第11話:衣と住、確保ォ!
一昔前のアニメやなんかでよく見る、縁側でのんびりしているヨボヨボのお年寄りを想像していた。だって歴史の授業でやった、中世?くらいの街並みや、科学の発達していなさそうな街並みを見ながらここまで来たから、異世界の68歳は相当おじいちゃんなんだろうなと当たりをつけて入った部屋の中にいたのは、精悍な顔つきで圧の強めなご老人だった。
そうだよね、辺境伯だもんね。こんな強そうなおじいちゃん、俺の身近にはいなかったよ…。「あれは強い。俺にはまだ勝てないな。」とディヒトが囁いてくる。バカなのお前!いつか勝つ気でいるような言い方をするんじゃない!
「ほぉ…君は見る目があるな。」
聞こえてたぁ!そんでなんでちょっと嬉しそうなの?力こそパワーな感じなの?
結論から言うとライゴウ様は豪放磊落、気っ風の良い御仁だった。あまり緊張しなくてすんで助かる。「俺」と言いかけて「私」と言い直すと、使い慣れている言葉で大丈夫だと言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
さすが辺境伯と言うべきか。有能なライゴウ様は、ザックからの最初の連絡を受けると即座に先遣隊を組織、派遣していたので、俺たちはその先遣隊からの報告を一緒に聞くだけで済んだ。魔法のある世界はすごい。先遣隊のメンバーには魔法使いがいて、ボイスメッセージが小鳥の姿でやってくる。
「しかし、ディヒト。なんで3日もかかったんだ。ここからお前たちの拠点まではそんなに距離はないだろう?」
そう、ザックがいぶかしんでいる通り、今回草原の民は町の壁から半日ほど行ったところにテントを張っていた。ディヒトの親父さんは挨拶がてら、拠点にする場所をヌフに報告に来ていたから、ライゴウ様は俺達を待たずに先遣隊を派遣することができた。半日の距離を3日。どう考えても時間がかかり過ぎだ。気まずそうにディヒトが言う。
「町に興味なかったから、方角がわからなかった…。」
「お前なぁ…。」
かわいそうなものを見る目をしているザック。おかげで俺は助かったけどね。でもまさか、あの強さって異世界標準だったりするんだろうか。だったら俺は生きていける自信がないぞ。
「あの、ディヒトは俺を助けてくれたんです。すごく強かった。ワイバーンを一人で。俺、死んじゃうかと思いました。…それでお聞きしたいんですけど、冒険者になるならワイバーンを一人で倒せるくらいにはならないとだめですか?」
「アラタ、ギルドに登録したいというのは最初から言っていたそうだね。冒険者になりたいのかね?」
ライゴウ様に問われて背筋を伸ばす。
「俺もディヒトも、今日までは何とかなりましたが、この先も何とかやっていかなければなりません。仕事をして、お金を稼いで、生活していかなきゃいけない。身元を保証してくれる人も物も、何もありません。なりたいかどうかより、やらなきゃいけないことをまずは優先したいです。」
ライゴウ様とザックが、俺をじっと見ている。あんまり見られても気まずいんだが。
「ザック、今日はもういいから、二人をギルドに連れて行って手続きを手伝ってやるといい。アラタには服と、靴も。孫のものがあるだろう。レスター、見繕ってやりなさい。」
「かしこまりました」といって扉の外へ出て行こうとした側近さん?執事さんか?に慌てて待ったをかける。
「お孫さんのものだと、結構良いものなんじゃないですか?できればしばらくはここでやっていきたいので、目をつけられてしまいそうな服だと困ります。申し訳ないですが、お気持ちだけで。でも、そう言っていただけたのはとても嬉しいです。」
俺がそう言うと、ライゴウ様は呵々と笑って、言った。
「なんだ、気弱そうな子どもがロースの息子に連れられてきたと思ったが、いやはやどうして、しっかりしているな。遠慮は無用だ。剣術の練習用の古くなったものなら、動きやすくて良かろうよ。ギルドには登録したての初級冒険者が泊まれる部屋があるから、そこを使わせてもらうと良い。
それと、ディヒトを基準にしてはいけない。ワイバーンは普通、中級以上の冒険者がチームを組んでやっと勝てる魔物だ。その辺の説明も任せたぞ、元ギルド長。」
も と ぎ る ど ち ょ う だ と ?
気弱そうな子どもと言われたことよりも、とんでもないパワーワードが聞こえてきた。
「おっちゃん、偉かったんだなぁ…!ギルド長やってたんなら、おっちゃんに全部任せよう!ラッキーだなアラタ、早く服と靴もらって来い。すぐ行こう!」
俺と出会った時もそうだが、ディヒトは順応性が高すぎやしないだろうか。レスターさんに案内されながら、まだ数時間しか一緒に過ごしていないディヒトのことがちょっとうらやましくなる。
あいつみたいな性格だったら、生きるの楽しそうだな。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。ではまた来週土曜日に。




