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神童による野球部再興  作者: 芹沢翔太
15/36

待ちに待った初試合 VS城西 (8)

 6回の裏、7-3でリードしている展開、このイニングを抑えれば終盤もこっちが主導権を握れるだろう。

 下山はやや息が上がっているようだった。ここまで頑張って投げてくれたんだ、無理もない。

 予定としてはこの回で下山はマウンドを降り、柴崎さんに繋ぐ。柴崎さんも試合に出ているから肩はある程度温まっているだろう。だが、この回まではなんとか下山に乗り切ってもらいたかった。

 

 「下山、大丈夫か?大分疲れが見えるけど・・・」


 マウンドに声をかけに行く。


 「ああ、大丈夫だよ。何とかこの回までは抑えて見せるって」


 下山は、疲れてはいるものの、張り切ってそう言って見せた。

 

 「そうか、頼んだぞ。何か体に違和感とか感じたら絶対言えよ」


 そう釘を刺して戻る。

 相手バッターは監督の言うことを何やら真剣に聞いている。下山の対策だろうか。


 そうして1番打者も打席に入り、6回裏が始まる。

 さっきの相手ベンチの会話が気になるな・・・。とりあえずストレートを要求する。外角ギリギリだったが少し外れてボール。初球は見送られた。

 2球目はスライダー。これも見られるが、入ってストライク。

 つづいてカーブ。内角やや外れ気味だったが、打者は打ちに来た。

 引っ張った打球が三塁線を襲う。石村さんは飛びついてキャッチする。ライナーだったが、手前でバウンドしていた。

 急いで石村さんがファーストに送球する。しかし、バッターの足が速かった。セーフ。

 無死一塁、先頭を出してしまった。

 まずい。流れが相手に傾きつつある。

 下山の方を見つめると、大丈夫だ、といったような様子を見せた。


 二番が打席に入った。何とか抑えておきたい。

 1球目、スライダーを外に外す。これは見送る。

 2球目は内角にストレート。ギリギリのところに決まり、ストライク。相手も手が出なかったようだ。

 3球目もストレート、低めに構える。若干外れていた。

 ここまで3球見てきたが、そろそろ打ってくるか。

 4球目はスライダーを外に要求した。若干制球が乱れ、ボールになる。これで3-1だ。

 今のところ全球見送っている。しかし、甘い球はすかさず捉えてくるだろう。

 5球目、ここもスライダー、内角に構える。微妙なコースに決まる。どうだ。

 

 ボール、フォアボールだ。ここにも手を出さなかった。これで無死一・二塁。打者は3番だ。

 下山の方を見ると、こちらに気づいて悪い悪い、というようなポーズをとってきた。

 気丈に振舞っているようだが、大丈夫なんだろうか。

 

 3番が打席に入る。

 初球、カーブを投げる。やや外に外れているようだが、バッターはこれを打つ。

 打球は一二塁間に転がっている。抜けそうな当たりだがどうだ。

 そこに武藤さんが飛びつく。素晴らしい反応で見事捕球した。

 だが二塁は無理だ。一塁をアウトにするよう指示を出す。ベースカバーに入った下山にボールが渡り、アウトになる。一死二・三塁だ。

 

 ここで打者は4番、先ほどはホームランを打たれた。

 なんとかここで抑えねば、そうは思うが下山も限界は近そうだ。

 1球目、カーブを低めに、地面にバウンドしそうな低さで投げてくる。

 しかし、打者はそれを打ってきた。

 引っ張られた打球はレフト線に飛んでいき、フェアになる。

 レフトが追うが、ランナーは一気に二人帰り、打者も二塁に到達する。7-5だ。


 下山に駆け寄る。くそ、なんでカーブを要求してしまった。今までも打たれていたのはカーブなのに。リードが悪かった。下山に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


 「下山!すまない、また俺のせいで・・・」


 「何言ってんだよ、あれは打者がすごかったよ。やっぱ城西の4番なだけあるよなー」


 マウンドに行くと、思いのほか、下山は平気そうに話してきた。


 「下山・・・大丈夫か?もう変わったほうがいいんなら柴崎も投げらると思うぞ?」


 石村さんも心配そうに声をかける。


 「大丈夫です!いや、なんかここまでくるとなんか燃えてきちゃって。この回は投げさせてほしいんです」


 下山がそう言う。・・・こんな展開でこういうことが言えるなんて、やはり下山はすごい奴だ。


 「そういうなら・・・じゃあ頼んだぞ。神山も引きずるなよ!」


 そう言って石村さんは戻っていった。


 「下山・・・本当に大丈夫か?」


 「大丈夫だって。こっから頑張ろうぜ!」


 下山が元気そうにそう言う。本当に強い奴だ。


 そのあと、続く5番にはさっきよりも気迫のこもった投球でショートゴロに打ち取り、6番もその勢いのまま三振に取った。


 「下山、ナイスピッチ!」


 ベンチに戻り、下山にそう言うと、下山は笑って嬉しそうにしていた。

 この展開で笑っていられるのはさすがだ。

 

 点は取られたものの、流れはまだこっちにある。何とか逃げ切ってやる!

 


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