後悔
今回も短いです。
家に帰り母と夕飯の準備をしているとコンコンと扉を叩く音が聞こえ、母がおいらに準備を任せ誰が来たのか確認しに行った。と言っても台所から扉までそこまでの距離はなく話している声が聞こえてくる。この声はいじめてきた内の1人、弥太郎の母だ。ふっくらとした体型の人であまりいい人じゃない。世辞を抜けばでっぷりとしていて何を食べているのか教えてほしいくらいだ。
「聞いたぁ?うちの息子があんたんとこの子の後をつけていったら木の上にいる化け物と楽しく話してたそうよ。とって喰われないか心配だわ」
うちの子が、と後に続くのだろう。現世はそんなことしないし弥太郎なんか喰ってしまったら現世も性根が曲がってしまう。
………あれ、でも最初からちょっと意地悪いような………。いやいやそんなことはない。そんなことは………多分。そこいらで僕は深く考えるのをやめた。なぜならあの現世に見られているような強烈な気配を感じたからだ。これ以上考えていると後で散々言われるに違いない。きっと笑いながらだろうけど。現世について考えていたら話に聞き耳をたてる前に話が終わってしまっていた。扉を閉めて母が戻って来ると水に火をかけた。
「何かあったの?」
「ううん、なんでもない」
母は笑顔で言うと夕飯の準備を始める。あえて言わないようでおいらも「ふーんそっか」と言って深くは聞かない。
「そういえば友達と仲直りできたよ。何が嫌だったか言ったらちゃんと分かってくれたんだ」
「そう、良かったじゃない。その子…大切にしなさいよ」
そういった母の顔は泣き笑いのような笑顔を浮かべていた。おいらはその時、おいらがそんなに仲直りできたのが嬉しいのか位にしか考えてなかった。
「うん」
とおいらは頷くだけで母は湯の沸いた音で湯を見に行ってしまった。おいらはこの時のことを後で後悔することになる。