34話 雑草ふたたび
「お久しぶりですローランさん」
しばらく顔を出していなかった薬師堂を訪れた。もちろん雑草を売りつけに……
失った声はミザリー様に教えていただいた、幻の薬草『ソーマ』のおかげで取り戻した。
ノエルは採れる場所に心あたりがなくて、もしかしたら物知りな母様なら知っているかも知れないと言って一緒にノエルの母様。
ルプスの女王様に逢いに行った。その甲斐あって私は元通りの声で話せている。
心残りがあるとすれば、女王様の毛並みが素晴らしくてそれをモフモフ堪能出来なかったことだけ……
いつかお願いしてみよう!
私は女王様に『ノエル』といういい名を付けてくれてありがとうと感謝され恐縮してしまった。
なんか可愛い響きだから、次飼う犬に付けようと思ってただけだから……
女王様にはノエルを勝手に従魔にしたことを詫びた。
「それについては問題ない……共に行動して広い世界を見せてやってくれ」
そう言って女王様は私を責めることはせず、温かく送り出してくれた。
その時に、今後持っていると便利だろうと肩掛けの鞄をくれた。
「菜摘以外の者にはそれを使えないようにしてある。失くしても手元に戻るぞ」
おー何その超便利機能。傘やらスマフォやらを何処かにやってしまう亮さんにいっそ使いたい。
肩にかけた時に大きいなと思ってたら『シュシュシュ』と音がして、身体に馴染む大きさに縮んでしまった。
見た目と違って、何でも入れられる容量無視の鞄だそうだ。生きているものは無理だけど、それ以外は、入れた時の状態を保つのだとか。
素晴らし過ぎる! 直ぐに萎れる菜っ葉類の保存に適してるじゃない。冷蔵庫代わりにも使えるわねと喜んだ。
その後自宅に戻った時に早速試してみた。
あんなにペラペラ捲れてた鞄の蓋が全く開かない。革製品に違いないのにまるで鋼鉄製にでもなったかのようだった。
亮さんに試してもらったけど全く駄目だった。
『彷徨いの森』まで来るとようやく開ける事が出来たから、やっぱりここの世界限定なのだろう。
そういうわけで自宅で採取した雑草を『彷徨いの森』まで運び、鞄に詰めてきた。
「菜摘さん。お久しぶりですね。聞きましたよ家出してたらしいじゃないですか! 私のところに来てくださっても良かったんですよ」
店内にいたイケメン眼鏡男子のローランさんは、ニコッと洒落にならない事を言う。
「えーとですね家出じゃないですよ。話せば長くなるのでまた今度にしますね」
相変わらず無駄に眩しいです。ローランさん。
「それはそうと、菜摘さん今日は薬草はお持ちではないようですね」
身軽な私を見て、若干がっかりしている。
「ローランさん今日もたくさんありますよ!この前のお部屋でいいですか?」
私は肩掛け鞄をポンポン叩いた。
「それはもしかしてマジックアイテムですか?」
「マジックアイテム? かは分かりませんがこれに入ってます」
お店の事はマーク君に任せて、隣の部屋へ私達はとりあえず移動することにした。
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「本当にこの量があれに入っていたなんて驚きました。そして鮮度が良いですね!」
前回と同じくらい山盛りになっている雑草を見上げて、ローランさんは感心していた。
「そうですよね。私も最初は驚きましたけど、こういう物なんだろうと。それ以上の事は深く考えない事にしました」
「ははは。菜摘さんらしいですね」
ローランさんは眼鏡の端を指で押し上げながら妙に納得していた。
私の性格ばれてた……




