第4話:ディヒトの拾い物
初心者です。見切り発車で書いてます。
ディヒトの勘はよく当たる。わくわくする方へ行けば良いことが待っていたし、なんだか気の進まないときは嫌な目に遭う。
あの日は朝からずっと、胸がムカムカするような、腹がモヤモヤするような…なんとも言えない感じが嫌で仕方なくて、一族の長たる父に言ってはみたのだが、昨日の宴で食べ過ぎたのだろう、いい歳をして情けないと説教をくらった。
確かに。久々の大物を狩ることができて、みんな大騒ぎだった。皮も牙も、町へ持っていけば高く売れる。そして何よりも肉。全員に十分な量だった。
羊たちのためにそろそろ次の土地へ移動を考える時期だったから、干し肉がたくさん作れる。今回は食料の心配がなくなった。これには婆様たちも大喜びで、宴会になったのだった。
父の言う通り、この嫌な気分は食べ過ぎたせいだろう。ならばちょっと散歩でも行こうかと考えると、モヤモヤが少なくなった気がした。
これなら遠駆けしても大丈夫かも、と思ったら急にスッキリして、そうしなければならない気がした。
ディヒトの一族は馬を操る。町の人からは草原の民と呼ばれているらしい。羊を連れて旅をして、死ぬまでテント暮らしだ。
結界の使い手はいないけれど、魔道具があるから大抵の魔獣は怖くない。一族に受け継がれてきた知恵を使えば、旅路は安全だ。
ディヒトの相棒ヴィントは、強くて賢い。仔馬の頃からディヒトが世話した、大地の色の立派な牡馬だ。
ヴィントの足先は白いから、ディヒトも脛当てはいつも白を選ぶ。ヴィントと一緒にしばらく走って、モヤモヤなんかどこかへ行ったはずなのに、急に胸騒ぎがした。
「ヴィント、帰ろう。できるだけ早く。」
そうして、テントがあったはずのところに口を開ける、黒い穴を見つけた。
あれから3日。
何が何だかわからなかったが、きっとあれが噂に聞く、生まれたばかりのダンジョンなのだろう。とディヒトは結論づけた。
運悪く居合わせた一族は、そこに呑み込まれてしまったはずだ。生きているか死んでいるかはわからないが、しぶとい連中ばかりだ。全滅はしていないと思いたい。
生まれたばかりのダンジョンは、安定するまで何が起こるかわからない。安定したらしたで、中の魔物が出てきたら一大事だ。
近くの町に知らせねばならないが、悲しいかな、ディヒトは町へ向かう道がわからない。
こんなことになるなんて思わなかったから、剣を一振り。持っているのはそれだけだ。ヴィントと一緒に草を食う。ダメだ、限界だ、もっと腹に溜まるものを食いたい。
草原にいるはずの動物を見かけないせいで、自慢の狩りの腕を役に立たせる場所がない。腹が減っていることしか考えられなくなったディヒトの目は、遥か遠くで動く影を捉える。群れているはずのワイバーンが一頭、地上スレスレで何かしている…?
一般的には逃げるべき獰猛なワイバーンだが、ディヒトの行動は早かった。
「ヴィント、ちょっと待ってろ!」
ヒラリと地に降り、身体強化は最大。狙うは伸びた頸。あっという間に距離を詰め、一閃。
嬉しさに雄叫びを上げる。
「久しぶりの肉じゃああああ!」
ウキウキしながら解体しようと目をやり、気付く。なんだこいつ。弱そう。とりあえずヴィントを呼ぼう。
指笛を合図に、ヴィントがやってくる。落ちてるそいつを不思議そうに嗅ぐヴィント。
こいつを放っておくべきか、それとも拾っていくべきか。ちょっと迷ったが、拾った方が良い気がする。
「なぁヴィント、こいつ、町の場所わかるかなぁ。寝ちまってるし。とりあえず飯だ飯!」
…ディヒトにとって、今は空腹を満たすのが何よりも優先されるべきことだった。
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しばらくは土曜の0時更新を目標にします。




