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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
23/36

来たる春大

 部員も11人になり、より一層春大に向けて練習に明け暮れる。

 新入部員の二人も大分チームに溶け込めているようだ。

 フリーバッティングは今は西郷の番だが、打球はほとんどが外野の後方に飛んでいく。

 しかし、センターを守る森山も負けてはおらず、飛んでくる打球をことごとく好捕する。


 「いやー、思ってた以上にやばいなあの二人・・・。ほんと入ってくれてありがたいよ」


 石村さんがしみじみと言った。


 「それに、神谷の考えたメニューのおかげでみんなもぐんぐん上手くなってるし、春大は期待できるな!」


 練習メニューはずっと改良しており、今は全員違うメニューを一人で作っていた。皆確実に課題を消化しており、前回の試合の時よりもかなり成長している。


 「じゃあ俺はこれから抽選会だから、後は頼んだぞ!」


 そう言って石村さんはグラウンドを出ていった。

 今日は春季大会の対戦相手が決まる抽選会の日だった。皆どことなく緊張しているのは相手が気になるからだろう。

 しかし、相手がどこかは関係ない。自分たちのやる野球をしっかりできれば、きっと勝てるはずだ。

 そうして練習を続けた。



 今日の練習が終了するころ、石村さんは帰ってきた。


 「おーい、皆おまたせ!トーナメント決まったぞ!」


 そう言うと、皆急いで石村さんの元へ集まる。

 石村さん手に持っていた紙を開き、こちらに向かって広げた。


 「今回の大会はこんな感じの組み合わせだ」


 うちの学校、神山中の名前を探す。・・・あった。初戦は谷川中。あまり聞いたことのない学校だ。


 「谷川か、あまり強くないところだな。去年のうちといい勝負くらいかね?」


 「ああ、これなら初戦は勝てるぞ!ここ5年くらい公式戦は一回も勝ててないからな・・・やっとそれは破れそうだな!」


 みんな嬉しそうにしている。そんな学校なのか。緩み過ぎはよくないが、余裕を持って戦えるのはよかったかもしれない。


 「え・・・これって、順調に勝ち進んだら3回戦で天道中と当たるんですか!?」


 増田さんが驚いたように声を上げる。


 「あー、そうなんだよね。割と早いところで当たっちゃったんだよね・・・」


 天道中は県内トップクラスの強豪校で、去年は全国大会にも出場していた。当然今回の大会も優勝候補の筆頭である。


 「・・・倒してやりましょうよ。ここを倒せば俺たちが県内最強ですよ」


 「神谷・・・。しかし、天道中は半端じゃないんだぞ。この前やった城西とは比べ物にならないくらいに強いんだぞ?」


 「優勝を目指すんならどっちみち勝たなければいけない学校でしょう。今の俺たちは大分強くなった。最初から諦めることなんてない。きっと勝てますよ」


 雰囲気はやや沈んでいた。上級生はその強さを十分知っているだろうから、なおさら勝てるとは思っていないだろう。


 「・・・まあそうだな。挑戦しなきゃ始まらないし、当たって砕けろの精神でやるしかないよな!」


 石村さんが明るく言う。


 「その前に1回戦と2回戦で勝つことだろう。なめてたら足元すくわれるぞ」


 柴崎さんが珍しく発言した。でも、確かにそうだ。まずは目の前に来る敵を倒さなければ始まらない。


 「じゃあ、皆で春大頑張って勝とう!」


 チームに気合が入る。初めての大会、頑張ろう!

 そうして、大会までがむしゃらに練習して、ついに大会当日になった・・・。

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