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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
33/36

狙う金星 VS天道 (7)

 8回を迎える。そこで、下山と柴崎さんを交代する。

 柴崎さんはもう肩はできているらしく、準備万端のようだ。

 下山も最後まで投げることができないのを悔しがってはいるが、おとなしくライトの守備につく。


 柴崎さんはこの前の試合で2イニングを投げてパーフェクトで抑えていた。天道中も、柴崎さんのこのシームの投げ分けには所見では大分手を焼くことだろう。


 そうして打者は打席に入る。

 最初はツーシームを要求する。外角に入ったボールはストライク。バッターは様子を見てくる。

 2球目はムービングファスト。これは内角に決まり、ストライク。追い込んだ。

 3球目はワンシームを高めに要求する。ちょっと外れたが打者は振ってきて、打球は三塁線切れてファールとなった。

 打者も変化が安定しない柴崎さんのボールに少し困惑した様子だった。

 4球目はチェンジアップを低めに要求する。ボールがリリースされると、タイミングを崩されたバッターはあっけなく空振り三振となった。

 これで1アウト。いい感触で先頭を斬ることができた。


 この後の二人も多様なムービング系のボールを打ちあぐね、チェンジアップにタイミングを崩され、凡退していった。

 こちらに勢いがある中できっちりと三人で抑えたのは大きい。これでますますこちらに勢いが傾いただろう。

 

 「ナイスピッチです柴崎さん!」


 ベンチへの帰り際、柴崎さんに声をかける。

 

 「・・・ああ、そちらこそナイスリード。助けられたよ。」


 検挙に柴崎さんがそう答える。


 「いやいや、柴崎さんの手数の多さがあってこその俺のリードですから!変化球も全部完成度高いですし、素晴らしいボールでしたよ!」


 「・・・まあな。俺はエースではないが後輩の尻拭いくらいはしてやるさ。」


 柴崎さんはそう言うと打撃の準備を始める。


 そういえば以前柴崎さんと話した時も同じようなことを言っていた。

 確か城西との練習試合後の練習で話した時だ。





 

 「こんにちは柴崎さん、この間はナイスピッチングでした!」


 試合明けで初めての練習の前に、先に来て練習の準備を始めていた柴崎さんに話しかけた。


 「・・・神谷か、ありがとう。」


 柴崎さんはこちらを振り返ってそう言うと、黙々と準備を再開していた。


 「・・・あれだけの投球ができるならエースとしてもできるんじゃないですか?」


 俺がそう言うと、柴崎さんは動きを止めてこちらに向きなおった。


 「・・・俺は日によって投球スタイルが変わってしまう。シームの感覚は繊細だからな。それに俺に一試合投げ切る体力も決め球もない。だから後半は攻略されてしまう。だから俺はエースにはなれない。」


 無表情のまま柴崎さんはそう言い切った。

 無口な人だが、しっかりと考えを持っている人なんだと感じる。


 「・・・でも、もしピンチにでもなったら俺を頼ってくれればいい。」


 「・・・え?」


 「下山も、エースとしてはまだまだ未熟だろう。俺も力は貸せるさ。」


 そう言って立ち上がると、そのまま準備のために道具入れまで歩いて行った。

 相変わらず無表情だったが、なんだか下山さんが頼もしく見えた。






 あの時もピンチでは自分を頼れと言ってくれた。まさに今日、下山が前の回崩れてしまった。そういう時は投げてやるから頼りにしろということなのだろう。

 実際柴崎さんはこの回完璧に抑えてくれて、とても頼もしかった。

 やっぱり副キャプテンだ。無口でも、雄弁ではなくとも、頼もしい。そう改めて感じた。


 流れを作って迎えた8回の裏だったが、下位打線からということもあり、渡部も疲れを見せない投球で8,9番を連続三振で斬って取る。

 柴崎さんは9球粘るも、最後は力でねじ伏せられ、ピッチャーゴロで8回は終了した。


 さあ、いよいよ最終回だ。4-3、点差は僅か1点。この表を抑えて流れに乗れば、サヨナラだって全然あり得る。

 まずは表を守りきることだ。ここは絶対抑える。

 そう強く念じてベンチを出ていった。

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