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温室に行った時、一人で隠れて過ごせるオアシスみたいだと感じた。
ヴァンレックと話せるようになって、それは事実だと知った。休める時には本を持ってあそこに行っていたそうだ。
なんだか自分の家なのに、落ち着かなくて使用人に背を向けている気がした。
始めの頃は使用人と距離を置くタイプなのだろうとも考えたが、一緒にいてそんな感覚はない。
むしろ、暖かな空気でアリムに接している時、ヴァンレックは穏やかな表情を見せていることが多い気がする。
(子供への接し方も不慣れだと思ったら、家族や同僚以外には人見知りするタイプでもあるのかしら)
少し――寂しい気がする。
もしアイリスがいなくなって、そしてアリムが成長して一人での行動が増えた時、使用人たちとの間に壁があるヴァンレックは、寂しくならないだろうか。
みんなと仲良く、なんてアイリスが前世の感覚を持っているためかもしれないけれど。
(でも、彼が寂しく感じるのは、嫌だわ)
たまに目につくヴァンレックと使用人たちの間のよそよそしい空気を、自分が出ていくまでに少しは改善できないだろうか?
メイドたちの空気も、今はアイリスがいれば違和感も小さい。
(アリムからの協力は得られそうにないけど、大公様は暴君ではなかったし、この調子だと『みんなと仲良く過ごす』計画もいける気がしてきたわね)
それなら、自分が一肌脱ごう。
アリムの周囲改善もうまくいったのだ。努力すれば、少しずつでも変わってくれるはず。
「アイリス、何か悩んでいる?」
つい、考え込んでしまっていたらしい。
積み木が先程より数個しか変化していない状況で、アリムが尋ねてきた。
「うーん、みんなで楽しく何かできることはいかな、と思って」
「それって、パパも含めて?」
「えっ、あ、うん、そう」
意外と子供は鋭い時がある。それを思い出して、どきまぎしながら笑って誤魔化す。
屋敷の主人もおのずと巻き込める打算はあった。それをアイリスは考えていたのだ。
「アイリスは、みんなが仲良しなのが望みなんだね」
アリムが笑みを深める。
時々意味深に聞こえる時があるが、子供の言葉選びのためだろう。
「えっと、そうなの。仲良しなのがいいなぁと思って」
「何か思いつけないか建物内を探検してみる?」
「積み木が途中よ」
「アイリスに付き合うほうに興味が移っちゃったから、平気。ねっ、行こっ」
アリムが立ち上がり、アイリスの手を引っ張る。
(大好きと伝えてくる笑顔が最高!)
というわけで、アイリスはアリムと手を繋いで探索に出た。
たまにやる雪だるま作りは楽しいが、使用人も一緒に、という空気を作るのは難しいだろう。騎士たちでさえ警備に徹している。
(みんなで遊ぼう、なんて大公妃の私が言うのもおかしいわよね)
貴族だとか、この世界は知識を持っていても馴染むのには苦労する。
何をするのかも定まらないまま数日が過ぎた。
こうなったら〝お飾り妻〟ではあるが、何かしら発言してみようか。
そんな思いを抱いて眠った翌日、ヴァンレックも誘えない状況になるという急展開を迎えることとなる。




