待ちに待った初試合 VS城西 (1)
さあ、試合が始まった。うちは先攻だ。
・・・昨日、終わり際に皆にこのチームの方針を伝えた。
それは、「打ち勝つ野球」をすることだ。
このチームは、投手は弱いが野手はそろっている。そこで何とかカバーするというわけだ。
そのためには出塁して、打ちまくる。それがこのチームの目標だ。
マウンドの相手投手の投球練習を見る。さすがは強豪校のピッチャーだけあって、球速は大分速い。しかし、そこまで凄みも感じない。エースではないのだろう。まあこんなチームにエースなど当てないだろう。
ならば、こちらが引きずり出すだけだ。
投球練習が終わり、内野は球回しをする。
さすがに内野手の動作も早く、肩が強いが、何となくさっきからだらけた印象だ。まあ弱小校相手にモチベーションが上がらないのだろう。
打席に1番の柴崎さんが入る。
いよいよプレイボールだ。
投手が投球動作に入る。ゆったりとしたモーションから速球を投げ込む。
見る。ストライク。柴崎さんは落ち着いた様子で構えなおす。
2球目、投げる。今度は振りにいった。三塁線を鋭く転がる。ファール。
柴崎さんはバットコントロールが非常にうまい。内でも外でも逆らわずに広角に打ち分ける技術を持っている。
3球目、投げる。今度は変化球だったが、柴崎さんは落ち着いて見送った、ボール。
柴崎さんは選球眼もいい。そのため、高確率で出塁が見込める。だから1番に置いた。
4球目、速球を投げ込む。打ちにいく。鈍い金属音がした。
打球は三遊間に鈍く転がる。ショートが捕ってすばやく投げるが、一塁はセーフ。柴崎さんの俊足が勝った。
これで無死一塁、打席には2番の増田さん。
投手がセットから投げ込む。1球目は見てボール。
バントのサインは出さない。増田さんはチームバッティングを常に意識している。加えて、流し打ちが非常に上手い。増田さんが2番に入れば、バントではなく進塁打を狙い、あわよくば無死一・三塁が作れる。
2球目を投げ込む。変化球、増田さんが打つ。
打球は一二塁間深くに転がる。セカンドがぎりぎり届き、一塁に投げる。アウト。
しかし、これで一死二塁だ。バッターは3番の石村さん。
ピッチャーが1球目を投げる。ストライク。
石村さんはバットコントロールもよく、パワーもそこそこある。バントもうまいし、チームバッティングの意識も欠かさない。つまり、何でもできるのだ。
その後3球見て、2ボール2ストライク。
5球目を投げる。石村さんがそれを打つと、鋭い打球がショートの頭を超えていった。レフトが2バウンドで捕球し、ランナーは三塁で止まった。
一死一・三塁で4番の俺に回る。
バッテリーも俺のことを知っているのだろう。少し慌てて何か話している。
このチームの理想的な攻撃ができた。1,2,3番に出塁力の高い選手とチームバッティングがしっかりできる選手を置いて、4番で返す。ここからが俺の仕事だ。
捕手が戻り、投手がセットする。そして、投げ込む。見て、ボール。
・・・自分の打撃の何が優れているかと聞かれたら、自分では総合力だと思っている。ミート力、長打力、勝負強さ。全てで高水準の能力を持てている、と自負している。
投手が2球目を投げる。変化球だ。しかし、甘い。振りにいき、芯で捉える。
鋭い金属音、ボールは鋭く高く飛び、やがてフェンスの外に落ちる。
ホームラン。相手投手ががっくりとうなだれているのを横目に、ホームを1周する。
ホームで石村さんと柴崎さんが嬉しそうに待っていた。
ベンチに戻ると、皆から祝福される。
・・・よし、これで3点取った。このまま勝つぞ!