プロローグ
プロローグ
人間、自分と同じようなタイプが自然と目に入るようで。
自分にとってはそれが"サクライ ヨシコ"だった。
女子という生き物は必ず群れを作り、その中での人間関係やヒエラルキーを大切にするものだと決めつけていた。(男も似たようなもんだが)
しかし彼女は違っていた。一人でいることが殆どだし、かといって周囲から疎外されている訳でもなく。
クラスの中でも独特な存在感を放っていた。
一人でいる点までは自分と同じなのに、彼女は孤独というより孤高の存在であり、無性に劣等感を抱かせた。気がつくと彼女の動向ばかりを追うようになっていた。
―――モテる、モテないの基準はよく分からないが、自分はモテる部類に入っているという自覚はある。
顔が整っているからかもしれない。運動部でレギュラーを張っているからかもしれない。勉強も。
個人的には、女の子の扱いが他の男子より慣れているからだと思っている。
二人の姉に一人の妹。女系に挟まれた哀れな弟は生き残るために必死で環境に適応した。結果、
"女"という生き物に何の幻想も抱かなくなった。彼女を認識するまでは。
―――私はイケメンが好きだ。好きだったはずなんだけど。
たまたま席替えで隣の席になったアイツ、"クロキ"クロキ……、下の名前なんだったかな。
最初は殆ど話すことなくて、気まずくてこっちから偶に話振るくらいだったけど。
なんか優しいかも。地味に面白いかも。じわりジワリと侵食してきて、なんか気になる!
でも、友達には絶対相談できないタイプ。こうゆうパターンも初めてだわ。
修学旅行の醍醐味といえば。新幹線だ、県外の観光地だ、恋バナだ、非日常感だというのが大多数なのだろう。
私はといえば。"席決め"、"班決め"、"部屋決め"というワードがついて回る。
集団を形成することを強要されるなんて!
私はいつものポーカーフェイスの下で静かに阿鼻叫喚していた。戦々恐々。
周囲の女子や男子が集団を形成しつつある中、その場から動けずにいた時。
「"サクライ"さん、ちょっといい?」
聞き馴染みのない声が後方から私を呼びかけた。
「もし班決めがまだだったら私達と組まない?ちょうど四人になるしさ!」
元気な声。クラスの中心人物、いや中心女性?"コンノ アスカ"その人だった。なんでコンノさんが?
「 」人と話す準備が出来ておらず第一声が出てこない。時よ、止まれ――
「あっ、急にごめんね?私達もさっき組んだから中々他に組んでくれそうな人がいなくて」
私の様子を見かねて話を繋いでくれるあたり、流石というべきか。
コンノさん以外のメンバーは若干距離をとって様子を見守っている。 一人は…"イケダくん"?!
コンノさんに負けず劣らずの"リアジュウ"だ。この二人に挟まれての旅行など不可能だ…。
内心青ざめながらもう一人に目をやると、あまり見慣れない男子。"クロキ"くん、だったろうか。
どちらかと言えば同属な感じで話しやすそうではある。でもこの二人に何故クロキくんが…?そして何故わたし…。
「嫌だったら全然いいんだけど、個人的にもサクライさんと話してみたいと思ったから」
「わ…私もコンノさんと話してみたいと思ってました。だから…、迷惑じゃなければ、班」
「良かった!じゃあ宜しくね!」
最後まで言わせて⁉︎ と心の中で突っ込みつつ愛想笑い。
ただ、コンノさんと話してみたかったのは本当で。
一種の憧れの様なものだ。
「サクライさん、急にごめんね。宜しく!」
「よろしく…」
二人とも若干緊張気味で挨拶をしてくれ、その百倍
の緊張感で答えた。いよいよこの四人で班を組む事の実感が湧いてきた。
一人で残らなくてほんとうによかった。本当に