悪役令嬢代行、始めました
「ふあーん、退屈~」
「平和が一番ですよ、エリザ様」
私は魔女エリザ。皆からは『永遠の魔女』と呼ばれている。
「それはそうだけど」
「スッ」
メイドがいれた紅茶を飲む。現在お城のバルコニーで午後のティータイム中。
そして「暇」と戦っている。
「ずっとお城住まいだからねぇ。ダーク、なにか面白いことない?」
「そうですね、これなんかどうです?」
執事の男、ダークが手鏡を私に渡す。
「あー、あれね。わかるわ」
「コホン」
「鏡よ鏡、世界で一番美しい者は?」
『ドレオ国の王女、リカ様です』
「……」
「パチン」
「ボン」
指を鳴らすと同時に魔法を発動。ソファーに豪華な手鏡の飾りを召喚した。
『!?』
「今なら更に、その汚れた鏡部分をピッカピカにしてあげるわよ?」
『コホン』
『世界で一番美しい方は言うまでもなくエリザ様でございます』
「うふふ、ちょろいわ」
(手鏡を買収した!?)
「んー、悪くなかったけど楽しめたのは一瞬ね」
「やっぱ退屈ー!」
「ん?」
「ザッザッ」
「どうかした?」
「魔女の方々が」
多数の魔女が城に入ってくるのが見えた。
ほどなくして数人がこちらへ。
「エリザ様、ご相談事が」
「サーリ国とヒミノ国が仲違いを起こしまして。このまま放置すれば下手をすれば戦争も」
「その2国は非常に仲が良くなかった? サーリ国の王女がヒミノ国の王子に嫁いだりしてたし」
「その嫁いだ王女様が元居た国、サーリ国に逃げ込みまして」
「一体何が」
「どうもその、調べたところ逃げた王女が非常に打たれ弱かったようで。ヒミノ国側もかなり気を使っていたようでしたがそれでも事あるごとに泣き出してしまう始末」
「うーん。流石に弱すぎない?」
「何不自由なく育ってしまったのが原因でしょう」
「エリザ様は今はなき、レア家を知っていますよね」
「ええ。知っているも何も私が潰したようなものだからね。まーわかりやすい悪人どもだった」
「そこの悪女が居なくなって平和になったのですが、平和になりすぎてしまい」
「ふーむ、バランスって難しいわね」
「そういうわけでして、両国の仲を取り持っていただきたいと」
「わかったわ」
その後、両国の間に入り和解へと導いた。
「んでも解決してないわね」
「確かに平和なのは変わりませんからね」
「んー」
手鏡を持ち私を映しだす。
「ピコーン!」
「どうしました?」
「いいこと思いついた!」
「私ってほら、200歳だけど若く見えるじゃない?」
「そうですね。確か魔法を若年で極めて永遠の命と永遠の若さを保つ……、もしや」
「ふふふ、そう。私がその役をやればいいのよ!」
キレッキレの頭脳。やはり私は天才か。退屈もしのげるし!
「それにもしかしたら王子との甘い恋に発展しちゃったりなんかしたりして!」
「さすがにそれは……」
「おや、不服? ダーク」
「王子がどうのってのは」
「ははーん、さてはアナタ」
「!?」
「私が王子様のものになったら仕事はどうすんのってことを言いたいわけね」
「……まあそんなところです」
「まだ若いんだからどこでもやっていけるわ」
(ハァー。エリザ様、魔法のことに関しては天才なんだけどなぁ。他のことに関してはからっきしで)
「さて、それでは準備を」
「魔女たちをここへ」
3年後。
「新興貴族マダム家、そこの長女になったわ」
「ここまできてしまいましたか」
「準備は整った。後は行動のみ!」
そう! 私は走る! この悪役の道を!