言葉のかけら
1 おと〜言葉〜
体の奥から広がる感覚
それは体を覆いつくして
それでも止まらず
やがては溢れて
柔らかくて暖かな一筋の光になって流れ落ちる
遠くて近いどこかで
ふわり と音が鳴る
優しい気持ちになれる魔法
心の中に染み込んだ
たった一つの大切な音
2 おと〜かけら〜
形にする瞬間
足元から湧き上がる感覚
それは背中を駆け抜け
首筋を巡り
頭上へと昇華する
どこか遠くて近い場所で音が聞こえる
ぱきん
音が形を成した瞬間
体に残ったわずかな感覚が
一緒になって吐き出されていく
見えないはずの白い塊が
たゆたうようにゆるりと宙を舞う
そうして音が鳴り響く
更に遠くで
更に深くで
決して見えはしないけど
決して聞こえはしないけど
それはあの日に始まった音
それは割れて欠けてゆく音
3 存在〜言葉〜
どうしてここにいるのかと
何度も何度も考えた
幸せに出来ない自分
幸せになれない自分
想いは互いを辛くさせて
思いは自分を悲しくさせて
想いは内に秘められるけど
思いを断ち切ることが出来ずに
心はぎゅっと締め付けられて
心を外からかばうように
体を小さく丸めたまま
毎夜眠りについていた
壊れてしまえば楽だけど
壊れてしまえば傷つけるから
心の痛みに殻を被せて
涙の素顔に仮面を被せて
「大丈夫だよ」と微笑んでみせる
幸せには出来ないけれど
「支えてあげたい」その気持ちを
あなたが望んでくれる限り
私はずっと思い続ける
何も出来ない私に出来る
たった一つのことだから
4 存在〜かけら〜
傷つけているとわかっていても
突き放すことは出来ないままで
応えることは出来ないくせに
自分の望みばかり伝えて
自分の気持ちも分からないまま
ただ優しさに甘えてる
傷つけるのが怖いのか
失うことが怖いのか
傍にあるはずの温もりも
今は感じることが出来ず
心の奥底をすり抜けていく感覚を覚えるたびに
胸をぎゅっと握り締める
傷つけるのが怖いのか
離れてしまうのが怖いのか
想いに応えられないことも
想うことが出来ないことも
分かっているのにそれでもなお
「支えてあげたい」と望む想いに
何か想いを返したくて
「支えていて」と言葉にしたとき
心の奥で何かが割れた
5 まほう〜言葉〜
「傍にいて」
どんな痛みも
どんな辛さも
忘れることが出来る言葉
「支えたい」
という想いに応える
あなたが私にくれた言葉
欠けた心を満たしてくれる
あなただけの魔法の言葉
6 まほう〜ことばのかけら〜
始めはとても冷たかった
突き刺すような
流れ込んでくるような
そんな冷たさ
どれだけ暖かく感じていても
言葉と一緒に聞こえない音がなって
心だけが冷たくなった
罰なんだと
そう思ってた
ただ離したくなくて
それだけのために縛り付けていたから
だから
縛り付けるその言葉を言う度に
心が音と共に欠けていって
それが痛みと冷たさになるんだって
そう思っていた
自分を傷つけて
相手を傷つけて
それでも傍にいる価値はあるのかと
冷たくしたこともあった
自分から離れることは出来ないから
そんなとき
あなたは一瞬
悲しそうで
苦しそうで
辛そうな顔をするけど
すぐに何もなかったように
想いを受け止めてくれた
そうしていつか
冷たさにも
痛みにも
どこか慣れてしまった気がしたそんなとき
それは決して慣れじゃなくて
いつの間にか変わっていたのだと
不意に気付いた
冷たさが温もりに
痛みが安らぎに
そうしていつも聞こえていた「音」も
いつの間にか止んでいた
心の奥底にある何かがふわりと溶けた気がした
欠けていたのは心じゃなかった
欠けていたのは心を覆う氷だった
気付くことが恐かったのだ
自分の気持ちに
そうして自分で心を閉ざして
けれどそれでも心は求めてて
「支えていて」
と言葉にしたのは
「支えていたい」
と望んでくれたから
その気持ちに応えたかったから
そう言い聞かせてた
離したくないと思う気持ちも
ただなんとなく気に入っているからなんだと
そう思ってた
でも、みんな嘘
そんな事、自分が1番知っていたんだ
いつの間にか
世界が歪んでた
目元を拭われて
涙を流していたのだと
初めて気付いた
不思議そうに
困った顔を浮かべたあなたが
優しく頭を撫でてくれた
ずっと私は包まれていた
この優しさに
この温もりに
私の言葉が
あなたを縛り付けていると思っていた
でも、縛り付けられていたのは私の方なのだ
最後に溶けた氷のかけらが心の中で小さく音を立てて消えた
撫でてくれるその手を握って
私は氷の鳴らした音を
そのまま素直に言葉にした
ずっと隠していた言葉
ずっと眠っていたかけら
「傍にいて」
世界が変わる魔法の言葉
「傍にいたい」
世界が変わる魔法のかけら