第13話:魔道具すげえ!
「ザックさん!」
カウンターのところにいた、30代くらいの男がすぐに気づいて声を上げた。
「レイモンド、久しぶりだな。足の調子はどうだ。」
「おかげさまで。まだ慣れませんけど、何とかやってます。今日はどうされました?」
「ああ、登録希望者を連れてきた。新人用の部屋も頼みたい。」
「わかりました。えーっと、お二人ですね。少々お待ちください。」
受付の人はレイモンドさん、と。レイモンドさんはカウンターの下からA5くらいの紙を出した。紙、あるんだ。ネックレスみたいな長い紐が通された金属製のタグが二つ、一緒に置かれる。
「最初の登録の時はこちらにお名前を書いていただいて、魔道具で魔力の登録をしていただきます。魔道具には鑑定の機能もありますので、年齢と魔法に関しての大まかな適性を見ることができます。14歳までの方は正式に登録することはできませんが、仮登録という形で依頼を受けることができます。
冒険者としてご登録されるのがはじめてでしたら、一番下の鉄級からのスタートになります。お名前、年齢、魔力などの基本的な情報がこちらのタグに登録され、身分証明の他、依頼の受注など様々なお手続きにご利用いただけるようになりますので、紛失にご注意ください。再発行には金貨1枚かかります。
ここまでで何かご質問はございますか?」
とても丁寧でプロ意識を感じる。冒険者ギルドと言えばかわいい受付嬢という偏見を持っていたが、同世代の男というだけで勝手に親しみやすさを感じる俺としては、こっちの方が緊張しなくて良かったのかもしれない。
「俺は特にないな。ここに来る途中でおっちゃんに基本的なことは聞いたし。アラタは何かあるか?」
「あの、登録とは関係ないですけど、ギルドってお金を預かってくれたりしますか?」
「はい。冒険者タグで利用できる、ギルドで運営している銀行というものがございます。預ける時はお金はかかりませんが、お手元に戻されるときは1回につき銅貨1枚の手数料を頂戴しております。」
「ありがとうございます。必要になったらお願いします。あとは俺も特にないかな。またわからないことがあったらお聞きすると思います。よろしくお願いします。あ、字は書けます。」
お礼を言うと、レイモンドさんはニコニコしながら紙とペンを渡してくれた。俺とディヒトが名前を書いている間に、レイモンドさんはすぐ横の扉の鍵を開けている。
「名前が書けたら、その紙を持ってこちらの部屋にどうぞ。2人が一緒に組んで仕事をするつもりなら一緒に入っていただいても良いですが、どうされますか?」
同時に立ち上がったディヒトを見る。
「ディヒト、俺、最初は一緒がいい。お前は?」
「俺もそうだな。アラタは俺がいないとすぐ身ぐるみはがされそうだから面倒見てやるよ。」
「何だと!」
「おいそこの二人組!ヌフはそんなに治安悪くねえぞ!良くもねえけどな!」
さっきまで静かだったザックが横から入ってくる。ザックにも来てもらおうかな。
「なぁディヒト、ザックさん、元ギルド長で領主様に雇われるくらいだから信頼されてるんでしょ。鑑定とかされるんだったら一緒に来てもらって、なんかアドバイスとかしてもらうのどうかな?」
「お前、頭いいな。おっちゃん、そういうことだから一緒に来てくれ。」
「はいよ。お前ら、相談事はもっと小さい声でやれ。丸聞こえだ。」
「あ、大丈夫です。隠す気ないんで。」
兄ちゃんと年が近いと思われるザックは何となく話しやすい。レイモンドさんが笑みを崩すことなく案内してくれた部屋は10畳くらいの広さで、真ん中に置かれたテーブルの上に、くぼみのある箱が付いた板のようなものが置かれている。これが魔道具か。板の部分はA4くらい。箱には何やら模様が書かれている。魔法陣だろうか。魔法陣だよな。魔法陣であれ。
「俺、先でいいか?」
「どーぞどーぞ。」
いちいち聞いてくれるディヒトはなんだかんだ気の使えるやつだ。気が回らなそうな見た目をしてるくせに。俺が女子だったらギャップに惚れてるぞ、このやろー。
「ではお名前をお預かりします。ディヒトさん、そちらにおかけください。」
レイモンドさんがディヒトの名前が書かれた紙を板の上に載せる。横の箱のくぼみに、さっき見せてくれたタグをはめた。
「どちらでも良いので、紙の上に手を乗せてください。」
「こうか?」
「はい、ありがとうございます。少し光りますので、光が消えるまで手を動かさないでくださいね。」
レイモンドさんの右手の人差し指が箱の模様に触れる。魔法だ!つい近くに寄ってじっと見る。ザックさんに「触るなよ」と注意されたが近くで見たいので、しゃがんでテーブルの端をつかみ、顔をのぞかせてがっつり見ることにする。俺なりの「ここまでしか近づきません」アピールだ。ディヒトは邪魔とも何とも言わないから大丈夫だろう。
全体を淡い光が包み、ディヒトの手の下の紙が強く光る。強いと言っても目を射すほどではない、優しい光だ。紙と手の隙間から光の帯のようなものが立ち上がり、小さな渦となって箱の上のタグに吸い込まれていく。いや、光が短くなりながらタグに文字を刻んでいく。
光がすっかり収まると、タグにはディヒトの名前が刻まれていた。すごい!
「ディヒト!魔法だ魔法!すごいな!」
テンションの上がる俺と違ってちょっとしょっぱい表情のディヒト。なんでだよ。
「…文字の練習をしなかったことをこんなに後悔したことはない。」
手をどけたら、紙は白紙になっていた。タグの上には縮小コピーされたように刻まれた名前。さっき見て、もしかしてと思っていたけれど。
ディヒトの字は汚かった。
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