第7話:どっちも迷子
1話あたり1000~1500字を目標にしています。
「おーう、起きたか。俺はディヒト。お前、町への行き方知ってるか?」
「う、あ、こんにちは。ディヒト、さん?俺、ここがどこかもわからない…です。」
日本語ではない言葉が、スッと耳に入るし普通に言葉が口に出る。ディアスタまじ感謝。
目の前には森のような深い緑の髪をした、二十歳くらいの男。鍛え上げられたバッキバキの体をしている。もしかして、もしかしなくとも、この人がディアスタが言っていた草原の民の人だろうか?なんかでかい馬が俺の匂いを嗅いでくる。ちょっと怖い。いい歳して泣きそうなんだが。いやもうさっき泣いた後だったわ。
「そうか。わからないか…。」
明らかにしょんぼりした様子に、申し訳なさが押し寄せる。ほんとごめんなさい。
「俺は甲斐新、といいます。ディヒトさんは草原の民の人、ですか?」
「そうだ。」
よし、ビンゴ!ならば頼らせていただこう。ディアスタが頼らせようとしていたくらいだ、変に隠し事をするよりも正直に話して助けてもらおう。
「先程は危ないところを助けていただいてありがとうございました。俺、もう少しで死ぬところでした。」
「ああ、狩りのついでだったが、助けられたのは良かった。」
狩り?あんな怖いの、この人にとっては獲物でしかないの?!異世界怖っ!あっ!あのワイバー…。お前の右手のそれはワイバーンだな?その場でBBQしてたな?結構いい匂いしてるなそういえば。
「俺、気が付いたらここにいて、ディアスタっていう精霊に草原の民を頼れって言われたんです。図々しいお願いで申し訳ないのですが、ディヒトさんの仲間の人たちの中に、俺みたいな、えーっと、違う場所から飛ばされてきてしまったような人間のことがわかる方がいれば紹介していただきたいのですが。」
なるべく丁寧に頼んでみるが、表情が曇っている。だめなのか?おいディアスタ、ダメだったらどうすりゃいいんだ?
「あー、すまない、精霊の使徒様。ディアスタ様のお言葉なら助けてやりたいのは山々なんだが…。実は三日ほど前に一族丸ごとどっかに消えたんだ。」
へー、一族丸ごと。…ファッ!?
「いや、…多分全滅したとかではなくて、ダンジョンに吞まれたんじゃないかとは思うんだ。新しいダンジョンの入り口?かもしれない穴ができていたからな。ただ、俺は一度も町との取引に行ったことがないから、町への行き方がわからない。父か婆様がいたら良かったんだが。」
言葉を失う。異世界怖い。そんな悲しいことがあったのに、こいつは3日間もたった一人で過ごしていたのか。見た目は俺より年下っぽいのに、俺よりずっとしっかりしている。何と言っていいのやら。衝撃的過ぎて質問したいが気が引ける。精霊の使徒様ってなんだよ。焦っていると、スマホの聞きなれた通知音が。そうだ、ディアスタ。連絡取れるんだった。
トーク画面を開くと、ディアスタからの吹き出しが2つ。
―――――
ディアスタ「クリーンはうまく使えたかの?すまん、草原の民じゃが、例の瘴気災害のせいで起こったダンジョンの発生に巻き込まれたようじゃ。」
ディアスタ「いきなり予定が狂ってしまったが、地図は一番近い町までなら、アプリが案内する。その後はお主の行ったことのある所や地図を手に入れた土地が表示されていくじゃろ。幸運を祈る。」
―――――
メッセージを確認すると、地図アプリを開いてみる。おお、ARナビが使える。ありがたい。「感謝」のスタンプと「ありがとう、町に行ってみる」を送信。
ディヒトさん、俺たち町へ行けそうです。
ぼっち飯を応援してやってもいいかな、と思ってもらえるような文章を書けるよう頑張ります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ではまた今度の土曜日に。




