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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
31/36

狙う金星 VS天道 (5)

 1-0、1点ビハインドの接戦で迎えた6回は、これまで通り投手戦で進んでいった。

 6回の表、8番から始まる天道の打線を、下山は回を重ねるごとに球威が増しているような投球で三人でピシャリと抑えた。

 

 しかしその裏、相手のエース渡部も負けておらず、それどころか遥かに上回る投球を見せつけ、圧巻の三者連続三振に斬って取った。


 ここまでは完全に投手戦の様相だが、最初からこの試合の展開は腑に落ちなかった。

 まあ相手の渡部投手のピッチングはこんなものだろう。今のうちでは太刀打ちできない、それはある程度想定内ではあった。

 疑問なのはなんで天道ほどの名門がここまで下山相手に打ちあぐねているのかだ。

 

 天道というチームは投の渡部と打の平塚の二人で成り立っているチームだ。チーム全体の打力はあまり高くはないとは言った。

 しかし、仮にも県下ナンバーワンとも言われるチームだ。全国大会にだって出場している。そんなチーム相手に下山がここまで通用するとは思っていなかった。

 今7回まで来て下山が許したヒットは僅かに1本のみ。これから4番に座る平塚以外の打者からは一本もヒットを打たれていない。

 いくらなんでもここまで打てないだろうか?県内トップクラスの学校が。

 何かあるのではないか。ずっとそう思っていた。

 

 下山は今も闘志を燃やして準備をしている。天道を抑えていることが自信になっているのだろう。この状況を疑問になんて到底思っていない。

 (警戒しなければならない。)

 声に出せば周りを不安にさせるかもしれないため、自分の心の中でそう呟く。


 兎にも角にもこの回をしっかり抑えよう。打順は2番から、ここが一番の鬼門だろう。

 打者が打席に入り、7回の表が始まる。

 まずストレートを外に。威力十分な球が投げられる。それを簡単にバッターはセンター前に弾き返す。

 え、と思っているうちにバッターは一塁に到達していた。

 ・・・ここまで平塚の一打席目以外パーフェクトで抑えてたのにこんなに簡単に打たれた?

 やはり何か隠していたのか?

 

 そう思っているうちに3番が打席に入った。

 いかんいかん、集中しなければ。雑念を払ってマスクを被る。

 1球目、さっきのように初球狙いの可能性もある。とりあえずストレートを外す。

 2球目はスライダー。これも外して2ボール。

 3球目はカーブを外に。これを打ちに来るが三塁線に切れていきファール。

 2-1でストレートを低めに構える。いいコースに来たがこれも打ちに来る。振り遅れて打球は一塁ベンチ方向に飛んでいき、ファール。

 2-2だ。スライダーで空振りを狙う。外に構えると、しっかりそこに投げ込んできた。いい球だ。

 そう思ったが、これも簡単に弾き返される。セカンドの頭上を越えて右中間に落ちる。

 一塁ランナーは二塁を蹴って三塁へ。バッターは一塁で止まる。

 まただ、急に打たれ始めた。何でだ?ここまでいいピッチングをしていて大きな変化もこの回にあったわけではない。どうして急に攻略されるんだ。


 マウンドに内野陣が集まる。


 「大丈夫だ。まず落ち着いてアウトを取っていこう。」


 石村さんも少し慌てているように感じる。当然だ、ここまで順調だったんだ。誰だって焦る。


 「ここで失点するのは痛いです。なるべくホームにランナーを生還させないようにしましょう。ただバッターは4番なのであまり無理な前進守備は敷かないでおきましょう。」


 シフトの確認を終えてポジションに戻る。下山も戸惑っていたようだがまだ余裕はありそうだった。

 そして、4番の平塚を迎える。ここで一番嫌なバッターが来る。

 1球目はストレートを厳しいコースに入れる。いいところに決まってストライク。ここには反応しなかった。

 2球目はカーブを低めに外す。ここも反応しない。

 3球目もカーブを外に外す。これも見送り、2-1となる。

 4球目はストレートを低めに入れる。見逃したがストライク。これで2-2だ。

 5球目はスライダーを低めに、ストライクでもボールで良かった。渾身の球で空振りを取る。

 投じられたボールは、ストライクゾーンギリギリのいいコースに来た。ナイスボール、そう思ったが、振りだされたバットはそれを遠くにかっ飛ばした。

 左中間に大きく伸びていったボールは、スタンドに突き刺さる。

 3ランホームラン。


 これを恐れていた。ランナーがたまっての4番の一発。これがこのチームの点の取り方だ。

 下山の元に駆け寄る。しかし、下山の表情は不安どころか、未だに闘志あふれる顔だった。

 

 「神谷、すまない打たれてしまって。でも、俺はまだやれそうなんだ。まだ力が溢れてるんだ。」

 

 この状況でこんなことを言えるのも実に下山らしい。


 「わかった。俺もすまない、もっと上手くリードできたのに。ここからしっかり抑えよう!」


 「ああ!この回乗り切ってやる!」

 

 まだ闘志全開の下山はホームランを打たれた後とは思えない圧巻のピッチングで後続を抑えた。


 最初からあった不安は的中した。相手は本気を出していなかったんだろうか。ここを狙いどころとしていたんだろうか。

 どちらにせよ、3点取られたのは事実だ。4点差、厳しいかもしれないがあと3回で取り返してやる!

 そして、4-0で7回の裏の攻撃を迎えた。

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