逃亡ー迷いの森一
今回感想を二件頂き誠にありがとうございます。今後取り入れさせていただければと思います。
変更点としましては、会話文中の固有名詞は【】で表し、視点が変わる際には***で区切りたいと思います。
そして、シエラに関しまして指摘いただきましたが、本当にその通りだと思わされました。
それでも変更、修正に関して具体的な策もなく・・・・。
少し、考えさせてください・・・。申し訳ありません・・・。
「お二人とも、お気付きか分かりませんが、尾行されていますよ。十分気を付けてくださいね」
船を下りた時に、ニールが、ぼそりと耳元で話した内容に、思わず、僕とアイクは凍り付いた。
それでもなお、アイクは、一瞬でにこやかな表情を浮かべ、微塵も気にしていないそぶりをしながら、同じくひっそりと耳打ちする。
「どうもそんな気がしていたが・・・・どうして気付いた?」
「スラムと言う街は、普通であれば、来る者拒まず、去る者追わず、どんな人間でも、居着くことができますので、油断したのでしょうね・・・・。あのスラムだけは、皆で支え合って生きていましたから。普通のスラムとは違って、余所者はすぐにわかるんですよ」
少し誇らしげだ。
「それに、明らかに腕が立ちそうな無頼者であれば、街の皆もおのずと警戒します。たとえどれだけうまく偽装されていたとしても・・・、ね」
冗談めかして片目をつぶって見せたニールは転じて名残惜しそうな表情を浮かべる。
「そうか・・・、助かった、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます。シリウス君も元気でね」
「うん!ニールもね!ありがとう!」
岸辺に立ちながら、僕らは彼らの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
遠く、その輪郭がぼんやりと視界の端にかすんで、ようやくアイクがその場から動き出す。
ここはウル湖の東端の湖畔、そして、「迷いの森」を視界に収める街。今僕らが立っている街の中心地は、東西に整然と整備された道が伸びるウルの街とは全く趣を異にする街だった。
街の中心を通る大通りは、様々な人々が生き交い、活気がありながらもひどく雑然とした印象を与える。
大通りの道は一本まっすぐに、遠目にも見える大きな城に伸びており、しかし、そこから様々に脇道が伸びており、細い道もあれば太い道もあり、通りからぱっと見ると道に見えるが、実は行き止まりだと言う場所もあるようで、どちらかと言うと、スラムに近い迷路のような街だった。
「ヴァルナ」と呼ばれるその街は、この地方の言葉で、「ばらばら」と言う意味を表す言葉だそうだ。
そしてその言葉通り、ここには、様々な国から流れついた雑多な人々が住んでいる。
ここは、帝国領でありながら、帝国の貴族が収めることなく放置された街であり、そのため、税を納める必要が無い。
その代わり、法律や、明確なルール、規範が無く、主に、侵略された後に帝国から移住してきた帝国民、そして、元から住んでいた先住民、何より、周辺諸国で帝国に滅ぼされた国々から逃げてきた亡命民の三つの勢力が街を牛耳っており、毎日のようにもめ事が起こっては、騒動が勃発している地域だと事前にニールから説明を受けた。
ニールの説明には、難しい言葉もあり、理解できないことも多かったが、大まかにいうと騒がしい街だと言うことだろう。そして、岸に降り立った時からすでに肌で感じていたが、街はひどく活気に満ちていた。
道の左右には様々な屋台が立ち並び、湖で捕れた魚から、野菜、肉と言った食糧から、スープや、パンなど調理済みの料理、そして、武器ですら、柱を四本立て、そこに布をかぶせただけの吹きさらしの屋台で売られている。
珍しいものでは、魔道具、と呼ばれるものまで販売されていた。
「あまりきょろきょろしていると、田舎者だと思って騙されるぞ?」
物珍しさに思わず視線を彷徨わせる僕にアイクが前を向いたまま忠告してきた。
「そんなこと・・・・」
―――あるわけない。そう言って鼻で笑おうとした瞬間、ぐいっ、と思いのほか強い力で腕を引かれ、思わずのけぞってしまう。
「お兄さん!お兄さん!旅の傭兵さんだろう?今ちょうど、珍しいものを仕入れたから見ていかないかい!?」
そこに立っていたのは、優しい笑顔を浮かべる、僕よりも身長が低い中年の男性だった。
僕が何か口を開こうとする前に、その男性は話し始めてしまった。
「ほうら、見てくれよ!この優美な螺旋を描く一本角を!!」
そう言って手に持ってきたのは、何かの角だった。ただし、それは確かに男の言う通り、細く、そして一直線に伸びており、等間隔で螺旋を描くように溝が掘られた角は、とても綺麗だった。思わず見とれてしまう。
「俺も長年ここで商売をしているが、こんなに珍しいもんが仕入れられたのは初めてだ!!これ、なんだかわかるか・・・?」
一転、それまでとは打って変わって、笑顔を引っ込め、見とれるように角を見つめながら、囁くように問いかけてくる。
「さあ・・・?何の角なの?」
「こいつはな・・・・」
ちょいちょいと手招きされ、思わず耳を近づける。
「なんと、あのユニコーンの角だ!」
興奮を隠しきれない様子で、目を輝かせながら語りかけてくる男に、申し訳なさを感じてしまう。僕は、ユニコーンが何かもわからない。だから、どうしてそんなに興奮しているのか、何がすごいのか、全くわからなかった。
ぽかんとする僕を見て、男が眉を顰める。
「ははあ・・・・。お兄さん、もしや、ユニコーンを知らないな?」
「え!?すごい!!どうしてわかったの!?」
「そんなの、この商売を長年続けていれば、嫌でもわかるよ。ところで、ユニコーンっていうのは、滅多に姿を見せない生き物なんだが、すぐ目と鼻の先の【迷いの森】で最近目撃情報があってな。・・・そして、ついに討伐されて!!なんと!!俺がその角を手に入れることができたんだ!!」
「へえ!すごい!!」
なんだかすごいことなのだろう。よくわからないが、男の様子から、とても珍しいことだとは理解できた。
「ユニコーンの角っていうのはな、お兄さん。すべての病、そして呪い、毒に効く万病薬になるんだ!!この角を乾燥させたものをすりつぶして粉末にして飲めばいい!!そうしたら、どんなに大病を患っていても一発で治るのさ!!お兄さんも傭兵ならどうだい?」
どうも、すごい物のようだ。そう言われて見れば、確かに神秘的な気がしてきた。
「うーん・・・。でも、値段が高いと買えないからなあ・・・」
「お兄さん!!今を逃したら、次はいつになるか分からないよ!!こんなもの、もっと大都市に行けば、金貨十枚はするんだよ!!それを、現地の人間だから、安く仕入れることができて、安く売ることができる。そうだなあ・・・、今なら金貨一枚でいいよ!!」
残念ながら、それがどれほど高いのか、そして安いのか僕には判断できない。
なぜなら、旅の間で、ほとんどお金を使うことはなかったからだ。使ったとしても、アイクが全部支払ってくれていたので、僕はお金の価値が全くわからない。
ただし、アイクがよく支払っていたのは銅貨や銀貨ばかりで、金貨と呼ばれるものを支払いに使っているのは見たことが無い気がする。
だとすれば、金貨一枚と言うのは相当に高い金額なのではないか、と思ってしまった。
もう少し安ければ、アイクを呼んで買ってもらうこともできるかもしれないが、金貨では購入できないだろう。
そんな僕の逡巡を見て、その男は、再び口を開く。
「分かった!!もう分かった!!兄ちゃんの勝ちだ!!俺の負けだよ!!銀貨七十五枚!!これでどうだ!?これ以上は・・・、いや、もうこれは赤字だよ!!」
「え!?それって要は損してるってこと?」
僕は驚いてしまった。どうして通りすがりの僕にそこまでしてくれるんだろう?
「兄ちゃんが気に入ったのさ!例え俺が持っていたとしても、ここ数十年大病なんて一度もねえ。それに俺は傭兵じゃないから危険なこともない。だったらお兄ちゃんみたいに強い傭兵さんに買ってもらうのがユニコーンも浮かばれるってもんだ!!」
少し投げやりな言い方だが、随分と僕を買ってくれている様で、嫌な気持ちはしなかった。
「それなら・・・」
僕がうなずこうとした瞬間、すぐ後ろからため息が聞こえる。
「うお!!?」
思わずのけぞった僕のすぐ後ろに、アイクが随分呆れた様子で立っていた。
「おい、亭主!!嘘はつくな!!ユニコーンの角が、本物だったら、金貨十枚でも足りんぞ!それに、その螺旋の溝に、その細さ、そして長さ、何より乾燥させて匂いを飛ばしているが少し生臭い匂い・・・。どう考えても【一角カジキ】の尖角だろう?」
アイクが、男が持っている角をまじまじと見ながら、告げる。その言葉に、男は少し慌てたようで、こっそりと手に持っていた角をアイクが見えないように後ろ手に隠した。
「な、なにをおっしゃいます!旦那、世の中には言っていいことと悪いことってもんがありますよ!!ましてや、そうやって濡れ衣着せようなんて・・・・。あ!!分かったぞ!!そうやってこのユニコーンの角の金額をもっと吊り下げてやろうって腹ですか!!随分と空漕ぎじゃあないですかいそいつは!!?そうはいきませんぜ!!」
声高にアイクを罵り出した男に、アイクが呆れたようにもう一度ため息をついた。
「そもそも【迷いの森】にユニコーンなどいるはずがないだろう?第一、あそこの森に入るやつなど、この街にはいないだろう?もしいたと言うのなら、いったいどこの誰がユニコーンを討伐したのか教えてくれよ」
「そ、そいつは・・・。ええっと・・・・守秘義務がありまして・・・」
明らかにたじたじとしだした男は、ひどく狼狽している。
「それはおかしい話だろう?ユニコーンの討伐なら、相当大ごとだ。この街の人間であればだれもが知るところになるだろう?それなら、街の人間を捕まえて話を聞いてもいいんだぞ?」
アイクの歯に衣着せぬ物言いが頭に来たようで、先ほどまでにこやかだった男の顔が一瞬で憤怒の表情に変わる。
額に青筋を立てて、怒鳴り出した。
「もういいです!!あっちへ行きなさい!!物の価値もわからぬ馬鹿者に売る物なぞありません!!早くどこかに行っちまえ!!」
ものすごい剣幕で突き飛ばされてしまった。
思わずたたらを踏んだ僕をアイクが抱き留め、そのままそっぽを向いた男に挨拶もなくその場を後にしようとするので、慌ててアイクの後を追う。
しばらく歩いていると、くるりとアイクが僕を振り返った。
「ほらな?言っただろう?ああいった詐欺に引っかかってしまうから気を付けろ」
「ごめん・・・」
思わずしょぼんとしてしまった。どうやら僕は騙されてしまっていたようだ。
「いいさ。気にするな。これも勉強だ」
ぽりぽりと頭を掻きながら、アイクは少し気まずそうだ。
「まあ、とにかく、この街では、できる限り、俺から離れるな。そして、誰かに話しかけられても、無視しろ」
そんなことしてしまってもいいのだろうか?少し、いや、非常に心苦しいことだが、アイクが言うのだから間違いではないのだろう。
前を向き歩き始めたアイクの後を必死に小走りで付いていく。
以前よりお話しておりましたように仕事の都合により引っ越しいたしました。以前までの住まいにはFreeWifiが飛んでおりましたが、今の住まいにはありません・・・。つきましてはプロバイダの契約を結んだのですが、時期と言うこともあり、4/20にようやくネットが繋がります。
その上、書きためも少なくなっており、予断を許さない状況です。今、家の近所のデニーズ様にて更新しておりますが、もしかしたら更新が亡くなってしまうかもしれません・・・。
数少ない読者の方には大変ご迷惑をおかけしてしまいますが、毎日更新ができなくなったらそれまでと思ってください・・・。
ただし!4/20には必ず戻ってまいりますので何卒温かく見守ってください。




