継ぎ足す命 前編
更新遅れました。ちょっとまた短めです。
おいらは周りに注意しながら村を歩き山道に着く。すると山道を通せんぼするかのように松明を持った村人が立っていた。これじゃあ現世のとこに行けない。そう焦っていると強烈なあの視線を山道脇から感じよくよく目を凝らすと青白い手が草むらの陰から手招きしている。普通だったら悲鳴を上げているところだが現世の手で間違いない。おいらは手の方へそっと近づいていくと手は引っ込みまた少し先で手招きする。どうやら山頂まで案内してくれるみたいだ。それだったら直接来ればいいのに、と思わないでもない。手に導かれ、山を登っているとあり得ない速度で山頂に着いた。いつも使っている山道と比べると倍早く感じた。
「ふわぁ、こない夜遅くに来るなんて珍しなぁ。坊夜這いにでも来たん?」
「そ、そんなことしないよ!」
萌芽は顔を赤らめるが今はそんな冗談にいちいち反応している場合ではないことに気づき顔を曇らせる。
「ふふっ、冗談。やっぱ寝起きでも坊いじるんはおもろいなぁ」
現世はクスッと笑い萌芽をいじる面白さを確かめる。萌芽はこんな状況なのにいつも通りいじられるなんてと内心ショックを受けたが、状況が状況なので現世に今の現状を伝えようとすると
「分かっとるよぉ坊、せやから安心しぃ」
「でもこのままじゃ現世が」
「わっちの心配してくれるん?ありがとなぁ、でもな追っかけられてるんは坊の方や。わっちよりも坊の方が危ないんよぉ」
「でも………」
「ええんよぉ。わっちとおればなぁんにも怖ないよぉ、せやから木の下においで。村人来るまでお話しよ」
「うん」
萌芽は頷くと木の下に座り込む。
「母は無事かな」
「萌芽の母?」
「うん、村の人と話してくるって、おいらを送り出したんだ」
萌芽がそう言うと少しの沈黙の後
「坊の母は坊の家の前で話しとるよぉ、村人と一緒に歩き始めたなぁ」
どうやら沈黙していたのは萌芽の母を探していたようで萌芽に母の状況を報告する。
「母」
萌芽は母がいるであろう方向を見て心配そうな顔をする。現世はなんともいえない感情で萌芽を見る。
(なんか、少し妬いてまうなぁ)
自分が萌芽の母と同じような状況に陥ったらこんな顔をしてくれるのだろうか?そんなことを思いながらなんとなく萌芽の頭の上に手を伸ばしそっと頭を撫でる。
「どうしたの?現世?」
「そないに心配そうな顔せえへんでお話しよ?」
「う、うん」
現世は萌芽が少しでも心配しないように話を振る。2人が当たり障りのない会話をしながら暫くすると木々の間から松明の明かりがちらちらと見え出した。
中編後編と続く予定です