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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
30/36

狙う金星 VS天道 (4)

 優勝候補の名門校と最近一回戦すら勝つことができていなかった弱小校。その差は歴然、天道の圧勝と思っていた観客の予想とは外れて、ここまで緊迫した投手戦を繰り広げている。場内の雰囲気もやや変わってきていた。


 県下ナンバーワンと謳われる好投手、渡部に食らいついて、県内トップクラスの打者、平塚が率いる天道打線をここまで4回1失点に抑えている下山には、場内からも声援が飛ぶようになった。

 

 「おう、頑張れよ神山のピッチャー!天道を倒しちまえー!」

 「ナイスピッチングだぞー神山の!」


 野次のような歓声に下山もやや動揺しているが、ますます闘志を燃やしているようだった。

 

 「おい、大丈夫か?あまり無理するなよ」


 その様子に若干不安を感じて声をかけに行く。


 「ああ、大丈夫だよ。なんか無限に力が湧いてくるようでさ・・・」


 余程アドレナリンが湧いているのだろうか。


 「わかった。まあ今日は何回で交代とかは決めてないし、行けるところまで頑張ろう」


 そう言ってホームの方へ戻った。

 今のところは順調だ。何とかあと半分乗り切りたい。


 打席に5番が入る。さすがに相手も対策をしてくる頃だろう。この回は勝負所だ。

 初球、内角にカーブ、ストライク。

 2球目はスライダー。外に外れてボール。変化球には反応しないのか?

 次にストレートを高めに外してみる。これは打ってくるが打球はバックネットへ、ファール。

 直球絞りで来ているのか。次もストレートを選択する。今度は低めに外す。しかし、これも打ってくると、脛ほどの高さのボールをレフト前にもっていかれた。ヒットとなる。

 しっかり外したつもりだったが、このチームは悪球打ちが上手いのか。


 続く6番は変化球で攻めてみる。やはり直球に絞っているのかあっさりと見逃して追い込んだ。

 4球目にスライダーを外に投げる。当てようとするが、あえなく三振。1アウトだ。

 7番にはあえてストレートで攻める。相手も打ちに来るがファールとなって2ボール2ストライクで7球目。

 低めにスライダーを要求する。下山が投球動作に移ると、ランナーはスタートを切った。

 仕掛けてきた、そう思って送球態勢をとろうとすると、打者も打ちに来る。エンドランか。

 しかし下山は要求よりも低めにボールを投げ込んできた。ベース上でワンバウンドするボールに打者は空振り、三振。


 しめた、と思い捕球しようとするが、ベース上で跳ねたボールは予想と違う動きをする。咄嗟にミットをその方向に動かし、何とか捕球する。しかし、送球態勢に入っていた体が崩れそうになる。

 まずい、送球できない。そう思いつつも必死に踏ん張り体を立て直す。そしてほとんど上半身の力だけでボールを送球する。

 リリースされたボールはいつもに比べると遅いスピードながらもなんとか二塁ベースに到達する。驚くことに構えられたグラブに狂いなく収まった。

 走者の足がベースに着くよりわずかに早くグラブがその足にタッチした。アウトだ。


 その間わずか2秒ほどの出来事だったが、アウトのコールと送球後にバランスを崩して倒れこむ俺の姿に、分かった観客は今起きた出来事を理解して盛大な拍手と歓声を送ってくれた。

 

 「神谷、ナイスプレー!!体は大丈夫か?」


 皆も駆け寄って声をかけてくれた。


 「ああ、大丈夫です。特に体に痛みもありません」


 精一杯のプレーだった。守備でここまで焦ったのも久しぶりかもしれない。でも何とかアウトにし、勢いはこちらに傾いた。それが喜ばしかった。

 これで3アウト、チェンジとなった。


 しかし、その裏の攻撃ではいつものごとく渡部が三人でシャットアウトし、勢いは再びあちらに傾く。シーソーかの如く流れは左右する。


 守備は何とかなっているが、攻撃は全く攻略の糸口も掴めていない。

 もうすぐ試合も終盤に入る。何とかしなければこのまま試合は終わってしまう。

 いまだに緊迫した雰囲気の中6回の表を迎える。

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