待ちに待った初試合 VS城西 (9)
注意! この世界は中学硬式野球が発展した世界ですので、中学なのに試合は9回まであったりします。そこのところ、ご了承のほどお願いします。
7回の表の攻撃、バッターは石村さんからだ。
相手のピッチャーは疲れているそぶりは見せない。むしろ回を追うごとに球威が増しているようだ。さすがは強豪校のエースだ。
しかし、そうしているうちに点差はもう2点しかない。何とか追加点を取ろう。
ピッチャーはストレート攻めで来ていたが、石村さんはそれをファールにしていく。
たまに挟んでくる変化球にもうまく合わせてカットしている。
どちらが粘り切れるかの勝負で、次でもう13球目、ピッチャーが投じると、伸びのある速球が高めに伸びていく。やや外れていたかもしれないが、石村さんは振っていった。
しかし、バットはボールを空振り、三振となった。
打席に向かう際、戻ってきた石村さんが語り掛けてきて、ボールの威力がどんどん強くなっている。最後なんかは打てる球じゃなかった」
そう告げてベンチに戻っていく。
やはりあのピッチャーは勝負が長引けば長引くほど燃えるタイプなんだろう。ならば対策は一つ、早めの勝負だ。
打席に入る。外野はまだかなり深いが、前の打席よりはちょっとだけ前には出ている。内野もかなり下がったシフトだ。
投手が構え、1球目を投じてくる。スライダーだ。
初球打ちを狙いバットを振っていく。しかし、スライダーの変化が思っていたよりも大きく、バットの先に当たってファールとなった。
前の打席より明らかにいい球を投げていた。ここまで尻上がりとは。
2球目はストレート。内角に入ってくるが、これも打ちに行く。
思ったより伸びがあり、球威に押されて差し込まれてしまった。打球はセカンドの真上に飛んでいき、セカンドフライとなった。
そして5番の下山は初球をピッチャーゴロに打ち取られ、チェンジだ。
まずいな。あの感じだと点を追加するのは相当難しそうそうだ。どうにかこの2点のリードを守っていかなければ。
そして7回裏を迎える。投手の交代だ。下山と柴崎さんがそのまま変わり、ピッチャー柴崎さん、センター下山となった。
「柴崎さん、今は何が投げられるんですか?」
マウンドに上がる柴崎さんに聞いてみる。
「そうだな・・・今はストレートとツーシームのほかに、ワンシームとムービングは未完成だがまあまあ。スリーシームも一応投げられるぞ。カーブとスライダーも投げれはするが微妙か。後、お前に教えてもらったチェンジアップも実践で使ってみるか」
柴崎さんは持っている球種は多い。まあ変化球自体は大したことないようなものばかりだが。シーム形はかなり投げ分けられるので、使い方によっては相手を抑え込むことはできる。
7番が打席に入る。ピッチャーが変わったんだ。おそらく見ては来るだろう。
1球目はストレート、ストライク。
2球目もストレートを低めに、ストライク。コントロールはいいので投げ分けがしっかりしている。
3球目はムービングを低めに。打者は打ってくるが捉えきれずにボテボテのサードゴロになってしまう。
石村さんが難なくさばいて1アウト。
8番が打席に入る。今度は初球にツーシームを投げる。打者は振ってきて完全に詰まらされた。
今度もボテボテのゴロが三塁線に転がる。
石村さんがうまくさばいて送球し、2アウトとなった。
ここまで微妙にシーム変化球を変えていったら打つのは苦戦するだろう。
9番が打席に立つ。
1球目はストレート。ボール。
続いてワンシーム、空振り。これで追い込んだぞ。
3球目にはチェンジアップだ。打者はタイミングを崩され、あえなく三振に倒れた。3アウトだ。
「柴崎さんナイスです!」
皆がそう声をかける。いや、実に素晴らしいリリーフだった。
しかし、相手も引いてなかった。
6番の後藤さんは三振、武藤さんはセカンドゴロ、宇野は三振だった。
「もう守備か。柴崎さん、頑張りましょう!」
柴崎さんもそれに小さく応えた。
あともう少しだ。絶対に抑えてやる。