集まり始めた役者達
「・・・はぁ・・・」
家に帰り、ため息をつく。
チームを日本一にする。これは昔から目指していたことだし、実際陽光クラブでは日本一に導いた。
今回だってその気持ちに変わりはない。
・・・だが、この学校は、予想外の廃れっぷりだった。
あの後、驚いて固まっている先輩方に構わず、練習を始めようとしたが、まずグラウンドは荒れ、機材もろくに揃っておらず、まともな練習ができないと聞き、逆に驚かされた。
そのため今日はグラウンドや機材の整備など、明日以降の新入生の歓迎の体制を整えることになった。
実力を見るのも、他の新入生もいた方が色々都合がいいということで、練習は特にしなかった。
・・・こんなことで大丈夫なのだろうか。
まあ前も似たようなスタートだった。なんとかなるだろう。というより、何とかして見せる。
幸い、先輩方はみんな悪い人ではなさそうだ。上手いことやっていけば、きっとすぐに強くなる。
明日から、張り切っていこう!
翌日の放課後、グラウンドに向かうと、先輩たちはもう集まっていた。
「すみません!遅れました!」
「いいよいいよ、新入生はまだそういうものだろ。だから、入部希望者もこれからきっと来るさ」
石村さんがそう言った。
すると、グラウンドの入り口付近に人影が見えた。
おそらく1年生と思われる3人がこちらに近づいてきた。
そして、弱弱しく声をかけてきた。
「す、すいません、入部希望なんですが・・・」
「お、3人ともか!?」
「あ、はい。一応」
「おいおいやったぞ!これで1チーム組めるぞ!」
先輩たちが嬉しそうに目を見合せる。
「じゃあとりあえず自己紹介と行くか。俺は3年の石村だ。よろしくな」
そういって、先輩たちが一人ずつ名乗っていった。
「じゃあ、神山、お前も頼む」
そう言われ、挨拶をする。
「じゃあ、同じ1年なんだけど・・・神谷です。出身は陽光クラブです。よろしく」
「え・・・陽光で神谷って・・・」
同世代だとやはり知名度も高くなるだろう、3人は驚いていた。
「神谷も新入生だが、昨日から来ていてくれたんだ。じゃあそっちから自己紹介頼む」
そう言われ、1年生にしてはやや大柄な生徒が挨拶した。
「大山小から来ました宇野です。一応野球部で、外野やってました」
続いて、小柄な生徒が挨拶する。
「駒形小出身の佐山です。僕も一応、外野の経験はあります」
大山も駒形もあまり強くないチームだが、二人とも経験者のようだ。
最後に、長身な生徒が自己紹介した。
「丹波クラブ出身の下山です!ピッチャーやってました!よろしくお願いします!」
「へぇ、丹波でピッチャーか!」
丹波はこの辺ではかなり強い部類に入るチームだ。戦力として期待できるだろう。
「よし、じゃあ力試しも兼ねて、練習してみるか!」
そうして、初めての練習が始まった。