タイトル未定2025/01/03 01:17
幽霊は人のいない場所には出ないという
人間原理の働く存在である
魂と呼ばれるものが存在するのであれば
それは如何なる物質に反応し影響を及ぼすものなのか
監視カメラに映りこんでいたとしても
人が観測しない限り
無いモノと同じであるということだ
幽霊の男はぼんやりと考える
足元の死体は朽ち果てて久しい
廃墟の壊れた監視カメラを見上げながら一句
「空蝉や 廃墟に在り 声もなく」
年を経た器物にも魂が宿るという
長き戦争が続き人類は衰退しが
戦場で怨念を浴び続けた戦車は妖怪変化となった
AIによる無人戦車は人のいない戦場で
幽霊戦車と今なお戦闘を継続している
姿は見えずともレーダーに映りこむ敵影を監視しつつ
戦略AIが一句
「花振るう 鉄の轍や 幾重にも」
スペースコロニーはラグランジュポイントと呼ばれる
地球と月の重力バランスのとれた空間に浮かんでいる
しかし分厚い大気に守られていないコロニーでは
ほんの小さな隕石であろうとも
小さなひびがダムを決壊ように重大な被害をもたらしかねない
スペースデブリ除去作業員はある日コロニーの外壁に張り付いた
タンパク質を発見する
それが地球外生命体の物とも知らず
永眠していた生物は久しい外部反応に捕食者としての活動を開始する
まだ覚醒しきらぬまどろみの中で一句
「外宇宙より来りて 死命あり」
コロニーに侵入した太陽系外生命体は
人間の体内に侵入すると神経を侵し
身体を支配する
自我を失ったその姿はまるでゾンビのようである
傷口より感染し数を増やしていくエイリアンゾンビを
倒す方法は焼却するか瞬間的に凍らせるしか無かった
循環大気に限りあるコロニー内では方法は限られている
液体窒素のタンクを背負った警官は
住人を避難させながら一句
「群れ集う 亡者のごとく 枯れ尾花」
とある秘密結社では悪魔の召喚儀式が執り行われている
罪もなき犠牲者が生贄としてささげられている
複雑に描かれた魔法陣の中心に悪魔は降臨するが
それは多元宇宙の生命体
凶暴な獣は秘密結社の構成員を哀れな犠牲者へと変えるが
施錠された地下施設から出ることはできない
しかし
最も恐ろしいのは獣が持つ病原菌や寄生虫
空調設備より外部に飛び出した蚤が一句
「侵略的外来種 奔命」