・・」
霊能が指をバキバキと鳴らす。
そして門向かい歩き出したその時、どこからか二メートルはある大男が現れた。
『我が閻魔亭に腕っ節だけで乗り込む気か?』
『閻魔様!!』『閻魔様!?』
「あんたが閻魔さんか・・・頼みがあるんだが」
『断る。貴様らの頼みなど聞く気は無い。・・・と普段なら言う所だが・・・』
『言う所だが??』
『貴様らは腕に自信があるようだ。どうだ?一つゲームをしようじゃないか』
「・・・どんなゲームっですか?」
閻魔と呼ばれる大男はニヤッと笑いながら言葉を続ける。
『なぁに簡単だ、我を楽しませろ。暇だからな。ルールは簡単だ、貴様らと我の部下、どちらが強いのかを競う・・・どうだ?ゲームに勝てば頼みとやらを聞いてやろうではないか』
『・・・人数が違いすぎでは無いでござるか?』
『ふん、そうだな・・・五試合だ。五試合での一対一真剣勝負・・・当然乗るだろう?』
『待ってくれ、そこの少女二人・・・さっちんとツキミだが・・・その二人は戦いのメンバーからは除外してくれないか?』
『蘇我はんっ!?』
「蘇我さんっ!?」
『断る。この場に居るのだ。試合には出てもらう・・・だが特例だ。その二人とそこの犬を合わせて[一人]としようじゃないか、文句はあるか?』
「こ、こちらが負けた場合はどうなるっですか!?」
『そうだな・・・未遂とはいえ閻魔亭に不法侵入しようとしたんだ・・・無事で済むと思わんことだな』
『霊能君・・・』
「乗るしかないよくっちー、・・・OK!その勝負乗った!!!」
『そうか・・・ならば閻魔亭に入れ。・・・我を退屈させるなよ?』
こうしてとりあえずは閻魔亭に入ることができた霊能一行、だが閻魔に生き返らせてもらうには勝負に勝たなくてはいけなくなった。
一行は緊張しながらも閻魔亭の廊下を歩く・・・。
『あ、高級そうな壺だ』
『蘇我はん・・・壊したら相当な弁償金額どすぇ・・・気をつけるどすぅ』
『あ、引き出しにやたらビー玉が入ってる』
『何勝手に空けてるのよ・・・』
「蘇我ー、こっちには高そうな手鏡があるぞー」
『霊能君も便乗しない!!』
「緊張感がもう無いっですねぇ」
『まぁ緊張してたら勝てる戦いも勝てないでござるよ』
「そういうもんっですか・・・」
ここで戦うのであろう部屋についた一行、言うならば小さな体育館くらいの部屋である。障害物はほとんどない。
『さて・・・ルール説明をする。妨害無しの真剣勝負、死ぬか気絶、もしくは降参した瞬間に勝敗がつくものとする。』
「ああ、分かった」
『さらに、戦闘場所はくじでどんな場所にするかを決めるぞ。腕のいい部下がいるのでな』
『この部屋じゃないんどすか?』
『まぁ見ていれば分かる。では我が部下の一番手はムラサメだ。負けるなよ?』
その言葉にあわせたように閻魔の後ろから男が現れる。
腰にやけに長い刀を差した男・・・ムラサメ。
『御意、閻魔様』
その姿を見て霊能チームからも一人の男が前へ出る。
『相手も刀のようだし拙者が行くでござるよ』
同じく腰に刀を差した着物の男・・・小次郎である。
『ではステージ選びのくじを・・・そこの小娘、貴様に引くことを許そう』
「あ、あたしっですか!?・・・わかりましたっです・・・」
差し出された箱に手を突っ込み紙を一枚引く。そしてその紙を開くと・・・[砂浜]と書かれている。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
大きな音とともに部屋の地形が変わる。
『な!何よこれ!!?』
『喚くな。我が部下の魔法に過ぎん。厳正なくじの結果だ、この場所で戦ってもらおう』
そういうと閻魔は部屋から出て行く。
霊能たちもその後ろをついていき、隣の部屋へと移動した。
隣の部屋はさっきまで居た勝負部屋の中がモニターで見れるようになっており、窓からも覗けるようだ。
そして小次郎の戦い、負けられない第一回戦が始まる―――
『よろしく頼むでござるよ』
『・・・』
『無口でござるなぁ・・・』
場所は砂浜でござるか・・・足場が悪いでござる。これでは踏み込みにあまり力が入らないでござるよ・・・
だがそこは相手殿も同じ、同じ侍としてこの勝負負けられないでござるなぁ。と、いうか拙者そもそも霊能殿たちと会ってからまだ誰とも戦ってないでござる。・・・これはいい所を見せるためにも負けられんでござるな。
カチャリ、ムラサメは鞘から脇差サイズの刀を取り出して胸の前に構え、小次郎を見ている。
そして、一気に間合いを詰めてくる―――!!!
キィン!!
『間一髪でござるな』
危ないところでござる・・・想像以上に速かったでござるよ。
こんな砂浜の足場の悪いところでこの速さ・・・
簡単には勝てそうにないでござるな・・・ッ!
現在の距離はお互いの間合いギリギリ、一瞬の動きが全てを決める。
と、今度は小次郎が攻める。
『早々に決めるでござるよ・・・ッ!』
軽く一歩前へ出て刀を振る、キィン!とそれを弾かれる。
それもそのはず、ムラサメが使う脇差サイズの刀、小太刀と呼ばれるそれは攻めよりも防御に向いた小回りの聞く刀なのである。
それを胸の前で構え、いつでも防御できる姿勢で居る。
続けて足を狙い刀を振る、キィン!これも弾かれる。
ならばと右胴を狙うフリをし、右足を狙うも一瞬反応に遅れたようだが弾かれる。
小太刀は小回りが効く分、一瞬反応に遅れたくらいのことならば取り返せるのだ。
『これならどうでござるか!!』
そう言って一歩間合いの外に出ると―――
『幻影流、神速!!』
キィン!!!
今までよりも一際大きく甲高い音が鳴る。どうやらガードされたようだ。
『やるでござるな・・・』
まさか弾かれるとは思わなかったでござる・・・!!
[幻影流、神速]は拙者の技の中でも最速の剣技、しかしこの足場では踏み込みが甘かったでござるか・・・しかもこのような足場では体力も多く奪われる・・・
正直、キツイでござるなぁ・・・
『ぬるいな、反吐が出る』
ムラサメが言う。
そしてムラサメはまた一気に間合いを詰めて来た―――!!
キィン!!
『そのくらいなら守りきれるでござ』ブシュッ!!
『だからぬるいと言ったのだ』
小次郎の腹に小太刀が突き刺さる。
『ぐっは・・・何でござるか・・・ッ!?』
小次郎は攻撃を弾ききったはずだ。それは音からも間違いないことである。
だがしかし腹を刺された。それは何故か・・・
その答えは単純だった。
『そうそういい忘れていた・・・私は二刀流なのだよ』
そう言ってニヤリと笑うムラサメ。二つの小太刀、片方にはべっとりと小次郎の血がついている。思えば確かに不自然だった。
何故・・・わざわざ小太刀一本で戦うのか。
何故・・・ずっと小太刀を見せ付けるように胸の前で構えていたのか。
何故―――鞘が不自然に長かったのか。
『・・・小太刀二刀流でござる・・か。油断したでござる』
『戦場では一瞬の油断が死を招く。どうする?今なら降参を認めるぞ?』
『・・・悪いが、拙者も負けられないのでござるよ』
そう言った直後に前に出て刀を振る。キィン!さっきよりも痛みで剣速が落ちた上に、敵の小太刀は倍に増えた。弾かれるのも当然である。
だが小次郎は諦めない。
キィン、キィン、キィンキィン!!
攻める、攻める、刀を振る。愚直にも小次郎は刀を振り続ける。
だが足場も悪く、腹から出血した状態でそんなことをしていたらどうなるか・・・もちろん、体力が無くなる。事実、小次郎の体力は目に見えて減少している。
『諦めろ、貴様では勝てん』
『・・・それは、やってみなくては分からんでござるよ!!』
キィン!!!!!
大きく音を鳴らし、いったん距離をとる。
小次郎は大きく肩を揺らし、誰が見ても疲れていると分かる。
『長引かせても拙者には勝ち目が無いゆえ・・・これで決めさせてもらうでござるよ』
『いいだろう、死んで後悔するなよ?』
にらみ合う両者、静寂が降りる部屋。
一瞬の動きが、勝敗を左右する。
ダッ!!と小次郎が間合いを詰めた。
『本当に反吐が出るな。馬鹿の一つ覚えか』
だがそれを読んでいたムラサメは小次郎の心臓に狙いを定める・・・その読みは見事に当たり、小次郎の心臓を小太刀が貫いた・・・ッ!!
『なっ!?』
・・・はずだった。
ムラサメの小太刀は正確に小次郎の心臓を貫いた・・・いや、正しくは小次郎の心臓があるはずの空間を貫いたというべきか。
困惑したムラサメの耳元に、声が響く。
―――そうそう拙者もいい忘れていたでござる
実は拙者、ぬらりひょんなのでござるよ―――
『幻影流奥義、籠目籠目』
ザンッ!!
前から来たはずの小次郎が、気づいたら後ろにいて切られる。
正面から、気づけば後ろの正面へ。認識をごまかすことがぬらりひょんの得意技。
『グハッ・・・油断・・・した・・・』ズシャァ!!
『戦場での油断は、負けにつながるのでござるよ。覚えておくといいでござる』
何時だったかのムラサメのように、だがしかし邪気の無い顔でニヤリと笑う。
第一回戦勝者、小次郎
そして試合が終わり、小次郎が霊能たちのいる部屋へ向かう。
その時、誰に聞かせるでもなくぼそりと、小次郎は呟いた。
『今回……ふざける余裕が無かったでござるな…笑いが足りんでござるよ。真剣にやるのも考えものでござる』