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素振りを始めてから一月ほど経った。初めのころに比べしっかりと剣を振れる様になった。
「ルフ君お疲れ様」
一日の目標数の素振りが終わり休憩しているときにジンクさんがタオルを持ってきてくれた。
タオルで体をふきながらジンクさんに聞きたかった事を聞く。
「ジンクさんいつになったら型を教えてくれるの?」
「ルフ君前にも言ったが俺の剣は我流だ……俺の剣を教えても意味がないんだよ」
「一般的な型はないの?」
「俺は習ったことがないからね……教えられないんだよ、だけどね……ルフ君、君は素振りをどういう風にこなしている?」
「どうやって?僕は自分が振りやすい方法で振っているだけですよ?」
「そう、ルフ君が振るやすい方法で振ると言うのは大事なことだよ、そして君のそれは我流の一歩目だよ」
確かに言われてみればそうかもしれない僕は素振りが本来どのようにやる物なのか知らない、だから自分の振りやすいやり方をやっていた。それは自分の剣の一歩目なのではなかろうか……
「我流……僕もジンクさんの様に自分で考えて剣を振る剣士になれってこと?」
「俺はあくまで道を見せているだけだよ、君の人生を決めるのは俺じゃない君自身だ」
「僕はジンクさんみたいになりたい!」
「それを決めるのは君だが、もし俺に憧れと言う感情を持っているならそれはやめた方がいい」
普段のジンクさんからは考えられない否定の言葉だった。
「どうして……?」
「憧れとは目標や夢と言った言葉とは遠くかけ離れたものだからだよ、憧れとは届かないと思ってしまうから生まれる感情だ、俺は君にそんな感情を持ってほしくない」
そう言うジンクさんが、最後に小さくこぼした「君は俺を超えられる」という言葉は聞こえなかったことにした。
★
ジンクさんと昼飯を食べ終わりゆっくりしていると突如ジンクさんが剣を構え始めた。
「ルフ君、君に受け流しについて教えておこう」
「受け流し?」
「剣を使う上で必要な技術の一つだよ、ルフ君剣を俺に向かって振るんだ」
言われた通りジンクさんに剣を振るう、ジンクさんと僕の差を理解しているため全力で振った
ジンクさんは剣を構え受け止めるつもりのように見えた
しかし
ぎぃぃっと音を立てジンクさんの剣を滑りあらぬ方向に剣が流れてしまう、そのせいで体のバランスを崩し転んでしまう。
「今のは?」
「これが受け流しだよ、剣を剣で滑らせることで相手の剣の軌道を変えるんだ」
「すごい技ですね!」
「この技は自分より力が強い相手などに使う事でまともな打ち合いを避けることが出来る」
「どうしてまともな打ち合いを避けると良いんですか?」
「ルフ君は硬い物を硬い何かで叩いたようなことはないかい?」
うーん?
「クワで硬い地面を耕したりとかですか?」
「間違いではないね、その時手がしびれたりしなかったかい?」
「あ!しました」
そう言われ、硬くて掘れない土などを耕すと手が動かしにくくなったりしたことを思い出した。
「それは硬い地面にクワが当たった時に起きた衝撃がクワを通して自分に来たからだよ」
「なるほど、つまり剣の打ち合いも同じことが起きるわけですね!」
「そう、そして当然力が強ければ強いほど衝撃が大きくなる、だから受け流すことで自分の体にダメージが来ないようにするんだ」
「そんなすごい技を教えてもらえるんですね!」
「すごいと言っても使いどころが限られてくるけどね……」
「そうなんですか?」
「相手は決して剣を使ってくるわけではないからね、この村には居ないみたいだけど世の中には魔法使いと呼ばれる人が沢山いるし、魔物だって攻撃によっては受け流すことが出来ない技だってあるそんな便利な技ではないんだよ」
魔法使い??
「ジンクさん魔法使いって何ですか?」
「この村には居ないからね、やっぱり気になるかい?」
「はい!」
村では聞いたことのない物に探求心が湧いてくる。
ルフは一年前に知ってしまった未知と言う物にすっかり魅了されていた。そのおかげで知らない物は積極的に質問していた。
「う~ん、まだ早いと思ったんだがルフ君なら大丈夫か……」
ジンクさんから不穏な言葉が聞こえる……まだ早い?大丈夫?僕は一体何をさせられるんだ……ただ魔法使いについて知りたいだけなのに……
「よし、ルフ君明日すこしと遠出をしよう!受け流しはその道中でも練習できるし、魔法使いについても明日説明しよう、今日はゆっくり休んで明日に備えるんだ」
「わ、わかりました」
魔法使いについて聞いただけなのにどうしてこうなったんだろう?しかし遠出という事は村から出るという事だ。またあの楽しい時間が来ると思うとドキドキしてくる。
今日は解散という事でジンクさんに家に送ってもらった。
家に着き水浴びをした後も常に明日の事で頭が一杯だった。お陰で気づいた時には外が暗くなっていた。
「明日は何をするんだろう?」
夕飯を食べ終えて布団の中に入った後も魔法使いについてしばらく考えていた。