第十一話 霊能太郎と地獄巡り
「・・・ごめん蘇我、俺地獄舐めてたわ」
『・・・僕もだよ。早く逃げよう。吐きそうだ』
『拙者・・・お先に離脱するでござるよ!!』
「小次郎が逃げやがった!!」
『待って小次郎!!僕も連れてってぇぇぇぇ!!!!』
まずは、地獄と言う場所の説明をさせていただいこう。
地獄は広い。その広い地獄は場所ごとにゾーンが決められている。具体的には針山地獄ゾーンとか血の池地獄ゾーンとか。
そして今彼らがいるゾーンは・・・
濃厚な薔薇が咲き誇る。
一部の男たちにはむしろ天国とさえ呼ばれる場所・・・
―――男色地獄ゾーンである。
第十一話 霊能太郎と地獄巡り
「し・・死ぬかと思った・・・」
『ああ、・・・アレを見続けるなら死んだほうがましだ・・・』
『いや地獄にいる時点で拙者たちみんな死んでるでござるよ・・・』
全力で走って男色地獄を抜けてきた三人、とりあえずは情報収集できる場所を探しているのだが・・・さすがにホモたちに話を聞く勇気は無かった。
だが、逃げている途中で[居酒屋、この先右折]の看板を見つけたのでそっちに走ってきたのである。
そんな彼らは、看板に書いてあった通り、居酒屋を見つけた。
「居酒屋鎌足か・・・」
『拙者のどが渇いたでござる・・・』
『とりあえず入ろうか』
カランカラーン
『はいいらっしゃい』
店内に入ると、見覚えのある爺さんが働いていた。
「あれ・・・」
『・・・!!?鎌足様!!鎌足様ー!!』
人名を叫びながら店の奥に入っていく翁。
『鎌足って・・・まさか・・・』
『・・・嘘でござろう・・・そんなことが・・・』
「いや小次郎、お前は知らんだろうが」
しばらくすると奥から一人の男が出てきた。
そう前に悪魔に魂を売り渡し、狂ったあげくに蘇我に魂ごと殺されたはずの中臣鎌足である。
『やぁ、久しぶり・・・って所かな、蘇我』
『・・・なんでだ?なんで居るんだ?お前の魂は・・・』
『いやそれがね、僕の契約していた悪魔覚えてるかい?』
「・・・たしか・・・明日もデブですだっけか?」
『いやアスモデウスね、まぁ今日がデブだったらそりゃ明日もデブのままだよ。ああ・・・ワードシフトしてしまった。で、その悪魔に気に入られたらしくてね、魂が壊れる前の状態に戻してくれたんだよ』
『奇跡・・だな。鎌足ぃ・・・良かったなぁ・・・』
『それでやることも無いから居酒屋を経営しているでござるか』
『うん、居酒屋経営を裏で牛耳るのがアスモデウスの夢だったらしくて手伝ってるんだ。一応店長は僕だよ』
『微妙な夢だな・・・。人外を殺すって意気込んでたのはもういいのか?』
『うん、冷静に考えたらそこまで殺したかった訳じゃないしね。その場のノリで契約したら後に引けなくなっただけで』
「えぇぇ・・・・・」
『ところで蘇我たちはどうしたんだい?みんなして地獄に来て・・・』
『ああそれなんだがな、かくかくしかじかってな訳で閻魔亭の場所知らないか?』
『それなら簡単だよ。ほら、地図あげる』
そういって地図をポケットからだして渡す鎌足、こいつ普通にいいやつじゃねぇか・・・
霊能たちは、地図を手に入れた!
「よし、目指すは閻魔亭だな!行こうぜ!!」
『行くでござる』
『おう、じゃまたな、鎌足!機会があったらまた会おう!!』
『うん、じゃあねぇ~』
そんなこんなで閻魔亭目指して歩く三人。地図も手に入れたし鎌足と会えたしでご機嫌である。
さて、閻魔亭に向かうにはさまざまな道があるが・・・どうしてもいくつかのゾーンを通らなくてはいけない。今も、彼らは一つのゾーンを抜けた所である。
『針山地獄ゾーンが・・・』
「反省はしてるが後悔はしていない」
『見事なほど禿山地獄になったでござるなぁ・・』
そう、針の山がつっるつるになってしまったのである。
原因はもちろん霊能、針が霜柱みたいで踏むといい感触がする!と片っ端からへし折ったのである。しかもそれにつられて小次郎もその針を片っ端から斬っていた。さらに蘇我が折れた針をどんどん山の下に放り投げていくというよく分からない作業をしていたのである。
本人たち曰く、楽しかったらしい。
・・・・これが後に地獄に伝わる、針山の悲劇である。
「まぁ過ぎたものはしかたない!次は血の池だな!!」
こうして悲劇は広がっていく―――
一方こちらはさっちんたち・・・・
ケロベロスのケロちゃんに乗って地獄まできたようです。
しかしケロちゃん、地獄に来るのは簡単でもそうほいほいと地獄からは出れないようで・・・前に出てきたのは、地獄を揺るがす大事件が起きた時の騒動にまぎれてどうにか現世に出たそうだ。
『霊能はんと蘇我はんはどこにいるんどすかぁ?』
『見つけた後どうやって地獄から出るかも考えないとねぇ・・・』
「ま、なんとかなるっです!!」
『グルルルル・・・!!』
ついさっき彼女らは地獄についたのだが・・・一番最初についたゾーンは針山地獄だった。
『ガウッ!!??』
『・・・つるんつるんどすぇ・・・』
『へし折られてるわね・・・』
「霊能さんたちがここを通ったに違いないっですね・・・」
『まぁ・・・否定できないどすぇ・・』
『っていうか確定よね。こういう壊れたゾーンをたどってったら会えるんじゃないかしら?」
「名案っですねそれは!!行きましょう!!」
血の池地獄についた彼女たち・・・
『グガッ!!?』
『酷いどすなぁ・・・』
『色が緑色ね・・・』
「しかもいい香りがするっです・・・」
『間違いなく入浴剤ね。バスロマンだわ』
そこには適温になった池と、のんびり入っている他の幽霊たちがいた・・・彼女たちはそこの幽霊に霊能たちの事を聞き、前へ進む・・・
極寒地獄についた彼女たち・・・
『ガァ・・』
「氷像があちらこちらにあるっですね・・・」
『あ、これネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないどすか完成度高けーなオイ』
『さだこちゃん!!?どうしたの!!?』
「寒さでさっちんさんが壊れたっですぅぅぅ!!」
釜茹で地獄についた彼女たち・・・
『シチュー・・・ですね』
「おいしそうにぐつぐつ煮込まれてるっです」
『ケロちゃん、食べるどすぇ』
『ガウ!!?・・・ペロ・・・ガウッ!!ガガウッ!!』
「どうしたんっですか!!!?」
『うまガウ・・・』
『今少ししゃべらなかった!!?』
『そっかーおいしいどすかー』
「良かったっですねぇー」
『スルー!!?二人ともスルーなの!!?』
灼熱地獄についた彼女たち・・・
『あっついどす・・・けど・・・』
『道にサンバの衣装が落ちてるわね・・』
「腰みのまで・・・いったい何をしてたんっですか・・・」
『あ、そこの岩に目玉焼きを作った跡が残ってるどすぇ・・』
『地獄でも楽しんでるようで何よりだわ・・・』
そんなこんなで歩いていると、霊能たちのような影を遠くからだが見つけることが出来た。
なにやら三人いるようだがそれはまぁいいだろう。
『霊能はーん!蘇我はーん!!』
さっちんが大声で呼びかける。
だがその瞬間
『あの二人になにか用事でござるか?』
と、真後ろから声をかけられた。
いつのまに背後を取られていたのかは分からない。もしこれが敵だったら殺されていた。
『・・・どちらさまどすか?』
『拙者でござるか?・・・拙者は小次郎でござる。でもまずは・・・この鎌をどけて欲しいでござるよ』
そう、さっちんの背後を取った小次郎の首には鎌が添えられていた。もちろん、その鎌の持ち主はマスクをつけた女。
『さだこちゃんから離れなさい。不信な動きをしたら殺すわ』
くっちーである。
『危害を加える気はまったく無いでござる!!ほんのいたずらだったでござるよ』
「心臓に悪いいたずらはやめるっですよ」
「あれ?みんなも地獄に来てたのか、何?みんな死んだの?」
『馬鹿、霊能を迎えに来たんだよ。僕が咲きに来て後からみんなが来る予定だったんだよ』
『霊能はん、蘇我はん、無事でよかったどすぇ』
『で、この男は誰かしら?』
「そいつは小次郎、俺の友達だ!」
『そうでござる、誰かが拙者たちの後ろをついて来ていたからいたずらがしたくなっただけでござるよ』
『そう・・・霊能君が言うなら信用はできそうね』
『いや本当にすまないでござるよ』
『許しますどすぇー』
「簡単に許すんっですねぇ。ま、いいっですけども」
ひと段落ついたところで、地図を見ながら蘇我が言う。
『閻魔亭にいるであろう閻魔に会って、みんなで現世に帰るぞ!』
「「『『『『おおー!!(バウッ!)』』』』」」
実はもう閻魔亭のすぐそばまで来ている。
あとは、閻魔に会って現世に帰れるようにオハナシするだけである。
だが果たしてそううまくいくのか?それはあってみないことには分からない。
おそらく・・・・閻魔は一筋縄ではいかないだろう。