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フェイクヒーロー〜Fake Hero〜  作者: ベーコン・ライス
1/11

プロローグ〜旅立ち〜

これは、主人公が異世界に行って旅立つまでのプロローグ。




さて、これは一体どうしたことか?

ゲームでしか見たことのないお城の広間のような所に、学ラン姿の俺が突っ立っているじゃないか。

つい5分前までは学校の教室にいたというのに。

俺はなんでこんなところにいるんだっけ? 

・・ああ、そういえばいきなり橙色の髪をした丸顔の可愛い女の子に手を握られてここに連れてこられたんだっけか?

たしか「あなたは我々が探し求めていた勇者です、お願いです!どうか私たちの世界を魔王から救ってください」とかなんとか言ってたような。

辺りを見渡してみると、鎧をまとった男の人と、ドレス姿の女の人が何人もいた。

死んだわけ・・じゃないよな?


「勇者様!ご気分はいかがですか?」


人だかりの前の方から、さっきの可愛い女の子が出てきた。

勇者様扱いされてるよ、この俺が。

いきなりの急展開に、俺は緊張しながら女の子に聞いてみた。


「ええっと・・よくわからないんだけど、ここはどこ?君は誰?」

「それにつきましては、私からご説明させていただきます。勇者様」


いきなり横から知らない白髪のおっさんが出てきちゃったよ!見たこともない部屋で、見たことのない格好の人たちで、もうすでに俺の頭は限界だったのに・・容赦ないな、このおっさん。

俺は眉間にしわを寄せたが、横から入ってきたおっさんは続けて話す。


「ここはフラワーカントリーという国で、私は国王です。で、こちらは私の娘です。実はつい先日魔王が復活してしまい、この国が滅亡の危機にさらされております。その証拠に最近ではモンスターが活発になり、魔王軍の四天王が動き始めております。国王としてその事態を見過ごせません!そこで勇者殿に魔王を倒していただきたく、この度召喚させていただいたのです」

「なるほど」


あんまり頭の中に入ってこなかったんだけど、とりあえず頷いておいた。

情報量が多すぎて処理しきれなかった。


「えーと・・つまりあれだな?要約すると魔王を倒せってか?」

「さすがは勇者殿!ご理解が早くて助かりますな!」

「私が連れてきたのよ!お父様!」


感心する国王に、胸をはる可愛い女の子。

なんだかおめでたい親子だった。


「でもなぁ、魔王を倒すとかさぁ・・物騒じゃん?俺努力とか運動とかダメなんだよねぇ。はっきり言って人選ミスだな」


俺は胸を張って言ってやった。

だってそうだろう?今まで何かを頑張り続けたこともないし、運動とかも超苦手なんだ。

そんな俺が魔王を倒す勇者?笑わせる。

取り柄といったらマジックぐらいだ。

帽子からハトも出せるぞ。


「しかし勇者殿、我々の見立てではあなたは歴代最強のステータスなのですぞ!そのために、残り少ないマナをなんとかかき集めて、やっとの思いで召喚させていただいたのです」

「・・本当に?」


俺は頭を掻きながら疑って見せた。

この俺が歴代最強のステータスなんて信じられん。

でも、異世界にきたことによって、俺の隠れていた才能が出てきちゃったりするのかもしれない。

そんな淡い期待を抱き始めた。


「はい、まずそこらへんのモンスターなんかは勇者様の相手にならないでしょう」


それを聞いて少しばかり自信と勇気が湧いてきた。

国王が言うんなら間違い無いんだろう。

とはいえ、まだまだ勇者になるという実感はないが。


「自信を持ってくだされ!私の娘も同行させます。まずは自己紹介をしましょう。私からさせていただきます。私は国王のシルバーです。この国を統治する者です」

「改めまして勇者様。マリーと申します。国王の娘でプリンセスです。役職は魔導師です。お役に立てるよう頑張りますのでよろしくお願いします」


二人は深々とお辞儀をしながら俺に向けて挨拶を行った。


「よろしく!俺の名前は青花セージ!役職は勇者・・でいいのかな?」


俺が自己紹介をした途端広間の空気が固まった。

どこかでぱりんとグラスの割れる音もした。


「えっ・・?今なんとおっしゃいましたか?勇者殿」

「俺の名前変かな?青花セージだけど」

「えっ・・?青花セージ・・ですか?桐島ツツジではないのですか?」


シルバーは落胆の表情を見せ、娘のマリーは会話に参加することなく客室のテーブル上にある肉料理にがっついていた。

どうやらお話よりも食べ物の方に興味津々らしいぞ、このマリーとかいう子は。

というか、なんだ?この空気は?俺なんか変なことしたか?

そして桐島ツツジというその名前、どっかで聞いたことあるような・・?。

だめだわからん、もう頭が限界だ。


「誰が偽物を連れて来いといったんだマリー!!」

「すみませんお父様〜!!」


むにむにとシルバーにほっぺたをつねられて、涙目になるマリーだった。

ほっぺをつねられながらも、手から食べ物を離そうとしていないが。

それにしても、勝手に俺をこんな世界に連れてきておいて偽物呼ばわりとはなんだ!?むかむかするじゃないか。


「いや、もしかしたら桐島ツツジ以上のステータスをしている可能性もなくはない。おいバジル、あれを」


国王が指をパチンと鳴らすと、鎧と剣を身にまとった緑髪のバジルという男が出てきて左手を俺の右肩に当ててきた。

見た目は爽やかなオーラを身にまとう、イケメンといった感じだろうか。

いやー腹ただしいことこの上ない。


「失礼致します。ハンドスカウター」


そう言うとバジルという男の左手が光り、1分ほど経過した頃だろうか?俺の肩からその左手が離れた。

これはあれだな、おそらく魔法というやつだろう。


「どうだ?バジル?」

「この青年は我々が求めていた勇者ではありませんね。失礼ですがスペックが低すぎます。魔力、攻撃力、防御力、素早さのどれもが最底辺クラスです。おまけに童貞でぼっちのようです。器用力がやや高い程度です。これなら私の弟子の方がいい仕事ができるでしょう。こんなステータスは生まれてこの方初めて見ました」

「なんてことだ!やはりか・・やはり桐島ツツジでないとダメなのか!」


がっくりとうなだれるシルバー。

話を聞く限りではこっちの世界でも俺はダメダメのダメスペックらしく、とても魔王軍と戦えないと言うことが判明した。

・・それにしても言い過ぎじゃない?バジルとかいう人。

童貞でぼっちは余計だろ。

さっきまでの歓迎ムードはなんだったのか?

間違って俺をここに連れてきたのは完全にそっちのミスだろ?

俺はちらりとマリーを見る。


「そもそもなんで俺を間違えて連れてきちゃったんだよ!!」

「だってあなたの机の上に桐島ツツジっていう名前の書いたジャージがあったんですもの!」


あー、なるほどね。

俺の机の上に桐島ツツジのジャージがね。

ははーん・・さてはこの子ダメな子だな?


「普通確認するだろーが!?」

「わーごめんなさい!」


俺はマリーの両ほっぺたをつねってやった。

餅みたいに伸びる伸びる。

それを前にシルバーは一人頭を抱えており、それを気の毒そうに見つめるバジル。


「じゃあさっさと俺を元の世界に返してもらおーか?」

「無理ですー!さっきあなたを召喚するときに使ったマナで転移に必要なマナは最後だったんです!最近魔王軍が活発になってきているおかげでマナは減少傾向ですので、転移するのに必要なマナが溜まるのに1年ほどかかります!」


な、なんてことだ!それじゃあおうちに帰れないじゃないか!

思わずホームシックが発動しそうだ。


「なんだとー!?ちなみに魔王を倒さないとどうなるんだ?」

「この国は魔王のものとなって、あなたも元の世界に帰れませんよ、偽勇者さん」

「誰が偽勇者だ!?ちょっと可愛いからって調子のんなよ!?このポンコツプリンセス!!俺の名前は青花セージだ!」


俺はもう一度マリーのほっぺに掴みかかろうとした。

が、それを察してか人混みの中に逃げられた。

人混みから顔だけを出してマリーはこう言い放った。


「・・ちっ!わかりましたよ。セージと呼べばいいんでしょう?」

「・・おい。いま舌打ちしたろ!?」


確かに舌打ちをした。

ニヤリと笑いながら。


「あなたの聞き間違いじゃないですか?」

「嘘つけー!絶対舌打ちしたもんね!この・・バーカ!バーカ!」

「バカって言ったほうがバカなんですよー!バーーーカ!」


気がついたら二人で興奮して言い合いになっていた。


「・・えーこほん、まずは状況を整理しましょう」


俺とマリーが言い合いになっていると、バジルが場を仕切りなおすように計らってくれた。


「まず、マリー様が最強の勇者ではなく最弱の偽勇者を連れてきてしまった件ですが、もう今となっては取り返しがつきません。そして偽勇者殿は元の世界に帰れずに困っていると、こうなっては選択肢はもう一つしかありません。シルバー様もマリー様も偽勇者殿も腹をくくってください」


これは、つまりそういうことだな?

誠に不本意だが、だがしかしやるしかなくなったってわけか、魔王軍討伐を。

ただ偽勇者っていう呼び方は余計だが。

うなだれていたシルバーは顔を上げ、深く息をすって吐いた。


「国王より命ずる!!偽勇者殿!そして我が娘マリーよ!各地に蔓延る魔王軍と魔王を倒し、このフラワーカントリーに平和をもたらすのだ!良いな!?」

「わかったからこの国の金をくれ」

「・・は?なんですと?」


俺はシルバーの前にすっと手を出した。

だってそうだろう?いきなり異世界に連れてこられて勝手もわからんのに一文無しで旅立てっていうのか?

おまけに俺自身最底辺ステータスで、なんの役に立つのかもわからない国王の娘が同行するのだ。

・・ほら今も飯食うのに夢中だよ、あのマリーとかいう女。


「あなた用意をしてあげましょうよ。身支度は必要ですわ」

「ローズ・・。お前がそういうのなら」


シルバーの後ろから優しそうな表情をした、マリーと同じ髪色のローズとかいう女が出てきた。

なんだ、話のわかる人もいるじゃないか。

おそらくマリーの母親だな。


「私たちの可愛い娘をよろしくお願いしますわ勇者さん。」

「ああ、マリーの母親か。善処はするよ」


ローズがニコニコと笑顔のまま手を出してきたので握手したのだが、握手した瞬間ジューという熱気が俺の右手に発せられ、おそらく何らかの魔法がかけられたものと思える。


「もしマリーの身に何かあったらこの手が溶けて無くなると思いますので、気をつけてくださいませ〜。ほほほほほ」

「むっ、娘さんには指一本触れさせませんのでご安心ください!!」


顔は笑顔なのに言うことは恐ろしい母親だ。

シルバーはともかく、俺はこの母親に一生逆らえないのであろう。

こうして、ローズに脅しをかけられた、俺と国王の娘マリーの冒険が始まった。

誠に遺憾ではあるが・・。

主人公は青花セージ、16歳、群青色の短髪をしております。


身長169cm、体重55kg、少し細めの体型をしておりぼっちです。

基本学ラン姿ですが、冒険を進めていくうちに服装が変わります。

ハチミツ好きのハチラーです。


特技はマジックでハトを出したりなんかできます。


器用力はやや高めですがそれ以外の能力は全て最底辺です、


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