試合に向けてチーム作りを
練習は少し本格的なものにすることになった。
その日のうちから、ノックも前より厳しいものになり、1年生はやや戸惑っていた。
上級生はある程度の打球は普通にさばいていた。これならもう少し厳しくても大丈夫だろう。
今日の練習が終わる。皆は部室で帰り支度をしているが、俺は石村さんに話があった。
「どうした神谷、なんだ話って?やっぱり試合のことか?」
「そうですね、試合に向けてのことです。・・・ポジションについてなんですが」
今は一か所でのノックをやっているが、試合に向けてポジションを決めてシートノックはするべきだろう。
「ああ、確かにそろそろ決めていくべきだな。9人しかいないし。何か構想はあるのか?」
「いえ、今の自分には決められないです。だから、先輩たちの事情にも詳しい石村さんに決めてほしくて」
先輩方の希望は優先したいが、それぞれの事情も分からない。ここは石村さんに総合的に見て判断してもらうべきだろう。
「そうだな・・・。じゃあまずバッテリーなんだが、神山と下山で組んでくれないか?
「え?でも・・・」
「いや、実はな、俺も柴崎も本職ではないし、希望したわけでもないんだよ。本来、俺はサードで柴崎も外野がやりたいんだ。お前らにやってもらえると助かるんだ」
そうだったのか。ならば断わる理由もないか。下山にも後で聞いておこう。
「わかりました。じゃあそうした時のポジションを考えましょう。」
「そうだな・・・そうなったら大体決まるな」
「2年の先輩たちはポジションはそのままでいいんですかね?」
「ああ、あいつらは今のポジションが希望だからな」
そうなると、バッテリーは下山と俺、内野は一塁武藤さん、二塁増田さん、三塁石村さん、遊撃手後藤さんか。外野は柴崎さんをセンターにして、能力的にレフト佐田、ライト宇野かな。
「よし、こんなもんかね」
このポジションで話はまとまった。
「そうですね。あと、投手は下山と柴崎さん以外にできる人はいないんですか?」
できれば投手は何枚かほしい。
「あー・・・俺や二年はできないな。やったことはあるが、センスがなかったな」
「そうですか?後藤さんなんかは肩強いし、できるんじゃないですか?」
後藤さんの強肩はぜひマウンドで生かしてほしいのだが。
「確かに後藤はいい球投げるんだがな・・・マウンドに立つとノーコンになるんだよ。何より、本人がやりたがらない」
意外だ。あの人なら投手はやりたがるタイプだと思ったのだが・・・。
「そういう神谷こそ投手はやらないのか?そんな強肩を持ってるのに」
「あ・・・すいません、投手はできないんですよ。・・・ちょっとトラウマがあって、マウンドに立てなくて」
「あ、そうなのか。すまないな・・・」
そう、俺には昔、投手としての暗い思い出がある。今でもマウンド立てば体が震えるくらいのものが。
「まあ今はこれくらいで十分だろ。明日からこの形で本格的に実践練習に取り組もう!」
石村さんは明るく言った。
そうだ、これからどんどんチームを強くしていくんだ。想像するだけでもワクワクしてくる。
もうすぐやってくる城西との試合、絶対に勝つぞ!