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化け者交流会談記  作者: 石勿 想
第一章
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第十話 霊能太郎と地獄の入り口

 


「川だ・・・」


 今現在、霊能は川にいる。正確には川岸というべきか。

 霊能の周りでは子供たちが石を積んでいる・・・。


「どこだ・・・ここ・・・?」


 思い出せばさっきまで自宅で闇鍋をしていたはずなのだ。

 それがなぜか今では川岸にいるのである。


 ・・・最後の記憶はちくわを食べたこと・・・


 あああれが原因か・・・と霊能は納得する。

 ようするにここは三途の川と呼ばれる場所で・・・自分は・・・死んだのだ。



 第十話 霊能太郎と地獄の入り口



「うっはー死んじゃったかー俺。死後の世界って本当にあったんだなー」

 気楽なもんである。

 だが慌てていてもどうしようもないのも事実だ。川を渡るための船も見る限り今はいないようだし・・・



『ひとつつんでは父のため・・・ふたつつんでは・・・』



 近くにいた子供の石の山作りを手伝うことにした。



『霊能どこいったかな・・・』


 一方こちらは霊能を追って三途の川に来た幽霊、蘇我入鹿である。

 蘇我は幽霊なので一方通行ではあるが黄泉の国へは行くことができる。まぁどうにかして霊能をつれて帰る気満々であるが・・・

『まだ川にいるとは思うんだけどなぁ・・・』

 と、そのとき少し離れたところから声が聞こえてきた。

『凄ぇー兄ちゃんすげぇー!!』

『わーっすっごーい!!』

「ふははは!!俺にかかればこんなもんじゃーい!!」

 ・・・そこには石でサクラダファミリアを再現している霊能がいた・・・。

『凄いってレベルじゃねぇよ!!!』

「お、蘇我じゃん。お前も死んだのか?」

『俺はもともと死んでるけどな』

 ひとまず合流した二人、だが二人が話しているときに事件は起こった。


 ガシャン!


 霊能たちの近くで起きた音。それは紛れも無くサクラダファミリアが崩れた・・いや崩された音だった。

『すまんな、ワシも仕事なんじゃ、悪く思わんでくれ』

 鬼がいた。

 体格のいい鬼が子供たちの積んだ石をかたっぱしから崩していた。当然霊能のサクラダ以下略を崩したのもこの鬼だ。

「OKおっさん、芸術ってのを拳で教えてやる」

 霊能はせっかくの作品を壊されたことに怒ったようだ。

『いや落ち着け霊能、おっさんの言うとおりだ。ここで石を積んだお前が悪い』

「なんでだ?」

『ここで石を積むのは生前の罰らしいぞ。鬼が壊すから永遠に完成しない石の塔を作り続ける・・・霊能が邪魔したら罰にならん。最悪もっとキツイ罰に変わるかもしれない』

「・・・どうしようもないのか?」

『ああ・・・どうしようもない。その鬼のおっさんも仕事だ。ホレ、さっさと帰るぞ』

「どうやって帰るんだ?帰り道俺知らないんだけど・・・」

『そうだな・・・どうしよう』

「知らないのかよ・・・あ、鬼のおっさん、帰り道知らない?」

『ワシか?普通は帰れんと思うが・・・なんだ?そんなに生き返りたいのか?』

「ああ、未練バリバリだ」

『僕もまだまだ楽しみたりないね』

『そうか・・・ならば閻魔様にでも聞いてみるといいじゃろう』

「おっさんいい人・・・いや、鬼だな。ありがと!おっさんの名前を教えてくれるか?」

『ワシの名は・・・帝鬼ていきと言う。まぁもう会うことも無いじゃろうが・・・元気でな』

「ああ、おっさん!俺は霊能だ!じゃ俺たちは行くよ、また会おうな!」

『次に会うときは本当に死んだときになるけどな。僕は蘇我だよ。では閻魔様のところに行ってきます』

 こうして鬼の帝鬼と別れた霊能たちだが閻魔のところに行くには川を渡らねばならない。

 なのでしばらく船着場で待っていると小船がこちらに近づいてきた。

『すいませーん、乗せてくださーい』

『はいよ、六文ね』

「げっ・・・」

『なんだい文無しかい?そんなやつらは乗せれないねぇ』

 当然二人とも六文銭など持っていない。そして泣く泣く船に乗ることを諦めた・・・。

『どうする・・・泳ぐか?』

「服濡れるしな・・・そうだ、蘇我、背中に乗れ」

 そうしておんぶのかっこうになる霊能、何がしたいのかは分からない。

『よっと・・・それで、どうするんだ?泳がないんだろ?』

「泳いだら服が濡れるからな・・・走る」

『は?』


 ズダダダダ!!!


 こうして蘇我をおんぶした霊能は川を走った。

 無論、水面を・・である。

『ええぇぇぇ!!!つくづくぶっとんでるなオイ!!』

「到着!」

『・・・霊能といると退屈しないよ』

「それはほめ言葉だな」

 なんだかんだで川の向こう側についた二人、とりあえず閻魔を探さなくてはならない。

 閻魔といえば死者の捌きをしていることで有名である。そして二人の前には先が見えないような死者の列がある。

「まさか・・これ全部裁き待ちか!!?」

『・・・多分な』

『・・・おそらくそうでござろう』

 流石にこんなのを並んでいる暇は無い。

 だが列に横入りしたら流石に話を聞いてくれないだろう。

 閻魔といえば裁き以外にも地獄の管理をしていることでも有名だ。つまり流石に四六時中捌きをしてるわけでもあるまい。地獄に監視に行っていたりしているときに見つけて話を聞くほうが並ぶより楽だ。

「並んでもいられないし・・・地獄に行ってみようぜ、そこで閻魔さん探そう」

『そうだな、さっちんたちも地獄に行くって言ってたし』

『地獄でござるかぁ・・どんな所なのでござろうか・・・』


 霊能と蘇我に沈黙が走る―――


『霊能、少し気になることがあるんだが・・・』

「奇遇だな、俺もだ」

『気になること?なんでござるか?』

「『誰だお前はぁぁぁ!!』」

 そう、さっきから当たり前のように会話に参加しているやつがいるのである。さりげなく同行しようとしている男。あまりのさりげなさに霊能たちもノリツッコミをしてしまうほどである。

『拙者でござるか?やだなぁ冗談は止めて欲しいでござるよ。まるで拙者のことを知らないみたいに言うのは心が痛むでござる』

「いや誰だよ」

『事実知らないよ』

『酷いでござる・・・同じ釜の飯を食べた友であるのに・・・』

「『食った覚え無ぇよ』」

『まぁ冗談でござる。拙者はぬらりひょんの小次郎というものでござる。あ、同じ飯を食べたのは本当でござるよ?』

 霊能たちの前にいるこの男、見た目は青い着物を着て、帯刀している。

 ぶっちゃけ[拙者武士でござる]を地で言っている。まぁちょんまげではないが。

 だがぬらりひょんだというのに頭は長くない。ぶっちゃけ武士の格好でなければ一般人と見分けがつかないくらいだ。

 歳は霊能たちよりも年上・・・22歳くらいのように見える。ちなみに余談だがくっちーも見た目は22歳くらいである。オイコラそこ、嘘じゃないぞ、マジだ。


「小次郎か・・・俺は霊能だ。よし友達になってくれ」

『ぶれないなお前!!まぁいいや。僕は蘇我、同じ飯ってのはさすがぬらりひょんとしか言えないね。よろしく小次郎』

『ああよろしくでござる。拙者はぬらりひょんであるがゆえにどこにでも現れる存在、時間も持て余しているし閻魔に会う旅に同行させてもらうでござる』

 こうして思わぬ形で友達が増えた霊能。

 これだけでも地獄にきた意味があるというものである。

「時に、ぬらりひょんの能力ってどんなもんなんだ?」

『そうでござるな・・・認識をずらす・・・それが一番の能力でござるよ』

『それってどのくらいなもんなの?』

『実演したほうが分かりやすいでござるな、霊能殿、拙者に対して小石を投げてもらえるでござるか?』

 そういって霊能たちから少し離れる小次郎。そして振りかぶって小次郎の胴体狙いで石を投げる霊能。だが小次郎には当たらず、石は勢いを衰えずに飛んでいく。

「おお!!すり抜けた!!!」

『すり抜けたように見えるなら成功でござるよ。本当は石より少し右に体があっただけでござる』


 ズドンッ!!!ガラガラガラッ!!!!


 霊能の直線上にある遠くのとても大きな岩が崩壊した。

『・・・流石にアレが当たってたら拙者トマトになってたでござるよ・・・』

 冷や汗だらけの小次郎、本当に危ないところだった。

『霊能殿や蘇我殿はなにか特別な能力をお持ちで?』

「俺は腹筋を鍛えてるだけの一般人だぞ?」

『嘘だな、霊能が一般人ってのは認めん。さっきの投げた石が証拠だ』

「なにをいう、蘇我だって腹筋を鍛えればあれくらい・・・」

『出来てたまるか、・・・そうだな、僕は長いこと幽霊やってるし、ポルターガイストくらいなら出来るよ』

「マジで!!?知らんかったんだけど!!!」

『普段やらないしね、ホラ』

 そういうと足元の小石が浮いた。

『どのくらいのことが出来るんでござるか?』

『僕の腕力分くらいの物しか持ち上がらないよ、持ち上げたまま維持するのも大変だしね』

「へぇ~・・・腹筋鍛えたら俺にもできるかな」

『お願い、止めて。僕の数少ない見せ場を取らないで』

 実際に霊能なら出来てしまいそうだから蘇我もマジになって懇願する。せっかくのアピールポイントをそう簡単に潰されてはかなわない。まぁ霊能には霊力だとか魔力だとか言われるものがまったく無いから絶対に出来ないはずなのだが。・・・出来ないよね?

 少なくとも霊能は直接触らない限り力ずくってのも無理である。逆に直接触れるものならなんでも出来そうだが・・・ちなみにゴンザレス(盆踊りが得意)なら出来る。

 そんな話をしつつ地獄にいくために列の先頭を目指して歩く一同。そして思ったより早くに先頭についたが閻魔はいない。代わりに閻魔代理と書いた札を立てている鬼が裁きをしているようだ。

「そこの閻魔代理ー、俺らこっちの扉から地獄行ってくるわー」

『なぬ!それはどういうことだ!!』

「いやぁ閻魔さん探してるんだけどここに居ないみたいだから地獄探そうと思って」

『そういうことか・・・閻魔様なら今地獄の奥にある家、[閻魔亭]で休んでおられるだろう。・・・あのサボり魔が・・・』

 ずいぶん物分りのいい鬼である。

 イライラしているようだしストレスで正常な判断が出来ていないのだろうか。なにか最後につぶやいたようだが、ひとまず霊能たちの目的地は決まった。

 地獄の奥にある閻魔亭、そこを当面の目的地にする。そこで閻魔に現世へ帰れる方法を聞くことにしよう。

「じゃ,行ってくるー」

『ああ、ついでに閻魔様に仕事するように言ってくれー。・・・あと適当にボコしてくれ』

 また何かつぶやいたようだが霊能たちには聞こえていない。はたして霊能たちはこれから地獄で何を経験するのか、閻魔に会うことは出来るのか。

 新たな仲間、小次郎とともに地獄への道を進む一同であった。



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