第3話 弟ナオトの場合
『本当ありがとね! あんた最高の弟だわ!』
スマホに届いた姉さんからの着信。トモキと無事付き合うことになったとの報告だ。
(よかったね、姉さん)
中学の時から十年間、姉さんの好みに合わせて、トモキにファッション指南をしてやった甲斐があった。あいつは素直でいい奴だから、僕の言うことに疑いもせず従ってくれる。
姉さんも姉さんでチョロいし、面食いだから、見た目さえ良ければトモキの欠点も都合よく解釈してくれるし。
そう仕向けたのは全部僕なんだけど。
(感謝してるよ、僕の方こそ……――おっと)
続けざまに、トモキからも連絡が届いた。
『ナオトのおかげだ! 心の友よ!』
添えられていたのは、部屋に一人でガッツポーズするトモキの自撮りだった。告白が上手く行ったら送ってくれ、って言っておいたのを律儀に守るんだものな。
(トモキのそういうとこ、昔から――)
画面に映ったトモキの笑顔に、僕は口づけをして。
(――すごく可愛いよ)
思わずスマホごと抱きしめる。
ただの親友なんかじゃ満足できない、僕はトモキとのもっと強い絆が欲しかった。
それが叶う時が、いよいよ見えてきた。
(二人が結婚するまで、これからも全力でサポートしていくからね)
愛するトモキと、僕は「家族」になれるんだ。
〈了〉