69話 物資到着4
随分時間がかかってしまったけれど、ようやく私達は目指していた建物にたどり着いた。
「やっと着きましたね菜摘殿」
「遠回りしたせいで長旅だったね」
いくら若いといえどクリスの顔に若干疲れがみてとれた。
私は見た目こそ若く見えるが、アラフォーなんで結構きてます……
「それにしてもここが救護院なんだ。確かにクリスが言う通り教会みたいな感じね」
十字架こそ建ってないが、厳かな佇まいのレンガ造りの堅牢な建物だった。
馬から降りて、入り口近くに建っている小屋の中にひとまず繋いだ。
「お前たちもお疲れ様!」
労うように身体を撫でてやり、小屋の横側にあった水場から水を汲んで与えた。
クリスも同じ様に自分の馬の世話をし始めた。
一通りの世話を終え、いざ建物内へ入ろうとしたら、目にみえない何かにやんわりと押し返された。
えっっと! なんだ?
「菜摘~これ何なの」
ボヨンとはね返ったノエルが目の前のそれをてしてし叩く。
「何だろね。弾力あるよ」
クリスを見れば『ああっ』って顔していて、特に危険はないようだ。
ノエルを真似て菜摘はとりあえず手の届く範囲をポンポンと片っ端から叩いてみた。
切れ目がなさそうだから、建物全体に張り巡らせていると思われた。
途中からパントマイムをしてる気分になり、可笑しさがこみあげてきた頃。
久方ぶりにあの方の声が聞こえてきた。
「待ちくたびれたぞクリスちゃん。菜摘!」
建物から杖を振りながらゆっくり歩いてこちらに向かってくる老女が一人。
ミザリー様だった。
「あっミザリー様! 遅くなってしまい申し訳ありません」
予定より私達は2日も遅れていたから平謝りだ。
「師匠! これでも早く来たんですよ」
クリスの言い分も決して間違いではないけど、待たせてしまったのだから謝らなくては。
「ミザリー様申し訳ありません。街道途中で橋が落ちているところがあって、山の中を切り開きながら向かうしかなくて、時間がかかりました」
「それは難儀じゃったな。遅くなったのはそういう事なんじゃなあ」
「はい。本当に申し訳ございません」
「お前達の他に遣い鳥をやった者達は、2日前に来よったぞ」
あれっもしかしてだけど拗ねてらっしゃるのかな……
「本当に申し訳ございません」
菜摘はぺこぺこ頭を下げるしかなかった。
「師匠。そろそろここを通してもらえませんかね?」
クリスは呆れつつも、中に入らないことには話が始まらないと催促した。
私とノエルが押し返されたものは、ミザリー様が張った結界だった。
クリスが結界を解除すればいいのでは? と思ったら、術者同士知り合いであれば、掛けた術者が対応するものらしい。
誰が解除したって問題ないのでは……と素人的には思うけれど、そういうのはマナーの問題らしい。
「ほれ解除したぞい。皆こっち来やれ」
ミザリーに手招きされ、一行は救護院へ入っていった。
「クリスちゃんは、あれを掛け直してからくるんじゃ」
「師匠! どの程度をお望みで……」
「先程よりも強めでいいじゃろ」
頷くとクリスはくるっと踵を返して歩いて行った。
「お主達は、こっちじゃ」
ミザリーに促されて、菜摘とノエルは建物の中を進む。
「あのミザリー様。御指示のあったポーションはどうしたらいいでしょうか?」
確認したいことがあった菜摘は、前方を歩くミザリーに声を掛けた。
「おおそうじゃ。菜摘のポーションはすぐ必要なんじゃ。これから行く所に運んでくれるかの」
「はい。この鞄の中ですのでお持ちします」
「着いて早々悪いが少し手伝ってくれるかの」
本当はゆっくりしたいところだけど、遊びにきたわけではない。
「はい。分かりました」
「ミザリー様は、こちらに長く留まっていると伺ってますが何があったのですか?」
地下へと続く階段を下りながら、先導するミザリーへ菜摘は問いかけた。
「そうじゃの、どこから話せばいいかの……」
「菜摘は隣国のポーションにまつわる話を知ってるかの」
「隣国? もしかしてビエナ国ですか?」
「そうじゃビエナじゃ」
ミザリー様はつらつらと語り始めた。




