第15話:どうせなら食べたかった
アラタは現在、身長155cmです。
さっき鐘が3回鳴ったから、今の時間は15時過ぎくらいか。外回りの営業が出払った部屋のように、ギルド内は静かだ。
おかげで掲示板は見放題。ちなみに素材はガチの板だった。そこにL字形の金具が打ち付けられていて、穴の開いた紙がぶら下がっている。乱雑さは見受けられない。受けたい依頼があったら、依頼票を受付に持っていって受注手続きをしてもらうそうだ。
正面出入口から一番遠い壁が掲示板のあるスペースで、左から右にいくに従って依頼の難易度が上がっていく。もちろん俺たちは鉄級だから左の依頼からこなしていくことになる。
掃除、掃除、ペットの世話、薬草、掃除、…。
「ディヒト見ろ!貴族の護衛なんてのもあるぞ!めんどくさそー!」
「こっちはダンジョンで素材採取だ!楽しそうだな!」
「あ、あっちにパーティメンバーの募集もある!」
「クランってなんだ?」
「うわ、講習とかあるんだ!思ったより安い!」
「よしアラタ、お前に身体強化を教えてやろう。小銀貨1枚を寄こせ!」
「なんで増えてんだよ!」
魔法や体術、剣術、薬草やマナーまで様々な講座がある。結構手厚いな。日本みたいな義務教育とかない感じかな。さっきレイモンドさんは書ける人が少ないって言っていたし。ってことは読める人もそうなんだろう。
「馬の世話だと!?これにしようアラタ!」
「すぐに決めんなよ、ザックさん戻ってきたら相談するんだから。」
「なくなったらどうする!」
「その時はあきらめろ。ヴィントがいるだろうが。」
「ヴィントのついでに世話をして金がもらえるなんて良い依頼じゃないか。」
「依頼として受けるんならヴィントの方がついで!連れてって良いとも限らないだろ。」
ギルド内の張り紙を見ながら時間を潰していた俺たちのところへ、杖をついたレイモンドさんが向かってきた。やべ、騒ぎ過ぎたか。いや…あの笑顔は怒ってるやつじゃないな。
「部屋はどうだった?ちょっとでもくつろげるといいんだけど。」
「問題ない。ヴィントが近くて安心だ。」
「厩舎の近くの部屋でそう言ってもらえるとありがたいよ。」
「俺は雨風しのげて満足です。」
物腰柔らかなレイモンドは俺の癒し暫定1位だ。うん。ギルドにいるのはもっと荒っぽい奴の印象だったが、まだ異世界初日の俺にはこのマイルドさがありがたい。
「冒険者のランク、お金と一緒なんですね。はやく銅級になりたいなぁ。依頼の報酬上がるし。俺、薬草とか全然わかんないんですけど、あそこの本って借りられますか?」
受付の近くにある本棚を指差す。
「持ち出しはできませんが、読むのは大丈夫ですよ。ザックさんが戻ってきたら、初心者向けの講習の相談もしましょう。それと、ディヒトさんが持ってこられたワイバーンの爪の査定が終了しました。混雑する前に手続きをしてしまいましょうか。」
そうだ、あの爪!俺を襲った憎きワイバーンはディヒトの糧となったが、絶対良い状態ではなかっただろう。どのくらいの金額になるのかとても気になる。
「俺もついてっていい?」
そう尋ねると、ディヒトはなぜかキョトン顔。
「なんだ、来ないのか?」
「だってワイバーン狩ったのディヒトじゃん。でも、こういう素材のやり取りとかの流れがどんなか見たいなーって。」
「バカだなぁ。弟分を放ったらかしにするわけないだろう。チビは遠慮すんな。」
「クソッ!気ぃ使ってやったのに!チビとか言うな!」
「行くぞチビ。ほら来いチビ。」
最後の健康診断の時は175cmだったんだ!今に見て…。いや、なんて事だ。ディヒトが180cmくらいだから追い越せない可能性が高い。
「ではお二人ともカウンターにどうぞ。今は他に誰もいないので、このまま手続きしましょう。金額が高くなるようだったり特殊な相談の時は奥の部屋を使うこともありますが、基本はこちらのカウンターで手続きをしていただきます。
依頼主がいる場合は、依頼票にサインをもらい提出。素材を持っている場合は先に裏手の解体場に素材を提出、担当者に素材の鑑定控えをもらって受付に提出してください。時間がかかりそうだったり、後日の受け取りでも良い場合はお伝えください。
今回は冒険者登録前でしたし、ちょっと特殊なケースだったのでザックさんが控えの提出まではしてくださいました。」
ザック…!好感度がまた上がったぜ…!
「報酬をすぐにお支払いできる場合はこの場でタグを使って入金するか、現金でご用意するかをお選びいただけます。
今回は状態があまり良くなかったので、ワイバーンの爪6つで3万ヒェルトです。」
「状態が悪いのに?…もし良かったらいくらになりますか?」
「…12万ヒェルトです。」
「「…じゅうにまん。」」
俺とディヒトの声がハモった。ゆっくりとディヒトの方を見る。
「なぁ、アラタ。」
「なんだ、ディヒト。」
「俺は今度から食う前に分けることにする。」
「俺もそうした方がいいと思う。」
「え、食う…?ワイバーン、食べちゃってたの…?」
こんがり焼けた爪を見ていなかったであろうレイモンドさんは動揺している。
「ワイバーンの肉は高級食材なので…そちらもお持ちいただければ100リーブラあたり大金貨1枚は下らないかと…。」
「100リーブラっておっきいですか?」
「いえ、このくらいです。」
レイモンドさんが両手で小さい輪っかを作る。子供用ステーキくらいの。成程、多分「1リーブラ=1グラム」だな。
ふんふん、100グラム10万円のお肉。
…どうせなら俺も食っとけば良かったァ!!!!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ではまた来週土曜日に。
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