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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
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あいつらに勝つために

 春季大会での天道中との試合が終わって1週間ほどが経った。

 今日は春季大会の決勝戦が行われ、天道はそこに出場した。

 そして見事に勝利し、天道中が春季大会の優勝、全国大会への出場を決めた。


 その瞬間をみんなで部室のテレビで見ていた。

 勝利が決まった瞬間、沈黙が続く。

 そして、それに耐えかねたように後藤さんがポツリとこぼした。


「俺らこのチームといい試合したのに、なんでベスト16にも入れないんだ・・・」


「城西すらベスト8まで言ったのにねー・・・」


 武藤さんもそれに同調する。

 溜息の中で俺は立ち上がった。


「春のことはもういいじゃないですか!今度は夏大が来ますよ、そこで見返しましょうよ!」


 そう言うと、皆もぞろぞろと立ち上がってそうだなー、と言いながら練習の準備を始める。

 そして、今日も11人での練習が始まる。


 あの試合の後、皆で課題を洗い直した。

 県下ナンバーワンの渡部さんが相手とはいえ、ほとんど打てなかった。次の対戦ではそうはいかないように打撃を重点的に取り組むこと。

 ただ、守備は良い部分も多く見えた。

 3試合でほとんどノーエラー、再三のファインプレー。自身の付く内容だった。

 また、投手もいい内容が続いた。

 下山は平塚さんに痛打されたところもあったものの、それ以外はほとんど抑えていた。

 柴崎さんも天道相手に2イニング完璧に抑えた。これは今後も計算できるだろう。


 そんなこんなでチームは出来上がりつつある。

 そもそも天道中の後の試合を見ていると、あの学校とここまでいい試合をできたチームはない。

 だから、今の時点でもこのチームは県内トップクラスまで上り詰めているといっても過言ではない。

 だが、全国に出るためにはあの渡部さんを打ち崩す必要がある。それだけの打力を今からでも鍛える。


 

 今日の練習が終わった。

 春季大会以降取り組んでいる特打も少しずつ実を結び始め、皆普通に外野まで飛ばすほどの打力は備え始めた。

 あの大会以降、練習試合の誘いが増え、特に中堅ぐらいの学校と試合を多くこなすようになった。

 その試合でも攻守にレベルの高いプレーができるようになってきた。 

 現在組んでいるメニューも俺が作ったものだったが、チームに合っていたようだ。


 練習が終わって帰り支度をしているとき、石村さんに呼び出された。


「石村さん、何か用ですか?」


 呼ばれてベンチの方へ戻ると、石村さんと柴崎さんが待っていた。

 

「ああ、いやそんな大したことはないんだがな、今後について話を聞いておこうと思ってな。」


 そう言うと、一度間を空けてから石村さんは続けた。


「・・・神谷はこのチームがどこまで行けると思う?」


「どこまでというと、大会のことですか?」


「ああ、大会でどこまで勝ち進めると思う?」


 そう言われ、やや悩む。

 個人的には全国優勝を目標にしている。ただ、まだそこには到底至らない。


「・・・県大会優勝ですかね。」


 悩んでそう言った。


「今の状態で行けると思うか?あの天道にもう一度当たったとして、勝てると思うか?」


 そう言われると微妙なのだ。 

 この春季大会ではうちは実質2位とまで言われる強さを見せつけた。

 ただ、1位とは大きい差がある。


「今のままでは微妙でしょうね。ここから何とか勝てるまでもっていきたいと思いますが・・・。」


 石村さんも神妙にうなずく。


「俺もそう思う。今回呼んだのはな、その対策についてなんだ。」


 石村さんはそう置くと、続けてこう言った。


「・・・何人かのコンバートを提案したいんだ。」

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