『白黒×戦女神 第一部 ~出会いのまき~』
今回、柿の種先生とのコラボが決まりました。
本編を読んでない人でも……わかる……かな?
まぁ、くだらなくても怒らないで……。
正一郎は、修行をした後の疲れを取るために、城下町にある自分の家にいる。
あまり家具の無い部屋だが、生活感はある。
そのベットの上で、正一郎は目覚めた。
「ふぐぐはぁ~」
伸びと欠伸が混ざったような声をあげてベットから降りる。
今日は、国王の計らいで一日中休めることになっている。
「その前に、昨日の感覚を忘れないために……」
意識を集中させて、手のひらに感覚を集める。
それは、魔力という物で、魔法を使う為に必要になる物。
正一郎が使おうとしているのは、次元を歪めるほどの魔法だ。
感覚を掴むために、練習していたのだが、魔力の消費が激しいので多くの回数練習できない。
今日は休みだが、朝くらいはやっておこうという訳だ。
「{縮小せよ}”異世界の穴へ”」
文字通り、異世界に繋がる穴だ。
自分も一度これを使って帰ろうとしたが、タイミングを逃し、しかも一度開いた異世界へは二度と開かないという制約があるため、もうこの手段では戻ることができなくなっている。
本人は、帰る方法探し中だ。
だが、この正一郎はミスを犯していた。
それは、彼自身がトラブル体質だということだ。
「順調だな……、嵐の前の静けさとはこのこっ……ギャッ!!」
静けさの状態が短すぎる気もするが、正一郎は目の前に現れた物体にぶつかり倒れてしまう。
これこそが、トラブル体質というやつだろう。
「イテテ、何だこれ……って人だ!!これで、アリスと同類に……」
最悪の予感。
なんとしてでも、あの神……訂正、女神に見つかる前に元の世界へ帰さなくてはいけない。
だが、それは叶わなかった。
意識が途切れたのと、魔力を予め少ない量しか込めていなかったのが災いして、消えてしまった。
「うわぁ、どうしよ?」
誰も、答える者はいない……。
だが、この場には二人いるのだ、何とかなるだろうと、正一郎は考える。
……考える。……考える。……考える。……考える。……考える。
「ダメだ。終わった……」
正一郎は、あのか……女神と同類になってしまった。
この時ばかりはそう思った……。
☆
「のぐぐ~」
海弟は、久々の日曜、久々の休日に酔いしれていた。
何も無い、日常をこれほど愛してやまない男はいないだろう。
まぁ、いるとしたら、これと同類、もしくは、神という究極の存在に弄ばれる、もしくは突き放された不幸人間だけだろう。
「さ~て、遊園地に行くと、観覧車に酔って、水族館に行くと、何だか途轍もなく嫌な予感がするから、家でごろごろ~っと」
海弟は、船酔いするので、基本水がある場所を避ける。
どうしても、行かなければ行けないのなら、行く。
まぁ、休日は楽しめればいいと思い、そのまま眠りに付こうとした時だった。
「うわっ!!」
体が吸い込まれる。
器用に足が絡み取られたのか、抜くことができない。
ズズズという効果音が似合いそうな感じのペースで吸い込まれていく。
手鏡だけは、何とか無事に手に納めることができたので、安心できた。
「ふぅ、俺ってこんなに不幸だったか?」
チュポーンとか、鳴りそうな感じで(卒業証書のアレ)吸い込まれる。
「あ~れ~って、ダメ。吐く。あしがぁぁああ!!」
高所恐怖症を持つ海弟は、ここで気絶した……。
☆
正一郎は、起こそうと顔を見る。
男みたいだ。
黒目黒髪……この人もトラブル体質なのだろうか?と、一瞬考えたが、頭のどこかで「それはお前だ」と、聞こえたような気がしたので、すぐに考え直す。
だが、よく見ると床がゲロ塗れだ。
「おぉう、これが転移酔いか?」
実際には、恐怖で気絶して吐いたというのが正しいのだが、まぁその考え方が普通だろう。
「お~い、起きろ~。って、いきなりタメ口はまずいかな?」
「うぅ」と、声を出して起きる。
伸びをして周りを見る。
そして、十秒程経った時。
「ここどこですか?」
「えぇ~と……、ファンタジックな世界!」
「……つまり、異世界……と?」
「おぉ、よくご存知で」
「……」
「……」
沈黙。
「気にしないで、俺だってそういう人間だ」
「あぁ、あなたもだったんですか」
慣れない敬語を使う正一郎。
だが、沈黙の間に働いた不可視な力によって、お互いの異様感のような物を感じ取る。
「俺は、風詠海弟って、いう。後、タメ口で」
「俺は、竹中正一郎だ。大変な人生だな……」
「いや、見た感じでは、お前ほどではないな……」
その通りで、海弟は異世界に行き来することができるが、正一郎はそれすらも叶わない。
まぁ、その友人達はいつものトラブル体質だろうとだけで心配もしていないが……いや、ちょっとはしているか。
「海弟……で、いいか?まぁ、町でも行かないか?」
結構前向きな考えだ。
海弟もそれに乗る。
「まぁ……後でいいか……、行くか。それと、俺も正一郎って呼んでいいか?」
「おう、んじゃ準備しようぜ」
準備をしながら、色々な話をする。
共通で話ができるのは魔法と魔物の話だけだ。
まぁ、魔物は町の中にいる分には関係ないので魔法の話をする。
そんなこんなで、外で外食をすることに決めて、外に出た。
☆
二人はレストランのような店に入る。
ちらほらと客も見えるが、その大半は目的が朝食を食べるためだ。
まぁ、全員と言えないのは、色々あるからだろう。
「空いてるな~」
「それ、店に対する嫌味になるぞ?」
痛々しい視線が二人に突き刺さる。
だが、二人は客なのだ。
「ご注文は?」
「んじゃ、俺はこれで」
「同じのでいい」
二人は朝食を食べる。
店に人が多くなる頃に外へ出て、町を見てまわることに決まった。
「それにしても、これすごいな……」
「そうか?慣れればどうってこと……ウグッ……ないぞ」
朝から男二人で食事なんて、周りから見ると痛い光景だろう。
なので、予定を変更して、食べ終わったらすぐに店を出た。
「さぶっ!?」
「冷え込むな~」
海弟が正一郎を、恨めしそうな顔で睨む。
当たり前だ、海弟は家でごろごろするつもりだったので、上は普通のTシャツだ。
正一郎は着込んでいるので、あまり寒さは感じないのだろう。
「た、大変です!!」
兵士の一人がこちらに駈けてくる。
正一郎はと言うと、嫌そうな顔をして逃げようかと迷っている様子だったが、急に背筋がビシッとしてその場に立ち止まる。
「ま、魔物です。ハイオークの群れが城門の前で!!」
「ガソリンか?」
「ガソリンの群れか」
「何ですかそれ?って、違います!!急いで来てください!!」
「ああ、いいだろう。お前は待っていてくれ」
「え、あ、ああ」
急に口調が変わる正一郎。
そんな性格をしていたのだろうか……。
正一郎は、海弟をその場に残して城門の方向へ走っていく。
残された海弟はと言うと……
「……面白そうだ。行ってみるか」
と、わくわくしながら野次馬になるつもりで追いかけていった。
☆
「すごい数だな……」
「はい、これでは、外部との連絡、その他食料の調達ができません」
「飢え死にするってことか……」
「はぁ……」
「一つ聞きたいんだが、何故魔物は中に入ってこないんだ?」
「あ、それはですね。城門には魔物避けの魔法がかけてあるんですよ。まぁ、そのせいでこのような事態になったんですけどね」
「全くだ。待っていろ」
「自分は、町民の鎮圧に回ってきます」
「頼む」
城門の前でそんな会話を、さっきの兵士と正一郎がする。
口調はしっかりしたままだ。
「お~い、頑張れよ~」
「ん?」
声の方向には海弟がいる。
兵士が捕まえようと追っている。
それを確認した海弟は、逃げている。
「……アホか……」
何処からか、同意の声が聞こえるような気がする。
この時には、もう門の上に正一郎は上っていた。
「絶景……ではなく、悲惨だ……」
多すぎる魔物の光景に、さっき食べたものを吐き出しそうになる正一郎。
だが、さっさと終わられようと思い、魔力を集中させる。
「”光柱”!」
現れた光の柱に、一瞬城門付近の混乱していた住民と魔物は動きが止まる。
そして、光が止む。
「これでどう……だ……。あれ?」
虹色に変色したような防御壁が、ハイオークの周りを囲んでいる。
それが、透明になると同時に、手に持っていた槍が光る。
「……え、まさか、あれで防御されたのか?」
「うえぇ、気持ち悪い……」
「うおっ!!」
いきなり隣に現れた人物に一瞬怯む。
だが、海弟だと確認すると、元の体勢に戻る。
「魔法効かないぞ?」
「一つ方法が―――」
「あの中に突っ込まんぞ?」
「……あったと、思ったけどな~」
「そうか、そのまま思い出さないほうがいいぞ」
「ははは、そうだな」
場違いな笑い声が響く。
「そういや、追ってた奴等はどうしたんだよ?」
「あぁ、面倒だったから、適当に逃げて撒いといた」
「……足が速いんだな」
「あ、俺も魔法を使えるぞ?」
「って、いきなり大胆発言!?」
「さっきの技すごかったけど、相手のダメージ0だな」
「無視か!!」
海弟は目を瞑っている。
考え事をしている様子に、正一郎も黙って自分で考え始める。
「魔法は効かない。あの中に特攻は無理。……アレやってみるか?」
「俺も思いついたのはアレだけだな」
二人は魔力を練り始める。
やろうとしていることは、単純で誰でも思いつくような作戦だ。
それは、『ただの力押し』それだけだ。
これで、ダメなのなら諦めるしかないだろう。
「タイミング合わせていくぞ」
「1,2,3でいいか?」
「ああ」
海弟は、自分の相手の特性を見て、出す技を決める。
正一郎は、タイミングを取っている。
「1」
「2」
「「3」」
二人の掛け声が合わさる。
「第三『閃電』
「”光柱” ”徐々に解放”」
正一郎は、引力の石まで使って、魔力を一気にハイオークにぶつける。
ハイオーク達は、勢いに飲まれたのか、手に持っている槍を魔法が来る方向に向けている。
だが、それくらいで止まる攻撃ではない。
最初に激突したのは、海弟の魔法。
防いでいる防御壁が、赤色にどんどん染まっている。
そこへ、正一郎の魔法がぶつかる。
その瞬間、何かがはじける音が聞こえる。
それは、ハイオーク達が持っている槍が壊れた音だ。
「カッコよく合体技でいこうか」
「最後くらいいいんじゃねぇか?」
そして、光が途切れるのと同時に、二人が自分の魔力をそのまま解放し、言う。
「「『虚曲光 鏡』」」
海弟一人でも、正一郎一人でも、できない魔法だ。
これは、朝話し合っていた魔法。
正一郎も、このときは海弟が魔法を使うことを知らなかった。
海弟の方は、自分の魔力を感じ取られないようにひやひやしながら話していた。
まぁ、世話になっているとはいえ、いきなり会った相手に自分の情報を教える必要もないと思っての判断だったのだろう。
使った海弟と正一郎は、疲れと魔力を使った喪失感で倒れている。
だが、その瞬間の光景はすごかった。
光り輝く鏡、その光を一身に受けて崩れ去る魔物達。
そして、その鏡に力を与えているのは、朝日だ。
海弟は、鏡という元を作り、正一郎は、光を凝縮して魔力を込めて魔物達に放った。
光が止むのと同時に、二人は意識を手放した……。
☆
ガバッ
そんな効果音が付きそうな勢いで正一郎は起きる。
周りを見渡すと、そこにはまだ寝ている海弟がいる。
「……こいつも、トラブル体質の持ち主か……」
「むにゃむにゃ……、ま、マシュマロが……」
「……マシュマロ?」
「マシュマロが……、唐辛子味に……」
「チェストーーー!!」 (鹿児島の方言の方)
「あぐぐぅううう」
「ふ、またつまらぬ物を―――」
「って、字が違う!!酷い!!酷すぎるぜあんちゃん!!」
コンコン
ドアがノックされる。
窓の外は、中庭になっていて、この部屋自体も広い造りになっている。
そう、ここは、城の中なのだ。
「ちょっと待ってくれ」
正一郎が言う。
海弟は、また眠ろうとしている。
外は、暗くなっているが、明るい光に照らされている。
「正一郎様とえ~っと―――」
「めんどくさいから、正一郎達でまとめてくれ」
「俺の名前を勝手につかうなっ!!」
「早い者勝ちさ」
「はい、正一郎様達をお連れするように国王様からのご指示がありました。付いて来て下さい」
「俺は関係ないな」
「達って付いてただろ!!」
「いや、そこのメイドと正一郎のことだろ?」
「……まぁ、気持ちはわかる」
「っと、言って竹刀を持つのはやめてくれないか?」
「来るか?」
「……死ぬ可能性大だ……」
海弟は屁理屈で逃げようとしたが、正一郎に負け連れて行かれた。
☆
「ははは、月が綺麗じゃないか」
「ああ、あそこに行きたいぐらいだ」
「……そうだな」
海弟達は、今舞踏会に出席している。
まぁ、魔物を撃退したのは二人なので、出席しているのは当たり前なのだが、さっきから貴族達がこっちをちらちら見てくるのでイラついてくる。
なので、二人は食べ物を持って適当に隅っこに移動している。
「……そろそろ帰ろうかな……」
「……ああ……。って、帰れるのか!?」
「うん」
「俺も、帰らせてくれ」
「俺の知らない世界にはいけないから無理」
同じ次元には正一郎の魔法は開かない。
だから、海弟のいた世界と正一郎がいた世界とは似ていて異なる世界と言うことになる。
「……酷いな」
「ああ」
その日の夜のうちに、英雄の片方が消えたらしい。
なので、正一郎一人に功績が与えられ、また休暇をもらえたそうだ。
言ってみれば、休みが潰れたから、また休みをやるよ程度のことだ。
魔物撃退に対しては低い報酬だが、本人は満足しているらしい。
アリスが間接的にしか出てきてません。
それは、反省ですね……。
出し方が決まらない……というか、出せない……。
感想の方もよろしくお願いします。